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『 38 』
「りかちゃん・・・・・・・どこいってたの?」
「えっと・・・・・・ちょっと気晴らしに・・・・お散歩。」
「こんな時間まで?」
ああ、そういや日がとっぷり暮れてるじゃない。
「ゆ、悠河クンこそ帰るの早かったのね。」
「りかちゃんが大変なんだから、あたりまえだよっ!」
悠河クン、口をとんがらかしたまま。
「しょ、食事作るね。」
「いい、俺が作っといた。」
ああっ、珍しく怒ってるかも、やば~。
でも、あたしは奥さんだもん。
悠河クンに奥の手使っちゃえ。
ぽろ・・・・・
「あっ・・・・」
ほら、悠河クン困った顔になった。
「だって・・・・だって・・・・」
あたしはぽろぽろ涙を拭おうともせず訴える。
「だって、こんななっちゃって・・・どうしていいかわかんなくて。」
ちょっと顔を伏せ気味に。
「だから、素直に受け入れて、男の人ごっこしてみたら・・・
少しは・・気が晴れるかなあって。」
悠河クン急いでハンカチ取り出して、あたしの顔を拭う。
「そっか・・・・ごめんね、りかちゃん。」
「え?」
「こうなって、一番混乱してるのはりかちゃんだよね。
俺、そんなこと考えもしないで、一人で困ってて。」
あらん・・・効果絶大みたい。
悠河クンあたしの肩に手を置いて、うんうんってうなずき出す。
「あの・・」
「気晴らしだって、してみたいよね。」
あたしはこくこくうなずいた。
悠河クンはしばし考え込み、にこっと笑う。
「じゃありかちゃんの好きな、ごっこ遊びしよう。」
へ・・・・・?
「これなら俺達まんまコスプレだし。」
ナイスアイデア!という得意げな笑顔。
「りかちゃん、今夜は男同士で俺と飲もう!」
そう言って、指を鳴らす。
な・・・なんかごっこ遊びとも違う気がするんだけど・・・
でも、陰気にどおしよぉ~ってしてるよりは生産的かもしれないわね。
うん、あたし薫ちゃんとなら違和感無く男っぽかったみたいだから、面白いかもね。
それに美しいものが大好きなあたし。
美青年なあたしと美青年な悠河クン、完璧な絵面だわっ!
「ようし、乗った。」
いきなりの低音に、悠河クン目ぱちくり。
「おい、なんか変か?」
「いっ、いや・・・あんましりかちゃんかっこいいから。」
あたりまえでしょー!!悠河クン!!
このあたしが男になったのよ、めちゃめちゃかっこいいに決まってるじゃないっ。
で、悠河クンの鼻を弾き、一言。
「今からは、りかさん、だ。」
悠河クン、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔でうなずいた。
で、ジャケット脱いで、キッチンに戻ると悠河クンお肉取り分け中。
いつもながら、イイ焼き加減。
あたしは赤ワインを注ぎ、二人で乾杯。
「何に?」
あたしが尋ねる。
「りかちゃんの・・・あ、いや、りかさんの奇跡に。」
奇跡・・・・たしかに奇跡よね。
でも、このまま戻れなくなったら・・・・ううん、考えないっ!
肉を口に運びながら悠河クンが尋ねる。
「今日はなんか、面白いことあった?」
う・・・ぐっ。
まさか、勢いで隣の薫ちゃんとデートしてキスしたとか、流石にいえないわね。
あたしはにやっと笑って。
「まあね。」
「りかさん、かっこいいから逆ナンされなかった?」
あ、やっぱ、変にするどい・・・
「別に・・・興味ないからな。」
「ふーん。」
「だって、悠河がいるだろ。」
「そっかあ。」
なんだか、ぱあっと笑ってくれる。
会話的にかなり???だと思うんだけど、悠河クンにはそんなこと気にならないらしい。
こうなったら、あたしもなりきって、いいかしら?いいわよね。
ソファに思いきり高く脚を組む。
「なんか飲む?」
「ええと・・・バランタインの30年が棚の奥にあったよな。」
悠河クンの持ってきてくれたグラスで、又乾杯。
今夜はお酒がぐいぐい入るってカンジ。
「なあ、悠河、この頃やけに忙しいみたいだよな。」
「うん、俺さ新規事業部にまわされてんだ、今。」
「新規事業部?」
「ん、新しくリゾートホテルを立ち上げる計画。」
「ふ~ん。」
「そこらへん自然環境保護区だから、環境バツグンなんだけど、色々権利関係とか面倒臭くて。」
「だから、俺放っとくってこと?」
あたしはグラスを手でもちあそびつつ、彼の目を見つめる。
あら、なんかこの構図って・・・・・や○い、ってやつかしら?
