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  『 41 』









「りっかちゃあ―――――ん、ただいま―――――。」




ああ、悠河クンの良く通る声がする。
でもあたしは動けない。


「りかちゃん?・・・・・りかちゃん・・?」


飛び出さないあたしにちょっと不安そうな声がする。
思いきり母性本能をくすぐっちゃうような声なのよね。
あたまぐるぐるしながら、そんなこと考えてる。

「ど・・・どしたの?!りかちゃんっ!!??」
いきなり頭上から悠河クンの声。
「気分でも、悪いの?」
あら~~~ん、悠河クンのアップが急接近。
こんなに至近距離で見ても、なあんていいオトコなのかしら。
目なんかうるうるして、お星様がはいってるみた――い。
「ちがぁう・・・もぉん。」
あたしソファで伸びながら言ってみる。
「あんまし帰ってこないんだもーん。」
きらきら目が焦って、眉間に皺が寄る。
「ごめんね、ごめんね。
 仕事長引いちゃって、これでも全速力で帰ってきたんだよ。」
うふーん、言い訳する口がかわいいいぃぃぃ・・・・
「だーめー、許さない~~。」
ああ、なんだかぽかぽかあったかくなってきたわ。
「ごめんっ!許してっ!!」
両手を合わせる悠河クン。
眼なんか固く瞑ってる。
「や――――!!」
唇尖らせて、呂律の回ってない返事する。
「りかちゃん、顔真っ赤だよ。」
ひんやりした掌が、ほっぺを包む。
うふふ、気持ちいい。
「そのまま、ちゅう~。」
酔った勢いで、おねだりするの。
悠河クンちょっと考えて、羽みたいにキス。
「だめー、もっとすごいの―――。」
あたしは手足をばたばた。
酔っ払ってるんだもん、奥さんなんだもん。
悠河クンのりかちゃんなんだもん。
だから我侭言ってもいいの。
「ん・・・、わかった。」
そして悠河クンは噛みつきそうな位熱烈なディープキス。
あたしの身体は火がついたようにほてってる。
「ね・・・・・、もっとすごいの。」
「え、でも・・・
 俺帰ったばっかだし。」
「だめー、もう待つの飽きたんだもん。」
足をばたばたさせながら、天使のネグリジェの釦をはずす。
だめ、はずれない。
「指がいうこと聞かないの、ねえ。」
甘い甘ーい声でいってみる。
お酒のお陰で、あたしの目は悠河クンに負けないほどうるうるなはず。
じいっと悠河クンを見つめてみる。

悠河クン、しばらくあたしの目を覗きこむ。
そして小さく笑った・・・・みたい。
「しょうがないりかちゃん。」
あたしの鼻を軽くはじく。
「じゃ、ちょっと待ってね。」
そう言って、買ってきたらしい紙袋をごそごそ。
中身をクリスマスツリーに巻きつける。
そして部屋の電気を消して、かちゃっとスイッチ入れる。
ツリーに小さな光が無数に散りばめられる。
「うわぁ、綺麗。
 雪みたい―― 」
「でしょ。」
ちょっと得意そうな、悠河クン。
あたしはネクタイをひっぱって、口を尖らせて。
「ねえ、はやく外して。」
彼はかたっぽ笑窪なんかうかべながら、あたしの釦をゆっくり外す。
光の翳りのせいかしら、なんだか物凄くカッコいい。
口元に浮かべる笑みが、なんだかクール。
ねえ、いつの間にそんなに素敵になっちゃったの?


するりと腕を抜き、彼の首をかき抱く。
外気の残る冷たい頬に、火照った頬を重ねあう。
何度も唇をかさねて、熱い熱いキスをする。
柔らかな唇が、深くあたしの舌を這う。
耳朶を甘く噛んで、ピアスを舌で転がして。
いつのまにか悠河クンにリードとられてる。
粉雪みたいな光が、やけにまばゆくて。
優しい唇の感触に、あたしはゆらゆら揺らされて。
仰け反り伸ばした身体から、ゆるりと羽がおちてゆく。
柔らかな唇は首筋から胸をなぞってゆく。
「あったかい。」
あたしはなんとなく呟いて。
何度も、何度も尋ねてる。
「そうだね。」
そのたんびに彼の声。
何度も、何度も答えてくれる。


「直の方が、あったかいわ。」
「ん。」
あたしたちはいつのまにか、肌と肌とを重ねあわせる。
悠河クンの胸に、あたしの胸をぴったりつけて。
「気持ちいいわ。」
「気持ちいいね。」
内緒話をするように、互いの耳に囁きあう。
互いに暖めあうように、互いの身体を絡めあう。
子供が寄り添って眠るように、静かに静かに沈みあう。
「気持ちいいね。」
「気持ちいいわ。」
緩やかに寄せては返すあたしたち。








あなたとあたしを確かめあう。
それは、聖なる夜に祈るように。









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