~誕生日~
「邪魔だ」
霊妙が目の前にいる秋霖に言う。
「誰がだ?」
秋霖は冷たく言い放つ。
「お前がだ。そこは俺の特等席だ」
霊妙が秋霖が座っている席を指差す。
此処は木の葉の巫女である綺羅を始め、木の葉四大口寄せ動物の使い手である人間が入れる部屋である。
またこの部屋は別名彼らの憩いの部屋である・・・らしい。
「俺は綺羅に『秋霖、此処で待っててね(にこ)』って言われたんだ。だから此処で待つ」
秋霖は霊妙に自慢げに言う。
まるで『霊妙、お前は綺羅にそう言われたのか?』といった感じに。
「何だと・・・お前が綺羅にだと」
霊妙は疑うように言う。
「ああそうだ」
秋霖は笑みを浮かべている。
霊妙は不機嫌な顔になる。
「それは関係ない。とにかくそこをどけ。さもなくば貴様を殺す」
霊妙はクナイを出して言う。
「ああ、良いだろう。出来るものならやってみろ」
秋霖も戦闘態勢に入る。
「うっさいってばよぉ」
部屋の奥から月色の髪を持つ少年が現れる。
「白露か。今、取り込み中だ」
霊妙がチラッと白露を見て言う。
秋霖は見ようともしない。
「あのさ、人様の貴重な睡眠の時間を潰した奴の言う台詞か、それ?」
白露の背後から妙なオーラが出ている。
霊妙と秋霖は体をピクリと反応させる。
『ヤバイ・・・白露の機嫌が非常に悪い』
両者は同時にそう思うのであった。
「ひゃっほう!久しぶりだな全員揃ってるなんて!」
突然、テンションの高い少年が入ってくる。
そして、後ろから白露に抱きつく。
別に彼は白露が好きな訳ではない。
彼なりのあいさつなのだろう。
『なんてことをするんだ、樹氷っ』
霊妙と秋霖は変な汗を流しながら思う。
「どうしたんだ?二人とも、変な顔して」
樹氷は霊妙と秋霖を見て問う。
「うわっ」
突然、白露が樹氷を投げ飛ばす。
「っ、いってぇなぁ。何すんだよ、白露っ」
樹氷は大声で言う。
「うざい、ムカツク、死ね」
白露はポツリポツリと言う。
「はぁ、何だとっ」
樹氷はそう言うとクナイを白露に投げる。
白露はスッとそのクナイを避ける。
そのクナイは霊妙の側を通り過ぎ、壁に刺さる。
壁にピキッとひびが入る。
「俺を殺すつもりか、樹氷・・・」
霊妙はそう言うと暗部服の下からワイヤーから取り付けた武器を出す。
秋霖は冷静に席に着いている。
「全部、壊す」
白露はそう言うと背に掛けていた大きな斧を手に構え、思いっきり振る。
他の三人はサッと避ける。
「おい、誰のせいだ」
秋霖は冷静に問う。
「樹氷だろ」
霊妙は樹氷を睨む。
「俺じゃねぇだろっ。キレてるあいつが悪い」
樹氷は白露に向かって鎖の先に鉄球のついている武器を振り回す。
その鉄球が霊妙や秋霖にあたりそうになる。
「何やっての?うるさいよ」
綺羅が笑顔で部屋の扉を開ける。
彼女が扉を開けた丁度その瞬間、部屋の中央のテーブルがバキッと音をたてて崩れる。
彼らは綺羅の存在に気づかない。
「あんた達、一変死んでみる?」
綺羅は最高級の笑顔で言った。
彼らが彼女の存在に気づいた時は時既に遅し。
彼らの足下からニュルニュルと茨のある植物が出現し、四人の足をからめ取る。
綺羅はクスクスと笑っている。
「綺羅・・・すいませんでした。俺が悪かったです」
四人は声を揃えて言う。
「宜しい」
綺羅はにっこりと笑った。
そして、四人を開放する。
「で、何してたの?」
綺羅は優しく問う。
「樹氷が悪いんだ」
白露が樹氷を睨んで言う。
「ちげぇよ、てめぇが悪いんだよ」
樹氷がすぐさま白露の言うことを否定し、白露が悪いと言う。
「はぁ?何だよ」
白露が樹氷に突っかかる。
樹氷も負けじと白露を睨む。
「そうだ!霊妙と秋霖が悪いっ」
白露と樹氷が声を合わせて言う。
「は、何を言い出すと思えば。てめぇらが勝手に騒いんだんだろ」