これこそ、男じゃなきゃできない遊びではあるわね。
それに二人とも美しいし・・・
あたしはががぜんやる気が湧いてきた。
「そんな、りか・・・さんを放っておくわけないよ。」
「どうして?」
「だって・・・・愛してるから。」
あああ・・・・なんだか美しいわ。
たまんない構図じゃない!
あたしこの場合は攻めでも許されるわよね。
「俺を・・愛してる?」
グラスに口をつける。
「うん。」
いつものように、無邪気に答えてくれる悠河クン。
顔には天使のような笑みすら浮かべてる。
あたしは彼の頬に手を伸ばす。
今はあたしよりあどけなさの残る顔。
ゆっくりと手を這わせる。
「えっ・・・」
肩が強張る。
「どうした。」
「だ・・・だって。」
彼の首を引き寄せる。
「愛してる・・・だろ。」
「でも。」
「俺は、俺だよ。」
そのまま強引に唇をあわせ、含んだ酒を流し込む。
「あ・・ぅっ・・・」
いきなりのバランタインに彼はむせかえる。
二つ折れになる彼を抱きしめて、胸に抱き寄せる。
「ちょ・・・ちょっと!」
焦っているのが闇雲にかわいくて、つい耳に囁きかける。
「愛してるんだから、抱きしめる。
当たり前だ。」
あらぁ、あたしの方がちょっとだけおっきいのね。
ってことは、いいのよねっ!
悠河クンを抱きしめて、耳に舌。
「ま、待って!
りかちゃ・・・・・、じゃなくて、りかさんっ!!」
「待たない。」
遠慮無しに、舌をぐりぐり差し入れる。
「だから・・・今、俺達は男同士であって・・・」
「ふ~ん、だから?」
彼のベルトに手をかける。
「だからっ!」
「なんだよ。」
「そ・・・・そんなことはっ!」
悠河クン必死でズボン押さえてる。
めんどくさいから、力づくでソファに押し倒しちゃえ。
「どんなこと?」
にやにやしながら、あたしは聞き返す。
あたしの下で、押さえこまれた悠河クンがバタバタしてる。
あああっ!あたしの鬼畜攻めの血がムラムラ沸きあがってくるじゃない。
ネクタイをしゅるっと外す。
「だからっ!・・・だかっ・・」
唇を唇で塞ぎ、シャツの間に手を伸ばす。
悠河クンの眉間に縦皺、目元がなんだか赤くなってるじゃない。
やぁだ、かわいいったら!
「悠河・・・・・」
唇を離し、あたしは精一杯のニヒルで寂しげな低音を作る。
「そんなに俺が・・・・嫌か?」
「だっ、だって・・・」
「お前、俺を愛してるんじゃなかったのか?」
切なさ爆発の上目で彼を見つめる。
「そ・・・そりゃそうだけど。」
「じゃあ、いいじゃねぇか。」
悠河クン、剥ぎ取られかけたシャツをひっかけて、肩で息。
「で、でも・・・今はりかさんは男の身体で・・・俺も男で・・」
あたし、彼の顎なんか掴んで顔を寄せる。
「お前は俺を、りかを愛してんだろ?」
悠河クン、唇を固く閉じて目に涙まで浮かべながらうなずく。
「俺はお前を愛してるよ。
でもそれは、悠河が男だからじゃない、人間大和悠河を愛してるんだっ!」
あたしの演技力総動員、搾り出す魂の叫びだわ。
ああ、なんてソフィスティケイトされたあたし!と自分に酔いながらあたしは彼の目を静かに覗きこむ。
「お前は・・・違うのか?」
悠河クン、目をぱちくり。
この人、こういう妙にアツい論理には絶対に弱いはず。
「違わないよ!
俺も人間のりかさんが好きだよっ!」
思わず真剣に叫ぶ悠河クン。
じ~~~~~ん(力瘤)
ああ、やっぱりあなたは期待通りだわ、悠河クン。
そしてあたしは思いっきり気障に呟いた。
「じゃあ・・・・愛しあうのは当然だろ?」
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