~天使が護るべき者~


〔7.過去への道〕


公園にある噴水の水が太陽に照らされて宝石のように輝いている。
暖かいような冷たいような風が吹く。
ネジの髪がさらさらと流れる。
「ネジ、お前にヒナタを護れるか?」
イタチは青い青い空を見ながら言う。
話を振られたネジはわけが分からないという顔をする。

「ご両親を護れなかったお前にヒナタを護れるのか?」

ピキッ。心に罅が入った。
何を言い出すんだ突然。

「次は彼女番かな・・・」

イタチは冷笑を浮かべた。
ネジは背筋が冷やりとするのを覚えた。
『ネジ兄さん』
ヒナタの笑顔が浮かんだ。
それも溢れるぐらいたくさん。会ってからまだ間もないというのに。
彼女は俺の中でこんなに大きな存在になっていたのか・・・?
心臓が痛い。
ヒナタがいなくなったら、俺はどうする?いや、その前に俺は彼女を護れるのか?
俺はいつも護られている。
父さんも母さんも護れなかった。護られた。
頭の中が赤く赤く染まる。グチャグチャだ。
ネジは右手で頭を抑える。

「そろそろ頃合だな」
イタチの発言はネジの耳には届かない。
太陽が雲に隠れる。
公園が真っ暗になる。闇、ヤミ、やみ。
いるのはイタチとネジのみ。
ゆっくりと悪魔の背から漆黒の羽が生える。
彼の目は血の色に染まる。
その目に映るは真っ黒な心の持ち主。
ズキン、ズキン。頭がガンガンする。
頭に釘が刺されているような気分。
ガンっと体に衝撃が走る。自分の輪郭がぶれた。
イタチがネジを公園の最も大きい木に打ちうけていた。
息が出来ない。苦しい。
意識が・・・途切れそうだ。
視界がぼんやりする。
イタチが悪魔?


「ネジ兄さんっ」


息を切らせてヒナタがやって来た。
既に背から白い羽が生えていた。
顔が青い。
「イタチさん・・・」
ヒナタはぽつりと言った。
「以外と早いご到着で」
悪魔がククっと笑った。
天使の目は正義の目。
「ネジ兄さんは私が護ります」
ヒナタはステッキを構える。イタチは鎌を手に握る。
聞き覚えのあるような金属音がネジの耳に微かに届く。
ズシャアっと大きな音をたててヒナタがイタチに吹っ飛ばされる。
バシャン。
噴水の水の中に落ちた。
嘘、深いっ。
ヒナタは急いで水面を目指す。
水の鏡にうっすらと笑みを浮かべているイタチが映る。
それと同時に体中に痛みが走る。
水が一気に赤く染まる。
何が起こったの・・・?
ヒナタは傷だらけだった。
グォンっと下へ下へと引きずり込まれる。
水中には何もいないのに。
頑張らないと。誰がネジ兄さんを護るの?

私でしょ。

ヒナタはしっかりと目を開いて地上を目指す。
ザパァッっと彼女は水から解放される。
髪も服もビショビショである。
イタチはパチパチと拍手をしていた。
馬鹿にしているようにも思える。
「まだまだですっ」
ヒナタはステッキを構えなおす。
そして、呪文を唱える。

Dances of white ice.(白い氷の舞)

天使の白い羽が鋭い氷の刃へと変わる。
その羽がイタチ目掛けて大量に飛んでいく。
悪魔は鎌で氷を弾く。まるで塵を払うように。
「その程度か」
彼はそう言うとヒナタ目掛けて攻撃をしかける。
ヒナタはステッキで鎌を支える。
明らかに押されている。
分かっている。今の自分ではイタチに勝てないことぐらい。
でも、護らなきゃ。
ヒナタは手で鎌を押さえる。
ツッと手から出血する。
イタチはヒナタの行動に疑問符を浮かべる。
ステッキが悪魔の心臓に触れる。

「God's thunder(神の雷)」

ステッキに電撃がバチバチと走る。
イタチは鎌をヒナタに抑えられていて動けない。
しまった・・・。
彼は額に汗が伝うのが分かった。
だが・・・このままではお前もただでは済まないないはず。
大きな爆発が起こった。
しかし、やけに静かだった。
ヒナタもイタチも木に叩きつけられていた。
特に悪魔のほうは血まみれだった。
しかし、彼は笑った。



「螺旋兄さん」
着物姿のヒナタが笑う。
長い髪を下で結っている。
「綺麗だ・・・雛姫様」
俺?ネジが羽織袴姿で立っている。
「螺旋兄さん、もう結婚するんですから、お雛で良いんですよ」
ヒナタは顔を赤らめて言う。
「それを言うなら貴方もだ。兄さんはないだろう」
二人は小さく笑った。

いったい何だ?
過去?現実?未来?

