愛知県江南市で発生した市立中3年の女子生徒のいじめ重大事態を巡り、学校が取りまとめた調査報告書について、女子生徒の両親が書面の提供を求めたのに対し、学校や市教育委員会は口頭で説明するのみで提供を拒否していたことが、母親への取材で判明した。
母親は保有個人情報開示請求を行い、交付費用として1枚につき10円を支払った上で、計11枚の報告書を約2カ月後に入手した。母親は「当事者なのになぜ提供してもらえないのか。いったい誰に対する報告書なのか」と学校や市教委の対応を批判している。
市教委や母親によると、女子生徒は中学1年時に他の生徒から暴力を受け靱帯(じんたい)損傷やあごを脱臼するけがをしたり、交流サイト(SNS)で悪口やいたずら画像を拡散されたりした。2年時にも同級生の文具紛失を巡り誹謗(ひぼう)中傷を受け、市教委は昨年10月にいじめ重大事態に認定。学校に調査を指示した。
学校は今年2月、調査報告書を提示しながら両親に調査結果を口頭で説明。その際、両親は報告書の提供または撮影許可を求めたが、学校側は「渡せない」と拒否し、市教委も開示請求して入手するよう回答したという。
文部科学省のガイドラインでは、調査結果の説明として、調査報告書または概要版資料を「提示または提供し、口頭で説明する方法が考えられる」としている。また、臆測や誤解を生まないために「公表することが望ましい」と明記している。
報告書の提供を拒んだことについて、学校側は「市教委に何も答えないように言われている」とし、市教委の担当者は「学校がガイドラインに沿って判断したこと。(報告書は提供していないが)保護者は調査結果の説明時に録音をしていた」と釈明した。
女子生徒は現在、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、通学はできるが教室には入れずにいる。
母親は「娘は今でも加害生徒を見ると急に意識を失い倒れてしまう。それほど苦しんでいることに対し、市は責任を感じてほしい」と話す。その上で「娘への聞き取りすらしていない学校側の調査は到底納得できない」と強調した。
学校や市教委の対応について、名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学)は「被害者に寄り添うものではなく、不誠実で最悪な対応だ。(提供ではなく)提示を選んだ正当な理由が示されなければならない。保護者には事実を知る権利があり、生徒がその後、充実した学校生活を送るためにも納得できる対応が求められる」と指摘している。【川瀬慎一朗】