日本が強くなるために必要な“行革”……竹中平蔵「小泉内閣が派遣を増やしたわけではない」
もめ事が起こればお金で解決するしかない
日本では「金銭解雇」の話をすると「金で首を切るのか」 「金での首切りが横行する」というような反応が返ってくる。 2024(令和6)年秋の自民党総裁選挙で、小泉進次郎氏や河野太郎氏が言っていたように、「金銭解雇」のルールをつくる必要がある。雇用主と労働者がもめた場合には、最終的には所得補償、つまりお金で解決するしかない。何事も、もめ事が起きれば最後にはお金で解決するしかない。それと同じことである。 多くの国では、「金銭解雇」のルールがある。OECDの国の中でルールがないのは、日本と韓国だけだといわれている。日本でも大企業のように強い労働組合がある会社では、解雇の場合には相応の補償を得ることができる。しかし、多くの中小企業では、解雇された労働者は泣き寝入りするしかない。 現状では、労働市場は変化の方向にある。しかしそれでもあえて極論すれば、日本の労働者の選択肢は2つしかない。金銭的な補償もなく、身一つで泣き寝入りして辞めていくか、何があっても我慢して会社にしがみついて残るかである。 極めて不合理なことである。終身雇用・年功序列こそが唯一の正しい働き方であるという考え方は、労働者を会社に閉じ込めていることにほかならない。そのような不公平なことがあってよいはずはない。だからルールをつくる必要がある。しかし、日本ではなぜか「金銭解雇」という言葉に、極端なアレルギーがある 。
小泉内閣が所得格差を広げたわけではない
もう一つの例を紹介しよう。『ハケンの品格』というテレビドラマが人気を博したのは2007(平成19)年ごろだった。「派遣」は「自由な働き方」を実現する一つの方法である。しかし、「小泉内閣のときに派遣労働者を増やして、所得格差が拡大した」と言われた 。これは、誤解に基づいた暴論としかいいようがない。 まず、小泉内閣で派遣を増やしたわけではない。1997(平成9)年6月に、ILO(国際労働機関)は「民間職業仲介事業所に関する条約」を採択した。働きがいのある人間らしい仕事(「ディーセント ・ワーク」) を実現するために、民間職業仲介事業所の果たす重要な役割を認識し 、それを利用する労働者の保護を図ることを目的とした 条約である。日本は1999(平成 11)年7月に批准した。森喜朗内閣のときである。批准の5年後の2004(平成 16)年に製造業について実施した。 次に、「派遣労働者」について。2003(平成15)年には正社員が65.4%、非正社員が34.6%だった。非正社員の内訳を見ると、パートタイム労働者が23.0%で最も多く、契約社員が2.3%、派遣労働者は2.0%に過ぎない。その後、2017(平成 29)年には3.2%、2022(令和4)年には4.0%になっている。 全労働者に占める派遣労働者の割合は依然として非常に低い。さらに、「格差は拡大」しているわけではない。所得格差の度合いを測る指標として使われる 「ジニ係数」は、1990年代から2000年代にかけてほぼフラットに推移しているからである。
竹中 平蔵