論理的思考とは 39「演繹法・帰納法・弁証法」
テーマ:論理的思考
「論理的思考」にかかわる要素として、つぎの三つがあるということをすでに何度か指摘しています。
分析
判断
推理
このうちの「推理」については、以前の記事「論理的思考とは 10『推理の要素・種類』」において、つぎの三種類があると書いています。
演繹法
帰納法
類推法
ところで、今回は同じような用語ではあるが、「推理法」ではなく「論理学」としてとらえた、つぎの三種類のものについて考えたいと思います。
演繹法
帰納法
弁証法
「弁証法」というのが新しく出てきましたが、これら三つの論理学について概観した、たいへんすばらしい文章がありましたので、ここに紹介します。
上山春平著『弁証法の系譜』(未来社 一九六八)の第四章「演繹法・帰納法・弁証法」です。
〈西洋の論理学には、基本的にいって、演繹論理学、帰納論理学、弁証法論理学という三つの系譜がみとめられる。
以下、三つの論理学の成果を簡単に要約しておきたい。
A 演繹論理学の成果
演繹論理学は古代ギリシャ哲学の発展過程において成立し、①アリストテレス系の名辞論理学と、②ストア系の命題論理学の二系統に分れた。(中略)
今世紀のはじめに、ラッセルとホワイトヘッドの『数学原理』において、一つの公理系に統一された。
B 帰納論理学の成果
帰納論理学は、ベイコンの『新オルガノン』以来、主としてイギリス経験論の系譜にそって発展し、ミルの『論理学体系』において、古典的表現を得る。(中略)
一九世紀後半以降、演繹論理学が記号計算の体系に組み変えられた時期に、帰納論理学の推論も、確率(蓋然性)計算の枠内で操作されるように変形されたが、確率概念の解釈をめぐって、この新しい帰納論理は、①確認度理論と、②頻度理論の二系統に分れた。
①を代表するものとしては、ケインズの『確率論』などがあり、②を代表するものとしてはR・フォン・ミーゼスの『確率・統計・真理』などがある。(一部省略)
右の二系統の統一的把握は実現されていない。
C 弁証法論理学の成果
弁証法論理学はドイツ観念論の系譜にそって形成され、一九世紀のはじめに、ヘーゲルによってその基礎を確立された。
それは、一九世紀の後半から二○世紀にかけて、①マルクス主義論理学と、②プラグマティズム論理学という二つの道を通って発展してきた。
D 三つの論理学の関係
演繹論理学は、紀元前四世紀ころ、ソクラテスからアリストテレスにいたる古代哲学の確立を前提として成立し、帰納論理学は、一七世紀に、当時勃興した自然科学の刺激をうけて成立し、弁証法論理学は、一九世紀に入って、フランス革命(一七八九)から二月革命(一八四八)にいたる社会革命と、イギリスを中心とする産業革命の時期に、当時その基礎を確立した社会科学と深い連関をもって成立した。
演繹論理学が視野を思想の世界に限るのに対して、帰納論理学は思想と外界の事実との連関をとりあつかい、弁証法論理学は、思想と事実の関係をかえてゆく思想の担い手を視野のなかにとりいれる。
したがって、三つの論理学が、それぞれ、思想、自然、人間のコントロールを主要な任務とする哲学、自然科学、社会科学の確立にともなって理論化されたのは、偶然とは言えない。
演繹論理学が、記号相互の関係のみをあつかうのに対して、帰納論理学は、こうした理論を前提としながら、記号体系とその指示対象との関係を分析し、弁証法論理学は、右の二つの論理学を前提としながら、記号と対象と記号主体の三項関係をあつかう。〉
以上長い引用となりましたが、三つの論理学の具体的な内容はともかくとして、それぞれの性格がよく分かる概観で、大まかな理解がえられたのではないでしょうか。とくに最後の段落で述べられていることはたいへん興味深いと思います。