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『 40 』
今日はクリスマスイブ。
なのにあたしは、まだ一人。
部屋のエアコンがんがんつけて、ソファでクッション抱えてる。
悠河クンはこの頃思いっきり忙しいの。
「今日はね、イブだからね、早く帰ってくるよ。」
出掛けにいったじゃないよ。
忙しいから、仕方ないから。
今年は家でクリスマス。
でもね、せめて、素敵なイブにしようって思ったのよ。
だからデパ地下いって、死ぬほど込んでる人波縫って、
ローストターキー買って、ブッシュ・ド・ノエル買って、
クリュッグかかえて帰ってきたわ。
この、あたしがよっ!
いつも悠河クン任せの掃除機もかけたし。
ちっちゃなツリーに星つけて、
・・・・・なのに、あたしはまだ一人なの。
ああん、もうすぐクリスマスになっちゃう。
なのにまだ悠河クンてば帰ってこない。
ひざっこぞうを抱えて、電話をじーっと見つめる。
でも、でも、そんなことみっともないわよね。
頭をぶんってふって、時計と睨めっこ。
時計の針は止まりゃあしない。
またじーっと電話を見る。
想像力に長けているあたしの右脳が回り出す。
あああ、悠河クン、また職場の連中に引っ張りまわされてるのかしら。
本当は一人でじっとしてるのが好きなのに。
そーゆーの断れるタイプじゃないのよね。
ああ、それともまさか知らない人につれて行かれちゃったとか。
彼ってほら、年を超越して可愛いし、いかにも育ちもよさそうだし。
あーん、あーん、ロクな考えが浮かんできやしない。
そういや新しい課長が配属になったっていってたわ。
確か貴城だっけ、ベルリンに一緒に来た子。
そう、あたしにかなり懐いてたっけ。
もしや悠河クンに嫉妬して、イブにこき使ってたりしないでしょうね。
それともこないだのことで、悠河クンが男に目覚めたとかとかとか。
面食いのあたしだけど、悠河クンに関しては許さないわよ。
ばんばんっ!てクッションを殴ってみる。
だめ、右脳ぐるぐるは治らない。
折角ふわふわひらひらの新しいネグリジェおろしたのに。
ピアスは取っておきのダイアモンド。
唇はぷりぷりのグロス。
イメージは、勿論、天使、エンジェルよっ。
なのに、なのに、帰ってこない。
もうすぐイブが終わっちゃう。
もう、知らないから!
そういう気分の滅入った時は、お酒に手が伸びるあたしの悪い癖。
一緒にすごしたかったんだもん。
いいわよね、お酒くらい。
あたし、お酒強いもん。
クリュッグの栓を抜いて、シャンパングラスに注ぐ。
淡い金の中を、ゆっくりと泡が立ち上る。
ふわふわ揺れる微細な泡が、まるであたしの気持ちみたいで。
たまんなくなって、ぐいっと一気のみ。
しゅわぁって喉を泡が擽って。
んんっ、やっぱ美味しい。
で、もう一度、泡が見たいだけなのって言いながらグラスに注ぐ。
ふわふわ、ぐいっ、しゅわぁっ。
ふわふわ、ぐいっ、しゅわぁっ。
あ、なんかイイ感じ。
ふわふわ、ぐいっ、しゅわぁっ。
グラス持ったまま、ソファで大きく背伸び。
あれ?ぐらーっと床が波打ってる。
そういや、あたし、思いっきりすきっ腹だったんじゃない?
そこに一気に流し込んじゃったのよね。
やん・・・・力がはいんない。
と、チャイムの音。
ぐるぐるしたまま見上げた時計は、11時59分。
駆け寄って、抱き着いて、キスの嵐だったはずなのに。
いやだわ・・・・身体・・・・動かないじゃない・・・
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