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『 26 』
んもう、暑いじゃないのよお。
デッキチェアーに寝そべって、あたしはグロッキー。
梅雨前の五月晴れ。
クーラーつけるのはちょっと早い。
だからあたしは真っ白いデニムのビスチェにサブリナパンツ。
おヘソを日光浴させてあげている。
のどかな昼下がり。
ぼやんとしてると悠河クンのことばっか、考えちゃう。
いやぁん、あたしったらやっぱり彼が大好きなのね。
でね、このごろあたし気がついたの。
悠河クンも結構なナルシストなんじゃないって。
いや、あたしは筋金入りだけど。
彼の場合は、なんていうのかしら・・・・ん~。
あたしはね、ギャラリーがいると燃えるタイプ。
ほぉら!見たいでしょう!!ってついやっちゃうとこがあんのよ。
でもね、彼は違うの。
ギャラリーがいない方がってより、
いようがいまいが独自の道を追求してるのよね。
でも、普段は控えめで良識の微笑でにこにこしてて。
おくびにも出しゃしない。
なんかずるくない?それって。
あたしはVOGUEをめくりつつ考えて、
いつの間にか、うたた寝してた。
ヴェランダの陽射しも傾く頃、はたと目が覚める。
やだもう、こんな時間。
ビスチェの上からエプロンひっかけて、
ブランチの残りをさっさか食器洗い機へ。
「りっかちゃあ~~~ん。」
ああ、ぎりぎりセーフ。
「悠河くぅん。」
思いっきり甘い声で、玄関にぱたぱたぱた。
例によって首に手をまわして、ちゅっ。
ビスチェのあたしに悠河クンてばちょっと目が釘付けなの。
特におヘソをちらちらと。
あたしったら少しいじわる。
「どしたの?」
小首を傾げて上目使い。
「う・・うん、夏先取りって・・・カンジ?」
「変?」
「ううん、かわいい。
・・・・・・・けど?」
「・・・・けど?」
「それでおもて、行った?」
心配そうに覗き込み、眉毛が少し段違い。
「ん~とね。」
ちょっとじらしてみる、あたし。
鼻の頭に人差し指、唇なんか尖らせて。
「行っちゃ、だめ?」
悠河クン、言葉に詰りながら。
「いや、だめってわけじゃないけどさ・・・・・」
ふうん、いいんだ。
あたし意地悪な年上女よ。
そーゆーの見るとからかいたくなっちゃう、悪ーい癖があるんだから。
「ふうん、じゃ、秘密。」
それでスキップでキッチンに逃げちゃった。
「着替えてくるね・・・」
悠河クン、なんとなく寂しげに部屋に入る。
変なトコかっこつけるからよう。
あたしは悪くないもん。
とか思いながらも、少し夕食の支度しよ。
ご飯はね、サルでも炊ける炊飯器を悠河クンが探して来てくれたの。
暑いからスタミナつくように、お肉は冷蔵庫に買ってある。
焼くのはやっぱ悠河クンよね。
あたしはとりあえず出来そうなサラダにしておこう。
クレソン、チコリ、エンダイブ、レタス少しとルッコラ沢山。
ボウルでしゃきっとさせて、水切り器にぶちこんでぐるぐる回す。
ドレッシングはオリーブオイルにレモン、ちょっとビネガー。
あたしも結構上達したじゃない。
とか思ってても、なぜか悠河くんてばまだ来ない。
いつもならそろそろ「りかちゃ~ん」って、
後ろから抱きしめてくれるはずなのに。
まさか、あれくらいで怒っちゃったりしないわよね。
彼ってばりばりのB型だから、あたしには時々意味不明なことがある。
でA型のあたしはなんとなく心配になって、彼の部屋に呼びに行くの。
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