雨は俺の涙を作り出してくれる。
雨は私の涙を分からなくしてくれる。
だから「雨」は嫌いになれない・・・。
あなたと私を結びつけてくれた雨。



~雨~



空はどんよりと鉛色をしている。
さっきからずっと空は泣いている。
その涙の量は増えるばかりである。





秋は雨の多い季節である。
ここのところはずっと雨が続いている。
風のない静かな雨。





雨の中、一人で濡れている少年がいた。
彼はいつも雨が降ると一人で濡れている。
風邪をひかないのが不思議なくらいだと少年の姉兄は言う。
いつもは誰にも何も言われない・・・。
彼の存在に気がつかない訳ではない、彼が恐ろしくて声を掛けることができないのだ。
彼はずっと孤独だった。









「こんな所で雨にあたっていると、かっ風邪ひきますよ。」
下をうつむきながら少年の知らない少女が言った。
その声は雨に消されてしまいそうだった。
「風邪などひかない・・・。俺の前から消えろ。」
と少年が氷のように冷たく言うと少女がびくっと身震いした。
雨の音が聞こえる沈黙が起こる・・・。









「でっ、でも秋の雨は冷たいですし・・・。」
まだ居たのかと彼は思いつつ、イライラしていた。
こういう時間が何故か好きな彼にとって今さっき会った人間にとやかく言われるのが気に入らなかった。
彼は少女の優しさに気づく訳もなく、無意識に彼女を突き飛ばしてしまった・・・。
彼女のさしていた桃色の傘は桜の花びらのように飛んで行き、彼女は地面に尻餅をついていた。
突き飛ばした本人は気にもしないでまた雨に濡れていた。
さすがに自分の場所から去るだろうと思いつつ・・・。
「ごめんなさい。」
少女がまた、下を向きながら言った。
少年に聞こえているのかは分からない。


















少女も傘を取りに行くこともせず、この場所を去ろうともせず雨に濡れていた。
少年もそれに気がつかない訳がない。
否応なしに視界に入ってくる。
彼はふと声を掛けた。
どうしてこのような行動に出たのかは自分でも良く分からない。
「何してる、言い出したお前が風邪をひく。」
ましてや自分が人のことを心配するとは少年は思ってもいなかった。
そして少年はやっと少女の顔を見ることができた。
『白い瞳・・・。白い瞳の一族の話は聞いたことがあるがこの女があの一族の者なのか。
 この弱々しい女が。目に涙を貯めている、いや雨粒か?』
と彼は一瞬驚いたがすぐに思い直した。
「あなたは何故、雨に濡れているのですか。」
白い瞳を持つ少女がポツリと言った。
少年は表情一つ変えずに少女を見ていた。
『俺が雨にあたる理由、そんなものが無くては雨に濡れてはいけないというのか。』
と少年はまたイライラしていた。
「理由はない。あったとしてもお前などに言わない。」
と声に出す。
「そうですか。」
少女は静かに言う。
「お前に理由はあるのか。」
「あります。涙を隠すために・・・。いや、自分の弱さを隠すためにです。」
初めて少女は少年を見ながらはっきりとした声で言った。
少年はふと自分にも、もしかしたら理由があるのではないかと思っていた。
あの出来事以来、信じていた人に裏切られその人を自分の手で殺めてしまった時以来、彼の涙は砂漠化していた。
もしかしたら自分が雨にあたるのは失ったオアシスを砂漠に作ろうとしていたのだろうかと少年は思っていた。
『この女は涙を隠すために雨に濡れている。
 そして俺は涙を作り出すために雨に濡れている。
 おもしろい・・・、もう一度だけ人を信じてみようか。』
「お前、名は何だ。」
少女は彼が笑って聞いたかのように見えた。
少女も笑顔で答える。
「日向ヒナタといいます。」
「いい名だな。俺は我愛羅。」
「我愛羅さんですか。あなたもとってもいい名前だと思います。」
「いろいろとありがとな。」
「えっ。」
ヒナタは驚いた顔をしていた。
自分は何もしていないはずだと思いながら。
「いや、何でもない。」
我愛羅はそっぽを向いて言った。
ヒナタはそんな我愛羅を微笑みながら見ていた。
『ありがとうなどと言ったのは何年ぶりだろうか。
 しかも初めて会った女に・・・。
 これが白い瞳を持つ一族、日向一族の力なのか。
 いや、違う。この女、ヒナタの力なのだろうな。』
と我愛羅は思っていた。







我愛羅の涙を作るために雨は降っている。
ヒナタの涙を隠すために雨は降っている。
雨は大切なものを二人に届けてくれたに違いない・・・。


(終わり)


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最近は雨が降りまくりですね。
みなさんは風邪はひいていっらしゃらないですか。
私は風邪は8年前くらいにひいたきりですね。
ちなみに私もよく雨にあたりますよ。
実は傘がないだけです(笑)
それと『』←このタイプのかぎかっこは心で思っていることになります。
口に出しては言ってません。
では、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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