霊妙がやれやれと言った表情をする。
秋霖はじっと黙っている。
目の先には先ほど座っていた所を見つめている。
「綺羅、俺は悪くないんだ」
白露と樹氷が同時に言う。
そして、お互いにらみ合う。
「ねぇ、黙って。うざいから」
綺羅がにこっと笑った。
四人全員がビクッと反応した。
「要するに全員悪いと。いいわけは聞きたくない。」
綺羅は四人を笑顔で見る。
「まぁ今日の所は許してあげるから。あ~あ、机が壊れちゃってる。ちょっと、机探してきて」
綺羅は壊れた机を燃やして言う。
「樹氷が行けよ」
白露が言う。
「霊妙が行けよ」
樹氷が言う。
「秋霖が行けよ」
霊妙が言う。
「白露が行けよ」
秋霖が言う。
「だから、樹氷がいけ・・・」
白露がそう言い掛けて止める。
綺羅がニッコリ笑顔で睨んでいる。
矛盾だ・・・。
「みんなで行ってきて」
綺羅が手にクナイを四本持って笑って言う。
「分かりました・・・」
四人はそう言うと部屋を後にする。
「たっく、誰の所為だよ」
樹氷がブツブツと言う。
「お前だろ」
白露がブスッとした顔で言う。
「はぁ?お前が悪いんだろっ」
樹氷が白露に突っかかる。
「止めておけ、これ以上騒ぐとほんとに綺羅がキレるぞ」
秋霖が冷静に言う。
樹氷は白露から手を離してそっぽを向く。
ふと四人の視界に食事をしている二人の暗部が映る。
そこには彼らが探している机が。
「おい、この机借りても良いか」
霊妙が唐突に言う。
二人の暗部は四人の姿を見てビクリと反応する。
「えっと、あの・・・」
暗部の一人がおどおどと言う。
「何?くれないの?」
白露が不機嫌そうに言う。
ビクリと暗部の二人は反応する。
「いや、そんなわけないですよ・・・是非使って下さい」
暗部の二人はそう言うとそそくさとその場を後にした。
樹氷が軽々と机を持ち上げる。
「じゃ、戻るか。『樹氷、絶対にあの部屋に来てね。待ってるから』って綺羅に言われてるからな」
樹氷がそう言うと霊妙、秋霖、白露が反応する。
樹氷はきょとんとした顔をしている。
「お前、いつそういわれたんだ」
霊妙が低い声で問う。
「えっ、いつって・・・昨日の夜だと思うけど。それが何?」
樹氷は疑問符を浮かべる。
「そう言われたのは俺だけでは無かったと言うことか」
秋霖がポツリと言う。
「何々?みんな言われたんじゃないのか」
状況が飲み込めない樹氷が問う。
「少なくとも俺は・・・『暇だったら来てね』と言われただけだ」
霊妙がイライラしながら言った。
「右に同じ」と白露が言う。
顔が不機嫌だった。
それを聞いた樹氷は「ひゃっほうっ!」と喜んだ。
「きっと綺羅は俺に気があっ、いってっ」
白露がビシッと樹氷を殴った。
「何すんだよっ」
樹氷が怒鳴る。
「なんかムカツいた」
白露がそっぽを向いて言う。
「白露、問題は何故奴らは綺羅にあのような台詞を言われたのに俺らは言われなかったのかだ」
霊妙が冷静に言う。
しかし、どこか怒りを感じる。
「全くだな」
白露がポツリと言う。
「でも確かに謎だな・・・」
秋霖が考えるように言う。
「だから、きっと綺羅は俺のことがすっ、いってっ・・・白露またてめぇか」
「なんかムカツいた・・・あっ、分かったかも俺」
白露が手をポンと叩く。
「何?」
霊妙と秋霖と樹氷が反応する。
「誕生日・・・秋霖と樹氷の誕生日が前にあった」
白露がそう言うと秋霖と樹氷が嬉しそうな顔をする。
「いやー、さすが綺羅だな。やっぱり、綺羅は俺のことがすきっ」
「じゃない」
白露と霊妙と秋霖がすかさず声をそろえて言う。
「なんだよー、嫉妬すんなって」
「死ね」
白露がクナイを投げつける。
「っ、あぶねぇなぁ」
「俺の誕生日も近々あるはずなのにな」
霊妙が考え込むように言う。
ぽんっと白露が霊妙の肩を叩く。
