俺にはお前が必要だから・・・。
~必要~
ここは日向の家。
何やら二人の人物が話している。
一人は日向家当主の日向ヒアシ。
もう一人は彼の娘である日向ヒナタである。
「ヒナタ、これを届けてくれないか。」
ヒアシは突然そう言う。
「はい、お父様。良いですけど・・・誰にですか。」
ヒナタは疑問符を浮かべる。
「お前の元教育係りにだ。」
「えっ。」
ヒナタはヒアシの言ったことに驚く。
「忘れてしまったかもしれないがお前が三歳の時までお前を教育していた者がいた。お前が四歳の誕生日を迎える一ヶ月前に病気になってしまい古里に帰ってしまったのだ。もう何年も会っていないな。」
ヒアシは懐かしそうに語る。
ヒナタは黙って聞いていた。
「先日、彼女から手紙が来てな。綱手様が調合した特製の薬を宜しければ届けて欲しいという内容だった。」
ヒアシが薬をヒナタに渡した。
「場所はその地図に書いてある。気を付けて行って来なさい。」
ヒアシはそう言って部屋を後にした。
ヒナタは瞬きをして地図を見る。
元教育係が住んでいる場所は以外に遠い。
木の葉の境界線の近くだった。
ヒナタは何となく嬉しかった。
朧気だったが元教育係のことは覚えていた。
とっても優しい人だった。
ヒナタは嬉しそうに薬を持って日向の家を後にした。
ヒナタは森の中にいた。
キョロキョロと辺りを見渡していた。
周りを見るのと平行して地図にも目をやる。
時刻は午後三時頃。
ここまで来るのにだいぶ時間を費やした。
ふとヒナタの目に小さな家が映る。
彼女は頷いて家に向かって走り出す。
家の前に来てから地図で確認する。
表札を確認する。
ヒナタは軽く扉をノックする。
家の中から小さな音がする。
そしてガラガラと扉を開ける音がする。
「どちらさんかな。」
優しそうなおばさんがゆっくりと言う。
「あっ・・・日向ヒナタです。父に頼まれて薬を届けに来ました。」
ヒナタは丁寧に言う。
おばさんは思い出すような表情をする。
すぐにああという嬉しそうな顔をした。
「ヒナタちゃんね。随分大きくなって。美人になったわねぇ。」
おばさんはそう言ってヒナタを優しく抱きしめた。
ヒナタも嬉しそうにおばさんを抱きしめた。
「久しぶりです。お会いできてとっても嬉しいです。」
ヒナタは花のように笑った。
「私もだよ。どうぞあがっていって。」
おばさんがヒナタから薬を受け取りながら言う。
「良いんですか。」
ヒナタはパァッと顔を輝かせた。
「美味しい桜餅と桜茶があるんだよ。」
そう言うおばさんの後をヒナタは嬉しそうに着いていく。
おばさんの家は小さかったが非常に綺麗だった。
彼女の性格が良く現れているとヒナタは思った。
箪笥の上に写真が飾ってあった。
笑顔のおばさんと幼いヒナタの写真。
ヒナタはそれを見て思わず笑顔になった。
おばさんが部屋の奥から桜餅と桜茶を持ってきた。
ヒナタが写真を見ていることに気づいたおばさんは写真をヒナタに渡す。
ヒナタは有り難う御座いますと言って写真を受け取る。
「懐かしいわねぇ、ほんとに。私もずっと貴方の側にいたかったわ。」
おばさんが桜餅と桜茶をヒナタの前に置いた。
「私もです。まだ、お体が優れないのですか。」
ヒナタは心配そうに問う。
「日向に仕えることを辞めてから私の病気はますます悪くなってしまいました。暫くの間はずっと寝たきりでしたが今は元気ですよ。一度は日向に戻ってまた貴方にお仕えしたいと思いましたがもうヒアシ様にご迷惑を掛けたくないと思いましてね・・・。」
おばさんは微笑んだ。
「そうだったんですか。」
ヒナタはポツリと言った。
「こんな話は止めてこれを食べましょ。本当に美味しいのよ。」
おばさんは桜餅と桜茶をヒナタに勧めた。
ヒナタは一口桜餅を食べた。
「美味しい・・・。」
ヒナタは思わず声を出していた。
口の中に春の味が広がった。
おばさんの家の隣には桜が咲いている。
家の窓から散っていく桜が見える。
「それは良かった。」
おばさんは嬉しそうに笑った。
部屋の空間が春だった。
ヒナタはゆっくりと桜茶を飲んだ。
ほぅとため息を付いた。
「この桜茶もとっても美味しいです。」
「それじゃあ、おみやげに持って帰りますか。」
おばさんが桜餅を一口食べる。
「本当ですか。父も喜びます。」
ヒナタは笑顔で言った。
突然ヒナタの視界が歪んだ。
頭がずきずきと痛んだ。
体を支えることが出来ない・・・。
ヒナタはバタリと倒れてしまった。
「ヒナタちゃんっ、どうしたのっ。ヒナタちゃんっ。」
おばさんはヒナタの体を揺する。
顔が青ざめていた。
ヒナタの耳におばさんの心配そうな声が聞こえる。
意識が遠くなる。
