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  『 24 』













うんっと ・・・・・・
どーれーにーしようかなー。



あたしはコンビニで籠を抱えて座り込む。
春だからね、美味しい苺のアメでも買おうかなって思ったの。
でもって、アメの棚の前で蹲って選んでるの。
なんか文句ある?
だって、スーパーとかって嫌いなのよ。
わさわさ人がいて、ぺちゃくちゃウルサイ列に並んで。
悠河クンと一緒じゃないと行きたくないの、あーゆーとこって。
でも今日は風も強いから、遠出する気力もないのよ。
一人の時は大抵こうやってコンビニで済ませちゃう。



新製品もイマイチそうで、あーあとあたしは腰を上げる。
そのとき目に入ったの。
んまあ、なあにこれ?
あたしにおいでおいでしてるみたいな。
まあるいお目目に三角の口。
可愛い!可愛いわっ!!
周りをぐるりと確認して、誰もいないわね。
別に恥ずかしいものじゃないんだけど。
でもね、あたしのイメージってものがあるじゃない。
ああ、でも、欲しいわ。
さささっと籠に入れて、たたたっとレジでお買い上げ。








でもって、団地に帰ってきたの。
リビングのソファでそうっと箱を開いてみる。
いやぁん!!やっぱり可愛いっ!!

程よくまあるい形のいい顔。
ぱっちりした愛らしい瞳。
小さく微笑んだ唇。
片手を上げて、ポーズをとったその姿は、
ああ、あたしに似てるんだわ!
だからこんなに可愛いのね。



あたしは闇雲に納得した。
でもって、お紅茶なんかいれて一休み。
ためつすがめつそれを見る。
ううん、このままでも充分可愛いんだけど、
なんかもっと可愛くできそうな気がするの。
こないだ見たサイトに、なんかそんなのがあったような気がするわ。


あたしはぱたぱたってパソコンに向かう。


そうそうこの、ナントカ工房ってやつね。
「あなたも作ってみよう!」ですって。
作ってやろうじゃないの。
えっと・・・羽根とかビーズとか用意するのね。
ボンドとハサミと針とつまようじ。
テグス・・・テグスってなによ?!
まあいいわ、問題はセンスよね、セ・ン・ス。


ドレッサーの引出しを漁って、ちょこまかしたものを引っ張り出す。
えっと、羽根でしょ、レースでしょ。
あら、ちっちゃなライトストーンとかコサージュとかもいいんじゃない?
テーブルに積み上げて、あたしはおもむろに針を用意する。
ふむふむ、ともかく背中にちまちまつけていけばいーのね。



ぶす。


・・・・・・・・・・   んも―――――――っ!
だから針仕事ってキライなのよ。
なによ、この擬音。
このりか様に、ぶす、ですってぇ!
許せないっ!!


針と相性の悪いあたしは、つまようじに切り替えて。
あーでもない、こーでもないとデザインし始めた。
そう、あたしは凝り性の狼。
でもって実は、細かいA型。
こ・ま・か・い・A型なのっ!


だから夢中になって、羽根やらレースやらつけてみた。
胸には可愛いコサージュに石を入れてみたりして。
手にはやっぱりコサージュとリボンかしら。
子供の頃にやった、お人形遊びみたいで結構楽しいじゃない。











「たっだいまあ~、りかちゃん~~」


いやだ、もうこんな時間。
あたしはぱたぱたぱたと玄関へ。


「お帰りなさい、悠河クンっ!」
で、抱きついて、あたしがちゅううううううっ!
今度はも一度、悠河クンがちゅううううううっ!
「・・・・・どしたの、りかちゃん?」
「ん?なあに?」
「この指。」
右手の指のバンドエイドを指差して。
「あ、これ。
 ちょっと針刺しただけよ。」
「ちょっと、って。
 ちゃんと消毒したの?」
ああん、こんなちっちゃな傷でも眉間に皺寄せてくれるあなた。
「うん、平気。」
「だめだよ、りかちゃんに傷とかつけちゃ。」
悠河クン、長い人差し指であたしの鼻のあたまをこつん。

「俺のなんだから。」

「やぁん。」
きゃって喜ぶあたしと、照れてるあなた。
嬉しくてあたしはリビングにあなたをひっぱって。
「ねえ、見て見てっ!」





テーブルの上には、ハデハデなつきのしらたまさん。
馬鹿でかい羽根と花と石でキラキラよ。


「うわあ、凄い。」
悠河クンはいつものように、目を真ん丸くして驚いてくれる。
ちょっとね、羽根が曲がってるよーな気がするけど。
ちょっとね、花がへろってしてるけど。
いいの、あたしの力作なんだから。
んふふってあたしは満足そうに、しらたまさんを持ち上げる。
「どお?」
「うわあ、りかちゃんに似てない?」
流石悠河クンだわ、鋭いわ。
「でしょう。」
「派手で綺麗で可愛いね~」
彼ってば嬉しそうに、ちょんちょんってつついてる。


あんまり嬉しそうにしてるから、ちょっとあたしは妬けちゃうの。
後ろから悠河クンに抱き付いて。
「ねえ、どっちが可愛い?」
耳なんか軽く噛みながら、聞いてみる。
「りかちゃんてば。」
そして、ちゅって音を立ててキス。
ぎゅうって無理やりネクタイを外し、シャツの釦に手をかけて。



「ちょ、ちょっと・・・・・ 俺、帰ったばっか。」
「だめ、あたしだけ見なきゃ。」




あはは、って笑い転げる悠河クンを押し倒す。
奥さんだもん、いいわよね。




しらたまさんはちょっと呆れたような顔で、こっちを見てる。
いいでしょ、おめかしさせてあげたんだから。
あたしはしらたまさんを、くるりと後ろ向きに。


「りかちゃんてば。」
「いいの、勿体ないから見せてあげないの。」
ぷうっと膨れたあたしを抱きしめて。
小鳥みたいに啄ばみあって。











汗ばむくらい愛しあって、あたしはあなたの腕の中。
まだちょっと、息が乱れてる。
「あのね。」
「なに?」
「しらたまさん。」
ん?という顔で悠河クンが覗き込む。
「悠河クンにあげる。」
「いいの?一生懸命作ったんでしょ。」
「ん、でも、あたしの代わりにおいといて。」




「机の上に。」
悠河クン、おでこにちゅってしてくれる。
「毎日出社したら、ちゅうしとく。」
「あたしだと思って。」
「うん、りかちゃんだと思って。」










毎日毎朝、思ってね。
毎日毎朝、思ってる。




いつだって、どこだって、
あたしの素敵な旦那さま。














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