「引きこもり40年」57歳で社会復帰も…仕事や人間関係など試練の連続「働かんで不安になる。働いても不安になる」
■「引きこもり相談」から57歳で社会復帰
55歳のとき、市の広報誌に載っていた「引きこもり相談」に目がとまった。 「体調は悪いは、不安が増すは、とうとうNPO法人に相談予約の電話をしてみた。どう対応して下さるのだろう」(国近さんの日記 2017年6月23日) 駆け込んだのは、山根教授が運営するNPO法人「ふらっとコミュニティ」だった。山根教授は「来なかったら、孤独死しているかもしれないからと思うから、家に行くよって言って。なので毎週来て下さいねと言って、来られ始めた」と当時を振り返る。 ふらっとコミュニティについて国近さんは、「いろいろ行事がありましてね。講座をやったりとか、いろいろなミーティングをしたり。時にはバレーボールのボールがふわふわなものでできていて、それをみんなでするとか。徐々に徐々に人との距離を取れるようになったかなあ」と語る。 通い始めて2年、国近さんに転機が訪れる。 「(仕事の)ご希望がありますか?どういうことならできそうとか希望はありますか?」(山根教授) 「そうですね、あんまり人と関わらなければいいなあ、なんてねぇ。ああ困ったなあ」(国近さん) 「人とあまりかかわらない仕事がいいということですよね」(山根教授) 「人の中にあまり入れないからやっぱり……」(国近さん) そして、57歳のときにパートタイムでハウスクリーニングの仕事を始めた。 「仕事初日、エアコンと玄関の掃除を任された。失敗せず終えることができた」( 同 2019年6月12日) 「日中は掃除片づけで忙しくしているので感じないけど、夜テレビを消して静かになると、不安な気持ちになってくる。体力落ちたし、仕事はうまくいってないし、本当は仕事したくないし、心の中は引きこもりのときのまま。順調に進む人生、送れないのかな」( 同 2020年2月23日) 国近さんは働き始めてからも、ふらっとコミュニティに通っている。「僕は一人暮らしなもんでね、もう親戚も疎遠だし、知り合いもあんまりいないし、ですからここに来てつながってないとやっぱり何かあったときには困るなあと思ってここに来ている感じですかね」。 先輩のアドバイスのもとトイレ掃除の仕事に励んでいた国近さん。この日のことも日記に記されていた。 「疲れた、休憩も昼食時間もなく、あれやれこれやれで急かされて、こき使われてもう体が限界」( 同 2023年3月11日)