でも、声は聞こえる。
最後の最後にゴンッという鈍い音が聞こえた。
ホーホーというフクロウの声がした。
月が冷たく輝いていた。
桜が散っている。
ヒナタはぼんやりと目を開ける。
体の自由がきかない。
ヒナタはハッとして自分の体を見る。
おばさんの家の隣にあった大きな桜の木にヒナタは縛られていた。
ヒナタを縛っている縄にはチャクラが流れていて解くことが出来ない。
ゆらりとおばさんがヒナタの視界に入ってきた。
おばさんがヒナタを見つめて冷笑を浮かべた。
ヒナタはぞくっとした。
「これは・・・貴方がしたんですか。」
ヒナタが恐る恐る問う。
おばさんは何も言わない。
ただ冷笑を浮かべて月を見ていた。
嫌な沈黙が流れる。
「日向が嫌いでした。」
ポツリとおばさんが言った。
ヒナタはえっと声を発していた。
「憎くて憎くて仕方ありませんでした。私はヒナタちゃん、貴方がお嫌いです。」
おばさんが冷たくそう言い放った。
ヒナタは体に鉛が落ちたような気持ちになった。
どうしてと言おうとしても声が出なかった。
クスクスとおばさんが無邪気に笑った。
「僕はまだそんなに年をとってないんですけどねぇ。」
おばさんが突然そんなことを言った。
ヒナタは疑問符を浮かべる。
「気づきませんか。僕ですよ、前にお会いしたじゃないですか。」
おばさんの姿が一瞬にして眼鏡をした男の姿になる。
ヒナタは目を丸くした。
驚いたので声が出ていたかもしれない。
「あっ、貴方は・・・中忍選抜試験にいた・・・確か・・・薬師カブトさん・・・。」
ヒナタの心臓はドキドキと叫んでいた。
「嬉しいな。僕のこと覚えていてくれたんだ。」
カブトが子供のように笑った。
「何で・・・貴方が。」
「ヒナタ君、知らないのかい。僕が大蛇丸様の部下だってこと。」
カブトは悪戯っぽく笑った。
「お、大蛇丸って・・・。」
ヒナタの頭の中に大蛇丸が浮かぶ。
寒気が体に走った。
心臓が更に叫ぶ。
「うちはは手に入った。今度は日向が欲しいそうだよ、大蛇丸様は。」
カブトは笑った。
「どうして、私が。」
日向なら自分じゃなくても良いはずだ。
むしろ落ちこぼれの自分じゃ意味がないのではとヒナタは思う。
ネジ兄さんやハナビちゃんの方がずっとずっと優秀なのに・・・。
カブトさんならネジ兄さんと私の試合を見ていたはずなのに。
私は役に立たないのに。
ヒナタの心の中は複雑な気持ちで埋め尽くされていた。
「サスケ君は非常に優秀だからね・・・日向は落ちこぼれが欲しいそうだよ。」
カブトはヒナタの頬を撫でる。
ヒナタはビクリと体を震わせる。
「大蛇丸様の考えることは良く分からないからね。」
カブトはフッとため息を付いた。
「大蛇丸様はすぐにでも君に会いたいようだけど僕は少し君と遊びたいな。」
カブトは再び悪戯っぽく笑った。
ヒナタの頭に嫌な考えが浮かぶ。
なんとかしてカブトから逃げなくてはそんな思いがヒナタの頭を回っていた。
ヒナタは力を入れて縄を解こうとする。
「君には無理だよ。」
カブトが冷たく言った。
ヒナタの心を恐怖が支配した。
「嫌・・・。」
ヒナタは小さく呟く。
体はガタガタと震えている。
カブトはそんなヒナタを楽しそうに見ている。
ヒナタはギュッと目を瞑る。
これから起こる出来事を見たくは無かった。
カブトは嫌がるヒナタを押さえてむりやり口づけをする。
嫌っ・・・誰か助けてっ。
ヒナタは心の中で叫んでいた。
カブトは固く閉じているヒナタの口を開く。
カブトの舌がヒナタの口に入る。
「ん、あっ。」
ヒナタは思わず声を出す。
彼女は顔を赤く赤く染める。
目はまだ閉じたままだった。
カブトの手がヒナタの胸に触れる。
突然、大きな音がした。
ヒナタの側からカブトが離れた。
やっと呼吸が出来たヒナタは肩で息をする。
ヒナタは恐る恐る目を開ける。
彼女の視界にはカブトの背が映った。
カブトの先には紅い目をした人がいた。
「イタチさん・・・。」
ヒナタは小さく小さく呟いた。
何となく彼女は安心した。
心臓の音がだんだん小さくなるのが分かった。
「大蛇丸などに日向の血はやらない。」
イタチが凄みのある声で言う。
カブトは一瞬ひるむ。
「うちはの血が大蛇丸様の手にある今、日向の血まで手に入れることを暁は恐れているのかい。」
カブトは冷静に言った。
「・・・違う。暁は大蛇丸などを恐れてはいない。彼女、ヒナタを大蛇丸にやるのは御免だ。」
イタチはそう言うと目を閉じ、再び目を開ける。
カブトはとっさにイタチから目を反らす。
「ここはいったん引きましょう。まだ僕は死にたくないからね。また何処かで会おう、ヒナタ君。」
カブトはヒナタをチラッと見て消えてしまった。