「気にするな。誕生日を忘れられたことなんて」
白露が哀れむような顔で言う。
「殺すぞ、てめぇ」
ギロッと睨む。
「今は俺達が仲違いしている場合じゃない。綺羅があいつらを祝わないようにするのが今回の任務だ」
白露が冷静に言う。
霊妙は「そうだな」と頷く。
「悪いが死んでもらう」
白露と霊妙が声をそろえて言う。
「は、何を考えってんだよ。二人とも。まぁ、嫉妬するよなぁ・・・普通」
樹氷がニヤリと笑う。
秋霖はやれやれといった表情だ。
そして、戦いは始まった。
爆音が響く。
大声が聞こえる。
物が飛び散る。
人が驚き、逃げる。
「何の音だ?うるさいな」
休憩室にいた沙羅が前にいる翌檜に言う。
「また、騒いでいるのだろう・・・あいつらが」
翌檜が遠くを見ながら言う。
「・・・心配だな。今日は一段と音がでかい」
沙羅が部屋をうろうろしながら言う。
「心配なら見に行くか」
「そうだな。とりあえず巫女殿がキレる前に止めなくては」
ドゴーンっと爆音がした。
沙羅がビクリと反応する。
そして、二人は急いで部屋を後にした。
「これは・・・酷い」
沙羅が無意識に呟く。
そこは荒れ果てていた。
倒れている人も見受けられる。
当の本人達はまだまだ元気いっぱいといった感じだった。
「誰かくたばれよ」
白露が服の埃を払いながら言う。
「じゃあ、てめぇがくたばれ」
樹氷が鉄球を振り回す。
物がバキバキと壊れる。
「こうなったら、口寄せしてやる」
四人が同時に言う。
全くこの四人は息が合うこと。
「ちょっと、お前らそれは止めろ」
慌てて沙羅が四人を止めようとする。
「邪魔するなっ」
再び声がそろう。
沙羅の顔が歪む。
「邪魔・・・するなだと。地獄に落としてやる」
沙羅はそう言うと印を組もうとする。
ところが翌檜に肩を掴まれて止められる。
「落ち着け、沙羅。ここでお前まで戦ったら、もっと酷いことになる」
翌檜が冷静に言う。
「だが、しかし・・・このままでは、ここが破壊される」
沙羅が心配そうに言う。
「大丈夫、沙羅。心配はいらない」
「巫女殿、何時の間に」
沙羅が驚きの表情を浮かべて言う。
「さっきからずっと」
顔が笑ってない。
無表情だ。
「やっぱり一度死んでもらわないと」
綺羅がポツリと言う。
恐い・・・巫女殿がキレた。
沙羅は思うのであった。
綺羅は指先を噛み切り、床に口寄せ召還の文字を書く。
すぐに彼女の後ろには木の葉四大口寄せ動物達が召還される。
「自分の主人を殺しなさい。私に文句はないでしょ」
綺羅はそれぞれの動物達に笑みを投げかける。
「・・・御意」
青龍、朱雀、白虎、玄武の四体は自らの主人に襲いかかる。
「朱雀、お前っ」
霊妙は朱雀の炎に後ずさりする。
「どうしたんだ、青龍っ」
秋霖の体に青龍が巻き付く。
「俺が分からないのか?白虎っ、俺だよ」
体当たりをしてくる白虎に白露は驚く。
「玄武・・・赤丸に嫉妬してるのか?今日の俺は嫉妬されまくりだ」
樹氷は玄武に踏みつぶされそうだった。
「綺羅様、お怒りになられている」
四大口寄せ動物達は声をそろえて言う。
霊妙、秋霖、白露、樹氷の四人がビクリと反応する。
「綺羅が・・・」
四人は辺りを見渡す。
そして、視界に入るのは無表情の綺羅。
「綺羅、悪かった」
四人は頭を下げる。
ポンッという音をたてて口寄せ動物達が消える。
「許さないよ・・・せっかく秋霖と樹氷の誕生日のお祝いをみんなでしようと思ってたのになぁ」
綺羅がポツリと言う。
「もう、今年はみんなの誕生日なんて祝ってあげないっ」
綺羅はニッコリ笑うとその場を後にする。
「きちんと綺麗に片づけときなさいね」
綺羅はそう言い残す。
冷たい空気がその場を支配した。
時間がたった。
静まった。
そこには
秋霖/
樹氷
がいた。