【記憶】

「ねぇ、火影様。今回は何の忍務ですか。」
綺羅こと日向ヒナタはにこにこ笑顔で言う。
「少し待ってくれ。もう一人がまだ来ないんだ。」
綱手は複雑な表情をしていた。
「誰と一緒の任務なの。」
綺羅は興味津々といった感じ言う。
「私です。巫女殿。」
火影の部屋の扉が開き、髪の長い少女が入って来る。
暗部の象徴である面をしている為、表情は分からない。
「ハナビちゃんが任務に出るなんて珍しいね。」
綺羅はハナビと呼んだ少女に近づいてパカッと少女の面を取る。
「巫女殿、その呼び方は表の時だけにして下さい。」
ハナビは少し顔を赤くしながら言った。
彼女の目は綺羅と同じ白い瞳だった。
「分かったよ、沙羅。」
綺羅は微笑んだ。
沙羅こと日向ハナビはヒナタの妹である。
「二人そろったところで今回の忍務の内容だが・・・。」
綱手は一つ間を開ける。
綺羅は笑っていたが沙羅は真剣な表情をしていた。
「お前らも良く知っている日向ネジの救出だ。」
綱手がそう言うと綺羅と沙羅は同時にえっと言った。
「何でネジ兄さんがっ。」
綺羅はヒナタに戻って言う。
「あいつ、そんなに弱かったか。」
沙羅はハナビに戻って言う。
「二人とも落ち着け。」
綱手がそう言うとヒナタとハナビは暗部姿になった。
「でもさぁ、火影様。ネジ兄さ・・・じゃなくて秋霖ならわざわざ私達が助けに行かなくても良いんじゃないですか。」
綺羅はにっこりと笑った。
「巫女殿言うとおりです。ああみえても秋霖はかなり強いですし。」
沙羅が綺羅に続けて言う。
「いつもの秋霖ならな。」
綱手が大きなため息を一つする。
「どういうことですか。」
綺羅が疑問符を浮かべる。
「敵の中に記憶を操ることの出来る者がいるようだ。忍務からなかなか戻らない秋霖を心配して暗部を秋霖の元に送ったのだが・・・。暗部の力があっても中に入ることは出来なかったそうだ。それで、何とか手に入れた情報が敵の中に記憶を操る者がいると言うことだ。」
綱手の話を綺羅は珍しく真面目に聞いていた。
「それじゃあ、早速。秋霖救出作戦を決行します。」
綺羅は笑顔で言うと火影の部屋の窓から外に出る。
沙羅は綱手に一礼して綺羅の後を追った。





綺羅と沙羅の二人は目的地に着いていた。
目的の場所は何処の忍里に属さない広い土地である。
その場所は既に忍里なみの規模であった。
「沙羅、敵の人数と秋霖の居場所は分かる。」
綺羅は目を輝かせて目的地を見ていた。
「塀の周りにいる敵だけで五十人。中には・・・三百人程いますね。秋霖の居場所は残念ながら分かりません。でも、一カ所だけ結界を貼られている場所がありますからそこにいるんじゃないですか、多分。」
沙羅は眼を白眼にして分かる情報を綺羅に伝える。
「今回の忍務はなかなか楽しめそうね。」
綺羅は嬉しそうに言う。
沙羅はそうですかといった表情をしていた。
「周りの五十人は一気に私が殺っても良いですか。」
沙羅が綺羅に問う。
「うん、良いよ。」
綺羅は笑顔で許可した。
沙羅は素早くを印を結び地面に勢い良く手を付ける。
塀の周りにいた敵が次々と声を出すこともなくバタリと倒れていく。
「流石だね、沙羅。それじゃあ、侵入しますか。」
綺羅はわくわくしながらそう言い、塀を越えて中に入る。
沙羅は黙って綺羅に続く。
中では既に多くの忍達が待ちかまえていた。
「あちゃあ、私達が来るのばれたのかなぁ。」
綺羅はそう言いつつも敵を次々と軽やかに倒していく。
綺羅の腕には隠し刃がある。
彼女の側には綺羅の口寄せ動物である青い蝶が舞っていた。
蝶に触れられた者はうっと短く声をあげて倒れる。
この蝶には命を吸い取る力がある。
沙羅は襲ってくる敵を片っ端から倒していく。
しかも瞬殺である。
三百人程いた敵も次々と減っていく。
周りを見ると死体の山である。
綺羅は秋霖の居場所を知っているかのように前に進んでいく。
沙羅は黙って着いていく。





