あなたの腎臓を蝕む"リン過剰"
もう一つ気にしておくべき成分がある。リンだ。リンそのものはサプリとして摂取することはないが、ウコンなどにも多く含まれているため、知らず知らずのうちに口にしている可能性がある。
「通常の食生活をしていればリンが不足することはなく、むしろ多くの人が"リン過剰"の状態です」と、前出の黒尾氏は指摘する。
とくにいわし、さば、するめ、ハムやソーセージなどの食品はリンの含有量が多いため、日常的にそれらを食べる人はサプリにリンが含まれていないか気にしたい。
「注意すべきは『骨を丈夫にする』などとうたい、リンが配合されているサプリです。リンは体内のカルシウムと結びつき、『リン酸カルシウム』という歯や骨のもとになる成分を作りますが、水に溶けにくいという欠点がある。そのためリンを過剰に摂取すると、リン酸カルシウムが血中や尿中で結晶となり、血管や腎臓に障害を起こしてしまうのです」(黒尾氏)
黒尾氏は「45歳以上の4人に1人程度がリン過剰の影響で腎臓に障害を受けている可能性があるのです」と警鐘を鳴らしている。
さらに加齢や病気で腎機能が弱っていると、ネフロン1個当たりが処理しなければならないリンの量が増えてしまう。排出が間に合わないと腎臓でリン酸カルシウムの結晶が出現し、ネフロンを破壊していく。
「この悪循環が進んでいくと、いよいよ摂取したリンを尿として排出できなくなって、血中リン濃度が上がってきます。これは慢性腎臓病で末期に見られる症状です。こうなればもう手遅れで、透析治療や腎移植が必要になります。それほどリンの過剰摂取には注意が必要なのです。食事を普通に摂れている中高齢者は、リンをサプリで補充する必要はありません。むしろ害のほうが大きいと言えます」(黒尾氏)
腎臓を丈夫に保つためにも、ここで取り上げた11種類のサプリ成分には気をつけたい。
第5章『危険&無意味なものだけではない…「医者が本当に飲んでいるサプリ」を全公開』へ続く。
「週刊現代」2024年4月20日号より