「雛姫様っあああぁぁっ」
ネジの視界が真っ赤に染まった。
そこには血に染まったヒナタ。
心臓がバクバクした。冷や汗が流れる。
今の俺より少しばかり大きい俺がヒナタに近づく。
真っ赤な姫は動かない。
螺旋はある方向を睨む。
俺も同じ方向を見る。
イタチ・・・?
「鼬殿、貴様」
螺旋が小さく唸った。
鼬は壊れた人形のような笑みを浮かべていた。

俺とヒナタとイタチの間に何があったんだ?



「さようなら、天使様」
悪魔は血まみれにもかかわらずしかっりと立ち鎌をヒナタに振り下ろす。
ヒナタは目を瞑る。
護れなかった・・・ごめんね、ネジ兄さん。
天使の綺麗な瞳から美しい雫が落ちた。
「ヒナタっ」
ネジが叫んでヒナタを突き飛ばした。
彼女は目を大きくして驚いていた。
鎌がネジを襲う。
「ネジ兄さんっ」





バリンッ





「うっ・・・」
イタチが頭を抱える。
『鼬兄様、私はやっぱり螺旋兄さんのことが好きだから・・・』
彼の頭の中で声が回る。
ズキズキと頭に衝撃が走る。

彼女の笑顔。彼女の血で染まった自分の手。彼女の婚約者の憎しみの篭った目。

開けたくも無いアルバムが風によってバラバラとページを捲る。
彼は立っていられなくなって木に寄りかかる。
ネジとヒナタは何が起こっているのか分からないという表情をする。
暫くしてヒナタはハッとしてネジの側に行く。
「ネジ兄さん、大丈夫ですか?」
重なった。先ほど夢かそれとも別のどこかで見た着物姿の彼女に。
ネジは「ああ」と小さく応えた。
「それより、ヒナタは大丈夫なのか?」
彼は心配そうに彼女の傷を見る。
「たいしたこと無いです。それより今のうちに逃げましょう」
ヒナタはネジの手をとる。
しかし、彼女は全身に走る痛みの為か足がふらついていた。
そんな彼女を見てネジはいとも簡単にヒナタを負ぶる。
「ね、ネジ兄さんっ?」
ヒナタは驚きの声をあげ、降りようとする。
「今度は俺が貴方を護る」
ネジのその発言にヒナタは驚きつつうっすらと笑みを浮かべ礼を言った。

どこかで見たことのある光景。
彼女と彼女を背負う彼。
イタチはいつの間にかに消えていた。
ヒナタは安心した表情をして、ネジの背に体を任せていた。
男の子背ってこんなに大きいのか・・・。
白い天使はうとうとして眠ってしまった。



夢を見た。
「雛姫様・・・」
そう呼ばれた着物姿の女性は髪を靡かせて声のした方を見る。
「どうしましたか、螺旋兄さん」
微笑む。
「前から貴方に言いたいことがあって」
二人は少し離れていた。
雛姫は疑問符を浮かべて螺旋に近づく。
彼の顔が少し紅くなる。
「実は・・・俺、貴方のことが・・・」

バチッと映像が切れた。

「お雛、お前が俺のものにならないと言うなら」
雛姫の着物が真っ赤に染まる。
彼女は苦痛の表情でその場に倒れこむ。
「俺がお前を俺のものにする」
鼬は寂しそうな表情をする。
自信に満ちたその台詞とは裏腹に。
「雛姫様っ」
叫ぶ螺旋の声。

バチッとそこで再び映像が途切れた。

ヒナタはパッと目を覚まして起き上がる。
ガツンッ。
「痛いっ」
ヒナタは額を押さえる。
視界に同じく額を押さえるネジが入る。
「ネジ兄さん、すいません」
ヒナタは慌てて謝る。
「大丈夫だ。それよりヒナタは?」
「私も大丈夫です。」
ネジは「そうか」とほっとした表情を浮かべた。
そこに飲み物と軽い食べ物を持ったテマリが現れる。
「大丈夫か、ヒナタ」
心配そうに近寄って来る。そして、飲み物を渡す。
「大丈夫です。有り難うございます・・・それよりテマリさん」
ヒナタはお茶を一口飲む。
テマリは何だという顔をする。
「サスケ君は・・・?」
不安そうな顔。
「俺ならここにいる」
今までベランダにいたサスケは部屋へと入ってくる。
「怪我は?」
相変わらず不安そうな顔でヒナタは問う。
「もう大丈夫だ」
「そっか、良かった」
彼女は花のように微笑んだ。


夢が気になった・・・。


(〔7.過去への道〕終わり)


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「天使が護るべき者」の久しぶりの更新です。
お待たせしてしまってすいません。
一応、最後までのストーリはだいだい出来上がっているのですがなかなか文章に出来なくて(汗)

さて、ネジ、ヒナタ、イタチの三人の過去への入り口でございます。
何があったのでしょうね?
この話はなるべく早めにupしたいと思います。
最後の場面で「大丈夫」の連呼で変ですよね・・・。

此処まで読んでいただき有り難うございます。
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