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  『 33 』














かちかちの華奢な手が、やっとあったまる頃家に辿り着く。


コート脱いでる奥さんの横で、俺は必死にエアコンつけて回る。
「ねっ、ねっ、悠河クン~」
「ん?」
振り向いたそこには、ミニスカボディコンのりかちゃん。
肩にちょこんとファーがのってて、金と茶色のぴったりしたライン。
胸元からブルーがちらり。
その下に、控えめに胸元もちらり。
斜めにカットしたスカートからは、綺麗な脚がすんなり。




「どお?」
くるんと回って見せる。
俺はネクタイを外すのも忘れて、見とれてしまう。
「変じゃなぁい?」
「ぜんっぜん!」
「あのね、来年のラッキーカラーなんだって、金と茶とブルー。
 別に信じてるわけじゃないんだけどね。」
ちょっといきがった顔。
うん、りかさんいっつも運は自分で切り開いていたもんね。
「でね、あたし完璧主義のA型だから、これもつけるの。」
うふふ、って笑いながらトナカイのカチューシャ。
頭につけて、小首で俺を覗きこむ。
吸い込まれそうなおっきな目。
甘そうなつやつやした唇。
「どお?」
「すっごく、かわいいっ!!」


「きゃっ!」

思わず俺はりかちゃんを抱き上げてぐるぐる回す。
りかちゃんの笑い声、天から降ってくるみたいだ。












「ごめんね、0時回っちゃったね。」
やっとテーブルについてクリスマスディナー。
「ううん、ウチの時間はあたしを中心にまわってんだもん。
 だからこれはクリスマスのディナー。」



ごめんね悠河クン今日はケータリングなの。
鳥なんて絶対焼けるわけないんだもん。
てことで、テーブルセッティングだけは命賭けたのよ、あたし。
テーブルでさっさっと、鳥をさばいて取り分けてくれる、あなた。
蝋燭に照らされてワインを注ぐあなた。
なんて二枚目なの。
カトラリーを操る指だって優雅。
かっこよくて可愛くて、優しくて素敵で。
だから、いきなり心配になっちゃって。
いてもたってもいられずに、コートひっかけて行っちゃった。
こんなに好きなのが楽しくて。
こんなに好きだから怖かったの。


「なんか、ついてる?」
顔を上げる悠河クン。
「ううん、見てただけよ。」
彼は一瞬照れたような顔になり、
「りかちゃんも食べよう、美味しいよ、このチキン。」
「んっ。」
あたしもスプーンをとって。
スープはお星様型のニンジンなんか浮いてるクリスマスバージョン。
スープもサラダも美味しくて。
チキンも皮はパリパリ中ふんわり。
いっちばん高いケータリングだけあって、美味しくて大満足。



でも、食事が進むにつれて悠河クンてば浮かない顔に。
「・・・・どしたの?」
「ケーキがさ・・」
「うん。」
「俺、今日遅かったから、こんなのしかなかった。」
白い段ボールの中は、典型的なクリスマスケーキ。
メリークリスマスの板チョコがのってて、サンタさんの蝋燭がちょこんとついている。
「ブッシュなんとかとか、色々お洒落なケーキにしたかったんだけど・・・」
で、本当にすまなそうに目を伏せる。





あたしって、そんなにうるさそうかしら。
うるさそうだわね。
ううん、確かにうるさいわ。
だけど悠河クンならそれだけで嬉しいの。
わかってないのかなあ。
わかってないわよね。
「りかちゃんの口にあわないよね。」
ぽつんと言ったりしないでよ。



「食べ方によっては、あうかもよ。」
悠河クン、不思議そうに顔を上げる。
「ねえ、食べさせて。」



フォークなんかで刺そうとするから言っちゃうの。
「ダメ、それじゃあ。」
「え?」
「口移しじゃなきゃ、嫌。」
トナカイの角をぶんぶん振って、唇尖らせて自己主張。



悠河クンちょっと息をのんでから、にこっと笑う。
あたしの好きなあの笑顔で。


「ん。」
「ん。」
あたしは小さな肩を竦めて、首を伸ばす。
小鳥が餌をやるあたしはように、軽く軽く唇が触れる。
あなたとのキスは、いつも震えそうになる。
優しい、優しいキスだから。


いたずら心が湧いてくるの。
人差し指をケーキに突っ込む。
悠河クン、目まん丸にしてる。
いいもん、今日はクリスマスだから、
ちょっと位お行儀悪くても。


人差し指にクリーム一杯。
くるりと回して、鎖骨にちょん。
「ねえ、食べて。」
「えっ。」
「だ・か・ら・食べて。」
拗ねたように言ってみる。
悠河クン、ちょっとおずおずとあたしの後ろに回りこむ。
かがんで舌を這わせて、ぺろん。

「美味しい?」
「ん・・・美味しい?」
なんだか耳まで真っ赤になてってる。
それはワインのせい?あたしのせい?


こんどはクリームを肩にちょん。
おずおずしながら、ぺろん。
次は、胸のちっさな谷間にちょん。
「これじゃ、食べられないよ。」
悠河クン、ちょっと詰ったみたいな声。


「ん・・・じゃあ、もすこしおろせばいい?」
ちょっとずつ洋服をずらしながら、ちょっとずつぺろんってしてもらう。
なんかすっごく刺激的。
なんかすっごくスリリング。





いつのまにかあたしたちはフロアにころがって。
足元にはラッキーカラーのミニスカート。
だけどあたしってばなぜか、角はつけたまんま。



「もう、クリーム・・・ないわ。」
「クリームより、甘いから。」
そう言って、悠河クンあたしの身体をそっと抱きしめて、ちゅう。
顔と言わず身体と言わず、あたしはキスの嵐の中。
ゆ・う・が・ク・ンって呼んでも、聞こえてないみたい。
だからあたしも身体で答えるの。
ぎゅうっと抱き返し目と目が合って、またちゅう。




暖かい身体に、緩やかな振動が伝わって。
それはまるで、あなたの鼓動みたいで。
あたしの中のあなた、その波に揺られながら。
あたし自身に波が寄せてくる。



それは、あなたへの思い。
溢れそうな愛おしさ。
昂まりひとつに波が連なる。


落ちないように、流されないように、
必死であなたを抱きしめる。
なんだか嬉しくて目がうさぎになってるわ。
いつまでもあなたに揺られていたいの。
どこまでもこうやってくっついて。










幸せ過ぎるクリスマス。
あたし滅多に感謝とかしないけど。
だけどね、神様ありがとう。
小さな声で呟いた。





いつまでもどこまでも一緒にいてね、
あたしの素敵な旦那様

























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