TOP
『 34 』
団地の風は夏の匂い。
今日はなんにも予定も無いし、
あたしけだるい昼下がりなの。
クイーン・マリーを飲みながら、ネットサーフィンなんてしてる。
優雅なんだかオタクなんだかわからないわね。
あら、『受け攻め占い』ですって。
暇つぶしくらいにはなるかしら、えっと・・誕生日を入力、っと。
勿論、最初は悠河クンから。
あたしがこの世で唯一優先するのは、彼だけなんだもん。
出た出た・・・・えっと・・・「自己中攻め」。
ふうん、「昼の性格:人の和を大切にします。」
うんうん、カレはあたしと違って人当たりいいし、優しいもん。
え!?「夜の性格:自分だけ満足することもしばしば」ですって。
でも、悠河クンはそんなこと微塵もなくってよ。
いつもあたしに一生懸命だもん。
でも、本当は自己中なヒトがあたしにメロメロってことかしら。
あら、ちょっといい気分。
・・・・・うふふ。
うふうふってなりながら、カップに口をつけて。
次はあたしの誕生日。
「自己中攻め」と相性いいあたしですもの、きっと「女王受け」とかあるに違いないわね。
うふうふってしてるあたしの目に飛び込んできた文字、
「鬼畜攻め」
・・・・・・な、な、な、なんですってえええ~~~~
このあたしの、どこが鬼畜なのよ、失礼なっ!
「夜の性格:相手が泣くまで攻める」って、なによ!これ!ケダモノじゃない。
あたしは単に好奇心旺盛で積極的なだけよっ!
世界一の旦那さま悠河クンを泣かせるなんてこと、ありえるわけないでしょっ!
ぷんぷんしながらあたしはパソコンの電源を落としたの。
今夜は悠河クン、帰り遅いって言ってた。
このごろ毎日日帰り出張で忙しいの。
午前様になることもしょっちゅう。
新しい部署で本格的に仕事始まって、目が回るほど大変みたい。
そりゃあマメに電話はくれるけど、やっぱりさびしいったりゃありゃしない。
その上今日は、なんだかあの占いが気になっちゃって。
あたし、鬼じゃないもん。
珍しく手料理に挑戦、っていってもカレールー入れてぐつぐつ煮るだけなんだけど、あたしとしては画期的なの。
ちょこっとサラダなんかも見よう見真似で作っておいた。
上にプチトマト乗せてできあがりっと。
悠河クン帰るの待ちたいんだけど、どうしたのかしら、今夜は異常に眠くてしょうがない。
仕方ないから料理をテーブルに並べて、愛のお手紙つけて。
「愛する悠河クン、よかったら食べてNe。
あなたのRIKAより、chu」
さあ、美容の為に早く寝なくっちゃ!
いやん・・・これって夢だわよね?
あたしったら、裸の悠河クンにのしかかって。
カレはちょっと辛そうで、目元に涙なんか滲んでて。
夢の中だけど、ああ、ゾクゾクじちゃうわ。
ちっちゃくて形のいい唇が半開き。
あの唇を喘がせてみたらどうかしら、って。
妙に攻撃的な、あたし。
やわらかそうな喉に、ちょっと歯なんか立ててみる
でもあたし、奥さんだし・・・・攻めるったってどうすれば・・・・
ああん、視界がぼやけてくる・・・・・・
深い眠りに、とろとろとろって落ちてゆく。
・・・・・・身体の奥に、ゾクゾクした熱を抱えながら。
うるさぁい。
あたしは重い身体で目覚ましを止める。
横にはいつものように悠河クン。
昨日も遅かったのね。
先に寝ちゃっててごめんね、と思いながら、ちゅ。
「・・・・ん・・・」
後れ毛がふわり、かわいくてかっこいい。
「 お・は・よ 」
もひとつ、ちゅ。
悠河クンのきらきらの瞳がゆっくりと開く。
と、いきなり弾かれたみたいに飛び起きた。
「・・・・・・!!」
あたしのほう見て、口ぱくぱく、目まんまる。
「どしたの?」
あたしは小首で尋ねてみた。
「き・・・君っ・・・!!!?」
「なあに?」
昨日はあったかかったから、あたしはティファニーだけつけて寝てみたの。
このごろ忙しすぎたから、ちょっと刺激が強すぎた?
それともその気になっちゃったの?
悠河クン、目をこすりながら搾り出すような声で、
「君・・・・誰・・?」
「誰・・・って、あたしよ。」
「あたしって・・・・!?」
「だから、あたしよ。」
悠河クン、ショート寸前って顔になる。
「・・・・・だから・・・誰・・・?」
んもう、どうしちゃったの。
「やぁねぇ、朝はふざけてる暇なんてないでしょ。」
で、カレの額に、ちゅっ。
いつもの儀式なのに、どうしてそんなに硬直してるの?
腰も頭も引けてるじゃない。
会社も働かせ過ぎなのね、疲れがたまっちゃったのかしら?
大事な悠河クンがストレス過多とかだったら、あたし訴えるわよ。
カレの心が休まるように精一杯のかわいらしい笑みをつくる。
なのに、悠河クンてば硬直したまま、眉間に皺まで入り出す。
変だわ、変だわ、どうしちゃったの・・・・・
「トースト、焼いとくね。」
ガウンをひっかけベッドから出るあたし。
「ちょっとっ!」
追いかけて飛び出すカレ。
「悠河クンてば、うるさぁい。」
さっさとキッチンに行こうとするあたしの肩を掴む。
やあねえ、そんなに強く掴んじゃ痛いじゃない。
「君、誰?
どうしてひとんちにいるの?」
ひとんち?って、ここあたしんちよ。
「ねえ、なに言ってんのかわかんないわよ。」
あたしだんだん不機嫌になってくる。
むーとしながら、悠河クンに抗議。
・・・・あれ、ちょっと悠河クン、背縮んだ?
あたしは振り向いて、唇とんがらせて言った。
「あたしは、りかちゃんでしょ。」
「じょっ・・・・冗談・・」
朝っぱらだけど仕方ない。
小首かしげて、上目で思いっきり甘い顔をつくる。
これならカレは、可愛くてメロメロになるはずだもん。
「正真正銘、あなたの可愛い奥さんの、り・か・ちゃん!」
「だって・・・・・君、」
悠河クン、なんだかいまだかつて見たことの無い段違い眉毛。
「・・・・・・・男じゃん。」
| SEO |