「敵は多いけど一人一人が非常に弱いっ。つまらない・・・。本当に秋霖はこんな奴らに負けたのかなぁ。」
綺羅はぶつぶつ言う。
「まだ記憶を操れるような者とは出会ってませんからね。油断は禁物です。」
沙羅が慎重に言う。
ふと二人の視界に一人の男が映った。
「一人でいるってことはあんた強いでしょ。」
綺羅は男を凝視しながら言う。
沙羅は警戒していた。
「俺は・・・強いよ。」
男がポツリと言った。
「・・・。」
珍しく綺羅が何も言わないのを沙羅は不審に思った。
まさかっ、あいつが記憶を操れる者っ。
沙羅はとっさにそう思い大声を出す。
「巫女殿っ、しっかりして下さい。」
沙羅は死んだ眼をした綺羅を思いっきり揺する。
「ふぇっ、ハナビちゃん。・・・あっ、あいつが記憶を操れる敵かぁ。油断したな。」
綺羅は頭をぶるぶると振って戦闘態勢になる。
「沙羅、あいつの目を見ちゃいけないよ。」
綺羅はいつもの笑顔で沙羅に忠告する。
「そのようですね・・・。しかし巫女殿、今のは危なかったですよ。私がいなければどうなっていことか。」
沙羅が綺羅に注意する。
「ごめんね。」
綺羅が手を合わせて謝る。
「お前が日向ヒナタか・・・。確か暗部名は綺羅。お前に最も良い相手を用意している。」
男がそう言うと天上から一人の忍がスッと現れた。
眼の色は綺羅と沙羅と同じ白い色をしている。
「秋霖っ。やっぱりこいつに負けたのね。」
綺羅はこんな状況にもかかわらず笑っていた。
「巫女殿、あいつは私が殺るので秋霖を頼みます。あっ後、秋霖を間違っても殺さないで下さい。」
沙羅は冷静に状況判断をして言う。
「えー、やだ。私、あいつと戦いたい。」
綺羅が子供のように言う。
その瞬間、秋霖が綺羅に日向の技である柔拳をきめようとしていた。
綺羅は一瞬驚いたような表情をしたがすぐにクスリと笑った。
「良いよ、秋霖。相手してあげる。すぐに記憶なんて戻してあげるから。」
綺羅と秋霖の戦いが始まった。
二人が戦うのは中忍選抜試験以来である。
沙羅はニヤリと笑いながら綺羅と秋霖を見ている男に攻撃を仕掛ける。
「うわっ・・・くっ。」
油断していた男の腹部に沙羅の柔拳がきまる。
「お前、記憶を操る以外は特に何も出来ないだろう。」
沙羅が男を見下すように言う。
男は苦しそうにうずくまっている。
沙羅が男から視線を離した瞬間、沙羅は男に腕を引っ張られ倒れ込んでしまう。
「っ、しまったっ。」
沙羅は体に衝撃が走るのを感じる。
男の力が思ったより強かった。
「俺の目を見ろっ。・・・っごほっ。」
男は沙羅の首を絞めながら言う。
男は吐血する。
沙羅の体に暖かい液体が掛かる。
「くっ、うっ。」
沙羅は唸る。
男の目を見ることが出来ずにいた。
力が入らない。
気が遠くなる・・・。
「沙羅、しっかりしなさい。」
先ほど沙羅が言った言葉を今度は綺羅が言う。
「沙羅様から手を離しなさい。」
突然、綺麗な声がした。
沙羅の視界に美しい青髪を持つ女性が映る。
女性の背中には青い羽があった。
「何者だっ、貴様。」
男が唸るように言う。
「黙りなさい。早く沙羅様から手を離しなさい。貴方が死にますよ。」
女性が冷たくぴしゃりっと言った。
「だったらこの女も道連れにする。」
男の手に力が入る。
「お前・・・などに殺られるかっ。」
沙羅はそう言うと眼を白眼にして相手に強烈な柔拳をきめる。
男は飛ばされ壁に打ち付けられる。
吐血する。
床が赤く染まる。
「けほっ、ごほっ。」
沙羅は苦しそうに喉をおさえる。
「大丈夫ですか、沙羅様。」
女性が沙羅を労るように言う。
「貴方は・・・誰?」
沙羅は女性をじっと見る。
「初めまして沙羅様。私は綺羅様の口寄せ動物である青い蝶です。名前は青蝶です。」
青蝶は微笑んだ。
「貴方があの蝶・・・。」
沙羅はだんだん落ち着いてきた。
「そうです。」
青蝶は穏やかに言った。





