~天使が護るべき者~


〔1.護るべき人〕


「分かったか、ヒナタ。」
天使長である綱手が言う。
「私はこの人を悪魔から護ればいいのですね。」
天使隊副隊長のヒナタは真剣な顔つきで言う。
「そうだ。」
綱手は深く頷く。
「了解いたしました。」
ヒナタはそう言うと綱手に一礼して去って行く。
「たのんだぞ。」
綱手はヒナタの後ろ姿を見ながら呟いた。











此処は生前素晴らしいことをした人達が辿り着く天界である。
ヒナタは若いながら、天使隊副隊長という大きな役割を果たしている。
ヒナタの才能は誰もが認めている。
だが、少しおっちょこちょいな所が偶に傷である。
「ヒナタ。」
ヒナタの背後から声がする。
「イノちゃん。」
声の主はヒナタと同じ天使隊副隊長のイノだった。
イノは金色の髪を持っているのでまさに天使といった感じである。
「また、守護の仕事なんだってね。」
「うん。」
「あんたも大変ね。」
「でも、頑張るよ。」
「そうね。応援しているわ。」
イノはそう言って、ヒナタに背を向けて離れて行く。
ヒナタはそんなイノを見ていたが、イノがふと足を止める。
ヒナタの顔には疑問符が浮かぶ。
「ヒナタ。」
イノは遠くから叫ぶ。
「何、イノちゃん。」
「あんたが護る人、男なんでしょ。」
相変わらず大きな声でイノは叫ぶ。
「うん。」
「なら、恋しちゃ駄目よ。」
イノは冗談混じりに言う。
「分かってるよ。」
ヒナタは大きな声で言う。
イノは笑って、再び歩き出す。
「恋なんかしないよ。」
ヒナタは思わず声に出して言った。
今回、ヒナタが任された仕事は悪魔から人間を護る「守護」という仕事である。
悪魔は人間の憎しみや怨みを糧としている。
それだけでは物足りなくなると人間を襲い、食らうこともある。
人は美味しい食べ物を選んで食べている。
それは悪魔も同じで、憎しみや怨みが強い人間を食べる訳である。
「守護」という仕事は憎しみや怨みが強い人間を悪魔から護ると同時に、その人間の憎しみや怨みを消すというものである。
今回、ヒナタが護る人間は相当の憎しみや怨みの持ち主であるらしく、悪魔が狙わないはずがないということで、上の位であるヒナタに任されたのである。











ヒナタは天界と人間界を結ぶ扉の前に居た。
この扉を潜るのはかれこれ5回目だが、初めての時の緊張感は未だに持っている。
「では、ヒナタ様。お気をつけ下さい。」
扉を護る護衛隊の1人が言う。
「はい。」
ギッーという音をたてて、扉はゆっくりと開き出す。
扉の中からは眩しいほどの光が満ちている。
ヒナタは躊躇うことなく扉の中に入って行く。











ザーッ、ザーッ。ビューッ、ビューッ。
人間界は雨と風のオンパレード状態だった。
「きゃあ――!」
ヒナタは雨と風のパレードに驚き、悲鳴を上げる。
「聞いてないよ。こんな嵐が来てるなんて。」
ヒナタは白い羽根でバランスを保ちながら黒い空の中を飛ぶ。
ヒナタは蹌踉けながらも前に進んで行く。





