自分の弱さも悲しみも全てこの風が吹き消してくれるから。
~風~
「ヒナタ様。」
「あっ、ネジ兄さん。」
ヒナタは河原に一人で座っていた。
それを修行帰りのネジが見つけたのだ。
「何をしていらしたんですか。」
「えっと、一応修行です。今は休んでいました。」
「そうか・・・っ!」
ネジが土手から河原にいるヒナタの側に寄ったとき、ネジの目にはヒナタから流れ出ている赤い液体が見えた。
「ヒナタ様、怪我していたんですか。」
「え、あのっそんなに痛くないですから、心配しないで下さい。」
心配しないでとヒナタは言ったが彼女の左足はザックリきれている。
しかも今だに血は流れ続けている。
どう見ても痛そうだ。
「ヒナタ様、どうしてこんな所で修行していたんですか。修行なら演習場の方がいいと思うのですが。」
と言いながらネジはヒナタの手当をしている。
「あっ、ありがとうございます。」
「いえ。」
「ここはですね、初めて、私が家以外で修行した場所なんです。父上と一緒に・・・。」
ネジは黙って手当を続けている。
「まだ、演習場は私には危ないということでここになったんです。ここで修行したときは妙に自分が強く成長できたと感じられたんです。幼かったからでしょうか。だからまたここに来れば強くなれるかと思いましてね。でも河原は小石が多いですからそれに躓いてしまってこのありさまです。本当に私ってダメですよね。」
「終わりましたよ。大丈夫ですか。」
「あっ、はい。」
「家に帰りますか。」
「はい。」
ネジがしゃがんで背を向けた。
「ネジ兄さん?」
「その足でどうやって帰るつもりですか。負ぶって行きますよ。」
「えっ、いいのですか。」
「はい。」
ヒナタはネジに負ぶられる。
そしてすぐにネジは歩き出す。
「ヒナタ様、あそこの河原に行ったのは他にも理由があるんじゃないですか。」
「えっ、どうしてですか。」
「あなたの目がそう言っている。」
「ネジ兄さんには何でもわかっちゃうんですね。」
ネジは一瞬ヒナタが笑ったように見えた。
「あそこ
の河原、風が気持ちいいんです。」
「風ですか・・・。」
「あの風に当たると一日にあった嫌なこととかを忘れられるんです。まるで嫌なことが風に吹き消されるようで・・・。もしかしたらこんな性格の自分も変えてくれんじゃないかと思って。」
「今度、俺もその風に当たってみたいです。足が治ったら、あそこで俺の修行につき合ってくれないでしょうか。」
「わっ私がですか。」
「ええ。」
「いいんですか。こっこんなに弱い私でも・・・。」
「いいんです。あなたは十分強いです。心が誰よりも強いです。」
「・・・心ですか。」
「はい。あなたのその強さを学べたらさらに強くなれると思いましたので。」
「ネジ兄さんが良ければ私はいいですよ。」
ヒナタが笑顔で言った。
二人の側を風が駆け抜ける・・・。