ヒナタはカブトと目が合って再び震えそうになった。
イタチが縄をそっと切った。
ヒナタは地面にペタリと座り込んでしまう。
「大丈夫か。」
イタチが心配そうに言う。
「いっ、イタチっさ・・・んっ。」
ヒナタは泣き出してしまった。
目から涙が止まらなかった。
「すまなかった・・・もう少し早くお前を助けていれば。」
イタチはそう言うと優しくヒナタを抱きしめた。
ヒナタの涙は止まらなかった。
イタチの腕の中は暖かく、安心出来た。
イタチは黙ってヒナタを抱きしめていた。
暫くしてヒナタは落ち着いたのか泣くことを止めていた。
「いっ、イタチさんっ。すいませんっ。」
ふと我に返ったヒナタは恥ずかしくなる。
顔を赤くしていた。
「いや気にしなくて良い。」
イタチは短く言った。
「助けてくれて本当に有り難う御座います。」
ヒナタは頭を下げる。
「わ、私・・・本当に恐かったんで・・・す。」
ヒナタは泣きそうな目で言った。
「大丈夫だ。今は俺がいる。お前が俺を必要としている間はずっと側にいる。」
イタチはそっとヒナタを抱き寄せた。
「有り難う御座います・・・。」
イタチの側は妙に落ち着いた。
今の状態の自分には彼が必要だとヒナタは思った。
桜が美しかった。
月も美しかった。
「ヒナタやはりお前は木の葉が好きか。」
イタチがヒナタに問う。
ヒナタはイタチには二度会ったことがあった。
イタチは暁に来ないかとヒナタとヒナタの従兄弟であるネジに言った。
その時ヒナタは木の葉が好きだからと言って断った。
今もその気持ちは変わってはいない。
「はい・・・私は木の葉が好きです。」
ヒナタが小さな声で言った。
「そうか。俺にはお前が必要なんだが・・・お前が嫌なら良い。」
イタチが月を眺めながら言う。
ヒナタは申し訳なさそうに俯いていた。
「イタチさん、本当に有り難う御座いました。私、家に帰りますね。多分、今朝話したお父様もカブトさんだったと思いますから。」
ヒナタはそう言うと立ち上がってイタチの側から離れる。
ヒナタはペコリと頭を下げる。
そして歩き出そうとしたときイタチが手招きをした。
ヒナタは疑問符を浮かべながらイタチに近づく。
イタチが突然ヒナタに口づけをする。
舌も入って来た。
甘い声も思わず出ていた。
でも嫌では無かった。
イタチは悪いと言ってヒナタから顔を離す。
「あの男との後では気分が悪いのではと思って・・・。」
イタチが少し顔を赤くして言葉を探すように言った。
ヒナタは唖然としていた。
顔が赤くなる。
瞬きをする。
「家まで送って行く。夜道は危険だ。」
イタチはヒナタをお姫様だっこする。
「きゃあ、いっイタチさんっ。」
ヒナタは我に返って声を上げた。
静かな森にヒナタの声は響いた。
あっという間に日向の家に着いてしまった。
やはりイタチの腕の中は暖かく安心出来た。
「俺はお前が必要だから・・・いつでも暁に来い。」
イタチはヒナタを見つめて言った。
本当はこのまま彼女を連れ去りたかった。
彼女の嫌がる顔は見たくは無かった。
「イタチさん、もし私の心の中が貴方でいっぱいになったら私は貴方に会いに行きますね。もし私が必要になったときにはいつでも会いに来て下さい。待ってますから。」
ヒナタはそう言ってイタチの頬に口づけした。
イタチは一瞬驚いた顔をしたが深く頷いた。
「俺がお前に会いに来るのはきっとすぐだな。時間があれば毎日会いに来たいものだ。」
イタチはフッと笑った。
ヒナタは微笑んでいた。
「では。」
イタチはそう言い残して夜の闇の中に消えた。
ヒナタは月を眺めた。
(終わり)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イタヒナはずっと書きたかった・・・けどなんでしょうこれ(笑)
あんまり上手く書けなかったです。
ちなみネジヒナ小説「守衛」「時にはこんな出来事も」と少し関連があります。
私はヒナカプはほとんど好きなんでカブヒナも好きv
カブトの強引なところが良いかな。
後、彼は頭が良いですよね。
始めは大蛇丸にしようとしたのですが、大蛇丸vsイタチが嫌だったから止めました。
ちなみに大ヒナも好きですよvvv
大蛇丸にはヒナタが必要ですよ!
色々とサスケよりは役に立つと思います、多分。
暁、好きです。
暁×ヒナタを書きたい。
でもデイダラとかサソリの人物像が自分の中でしっかり出来てないので無理。
漫画買おうかな。
早くアニメでやって欲しい。
此処まで読んでいただき有り難う御座いました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・