「えっと、此処かな。」
ヒナタは目的の人が居ると思われる家の周りを飛んでいる。
相変わらずよろよろと飛んでいる。
「あっ。」
ふとヒナタの目に目的の人が写る。
ヒナタの目的の人、つまり護らなければならない人は日向ネジという少年だった。
彼は自分の部屋で読書をしているようだった。
「全然、憎しみや怨みの力は感じられないんだけど。」
ヒナタの顔に疑問符が浮かぶ。
ドォーッと大きな風が吹く。
のん気に考えていたヒナタはバランスを崩して突っ込んで行く・・・日向ネジの家の窓ガラスに。
「いや――っ!」
今日、2度目の悲鳴を上げる。
バリンッというガラスが割れる音とドンッと何かがぶつかったような音が日向ネジの部屋に響きわたる。
「痛いっ。」
ヒナタは声を漏らす。
「何者だ。」
日向ネジはあくまでも冷静に問う。
「あっ。御免なさい。部屋を滅茶苦茶にしてしまって。」
ヒナタはあたふたと慌てる。
割れてしまった窓からビュービューと風と雨が入ってくる。
「何者だと聞いている。」
日向ネジは再び問う。
「私は・・・。兎に角、部屋を直します。」
ヒナタは目を瞑り、手を上げる。
「Revert to type again!」
ヒナタが唱えた途端、割れた窓は元に戻り、風で飛び散った物や雨で濡れた物など全てが数分前の状態に戻っていた。
勿論、ビショビショだったヒナタ自身も天界に居た時の状態に戻っていた。
「で、何のお話でしたっけ。」
ヒナタは笑顔で言う。
「お前、本当に何者だ。」
日向ネジは冷静を保ちながら言う。
「初めまして、ヒナタと言います。えっと、貴方を悪魔から護る為に天界からやって来ました。」
「悪魔、天界・・・。お前ボケているんじゃないのか。」
日向ネジは呆れ顔で言う。
しかし、目の前に居るヒナタとか言う少女が不思議な力を持っていることは確かだった。
窓を割って入って来るし、部屋を元の状態に戻すし、本当に天使なのか。
日向ネジは一瞬そんなことを思う。
「本当です。私は天使です。ほら。」
そう言ってヒナタは白い天使の羽根を見せる。
日向ネジは流石にこれには驚いたらしく瞬きをする。
「本物か。それ。」
恐る恐る日向ネジは問う。
「本物ですよ。」
ヒナタは自信満々に言う。
すると突然、日向ネジがヒナタに近づいてくる。
日向ネジの顔とヒナタの顔との間はわずか3センチといった状態になっていた。
ヒナタは自分の顔の色が紅く染まっていることに気が付いた。
ふと思い出す、イノの言葉を・・・。
『恋しちゃ駄目よ。』
そうだよ。恋しちゃいけないのに。
ヒナタはドキドキする心臓を落ち着かせようとする。
日向ネジの手が背中の方に回って来る。
どうしよう。
ヒナタはぎゅっと目を瞑る。
ブチッと嫌な音をと同時にヒナタは痛みを感じる。
「痛いっ。」
ヒナタは声を出す。
「これ、やっぱり本物なのか。」
日向ネジは天使の羽根を1つ持ちながら言う。
「何するんですか。」
ヒナタは少し怒りながら言う。
「偽物の羽根かと思ってな。」
真剣な声なのだが、冗談が混じっているようにヒナタは感じられた。
「1000歩譲って、天使が居ることはまぁこれで分かったとする。だが何故、居るか居ないか分からない悪魔なんかに俺が命を狙われるんだ。」
日向ネジは言った。
「悪魔は居ます。そして貴方を狙っています。」
ヒナタは真剣な顔つきで言う。
「何故。」
日向ネジも真剣な顔つきで問う。
「それは、貴方が強い憎しみや怨みを持っているから。」
日向ネジはヒナタの言葉に一瞬反応を見せる。
「俺は別に憎しみだの、怨みだの持っているつもりはない。」
日向ネジはキッパリと言う。
「そうなんですよね。貴方からは全然そういう力が感じられないんです。」
「なら、人違いじゃないのか。」
「そんなはずは・・・。」
ヒナタは口を噤む。
確かに自分はおっちょこちょいだから、間違えているのかもしれないとヒナタは思う。
「まぁ、今日はこんな時間だし、外は嵐だ。泊まっていくか。」
日向ネジはそんなことを言う。
「いいのですか。」
ヒナタはパァと明るい顔になる。
日向ネジの心臓はドキンと鳴った。
「母さんの部屋があるから、そこで寝ろ。」
「有り難う御座います。お母様は旅行中か何かですか。」
ヒナタはそんな質問をする。
「母さんと父さんは死んだ。」
日向ネジの心に一瞬闇が出来る。
ヒナタはそれを感じ取っていた。
「御免なさい。私、余計なこと聞いてしまって。」
ヒナタは頭を下げる。
「別に構わない。早く寝ろ。」
その声には氷の様な冷たさがあった。
「お休みなさい。」
ヒナタは日向ネジの部屋を後にして、彼の母の部屋へと向かう。
「やっぱり、私が護るべき人はあの人だ。」
ヒナタはそう呟いた。
あの一瞬の闇の中にもの凄い憎しみや怨みがあったのだ。
今日の嵐はそんな彼の心を隠すカーテンの様だとヒナタは思っていた。



(〔護るべき人〕終わり)



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連載小説になりそうな物です。
分かったと思いますがヒナタが天使でネジは護られる少年です。
書いてて色々と内容が膨らんで面白いです。
悪魔はナルトキャラの誰になるんでしょうね?
一応もう決めているのですが、秘密です。
でも、連載小説と言っても結構短いような気がします・・・。
それにしても天使姿のヒナタ様見てみたいものですv
では、此処まで読んでいただき有り難う御座いました。
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