「良かったぁ。沙羅が無事で。」
綺羅がそう安堵のため息を付く。
秋霖は何も言わず綺羅に攻撃を仕掛けてくる。
綺羅は手加減して戦っているので秋霖の方が優勢だった。
「何か言ってよ、秋霖。」
綺羅はにっこり笑って言う。
「・・・。」
秋霖は何も言わない。
的確に綺羅の急所を狙う。
綺羅はだんだん不満そうな顔になる。
周りの人間が自分のことを忘れるとは思ったことはなかった。
みんな当たり前に自分の側にいると思っていた。
特に秋霖は暗部の中でも一番長く一緒にいたから秋霖が綺羅のことを忘れるなど信じられなかったのである。
秋霖の柔拳が静かに綺羅にきまった。
綺羅は驚いた顔をする。
「巫女殿っ。」
沙羅が叫ぶ。
しかし立ち上がることが出来ない。
頭がクラクラした。
どんっという大きな音がする。
綺羅が壁に打ち付けられる。
秋霖が冷たい目で綺羅を見ている。
綺羅は動かず黙っている。
「巫女殿・・・。」
沙羅は心配そうに言う。
「大丈夫です。綺羅様はあんなに弱くないです。」
青蝶が冷静に言う。
「ああ、もう止めた。手加減なんてしてあげない。沙羅、秋霖が死ななきゃ良いんでしょ。」
綺羅が冷たく言った。
眼が恐かった。笑っていない。
「そうですけど・・・。」
沙羅が少し怯えながら言った。
青蝶も驚いた目をしていた。
「じゃあ、半殺しは良いのね。体中の骨をバラバラにしてあげようかしら、それとも目つぶし?」
綺羅が不気味にニコリと笑った。
沙羅と青蝶はぶるっと震えた。
巫女殿がキレた・・・。
沙羅はそう思った。





綺羅は目を白眼にして秋霖に柔拳をきめる。
また隠し刃を使って秋霖を切り裂いていく。
綺羅の方があっという間に優勢になった。
沙羅と青蝶は呆気にとられていた。
秋霖がフラフラと倒れた。
バタリと音がした。
綺羅はゆっくりと倒れた秋霖に近づく。
「どうして、私のこと忘れちゃったの。私だったら秋霖のこと絶対忘れないのに。」
綺羅が悲しそうな表情をして言った。
あんな綺羅の表情、初めて見たと沙羅は思った。
秋霖の目が一瞬動いた。
「秋霖・・・私、貴方のことが好きだよ。だから、思い出して。」
綺羅はそう言うと一粒の涙を落とした。
秋霖の頬に暖かい涙が触れる。
綺羅はそっと秋霖に口づけする。
沙羅は巫女殿と声を出そうとしたが青蝶に止められた。
静かな沈黙が流れる。
沙羅は不満そうにじっとしていた。
「っ、ちょっと、秋霖っ。」
突然、綺羅が声を上げる。
「勝手に舌入れないで。」
綺羅の口調は怒ってはいたが顔は笑っていた。
「すまなかったな、綺羅。それにしても貴方があんな行動に出るとは珍しい。」
秋霖の記憶が戻ったようだった。
彼はそっと綺羅を抱きしめた。
「今度私のことを忘れたら殺すからね。」
綺羅は微笑んだ。
少し恐かった。
「もう忘れませんよ。」
秋霖はそう言うと綺羅に口づけをした。
綺羅がパシッと秋霖の頭を叩いた。
「今は忍務中なの何を考えてるの。」
綺羅はニッコリ笑った。
「貴方のことを考えている。」
秋霖は真顔で言った。
綺羅はクスクスと笑った。
「それじゃあ、さっさと此処を破壊して帰りますか。」
綺羅が笑顔で言った。


その後、此処は跡形もなく消えた。
此処にいた三百五十人の人間はこの世の灰となった。
綺羅と秋霖は仲良く木の葉の里に帰っていった。
沙羅はそんな二人を不満そうな顔で見ていた。


(終わり)

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久しぶりにスレ小説を書きました。
スレネジヒナは初めてです。
後スレハナビも初めて。
スレハナビはあまり見ないですよね。
綺羅と沙羅が混じりました(笑)

一番始めに書いたスレ小説に出てきた青い蝶が人間化してしまいました。
名前は「青蝶(せいちょう)」です。
青い蝶で青蝶、まんまですね・・・(笑)
ちなみに青蝶は女です。
此処まで読んでいただき有り難う御座いました。
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