■家の中を人形が徘徊している!?
昨日、自分たちは最後に間違いなく鍵を閉めた。夜中に誰かが家に侵入し、人形だけを動かすはずがない。これはおかしいと思った近藤さんは、依頼者に電話をかけた。
「人形がないんです、と告げると、『絶対にどこかにあると思います。あの人形、動いているんですよ……』って。それを聞いて、全身がぞわっとしましたね……」
人形が動いているとは、どういうことなのか。ひとまず電話を切り、人形を探すことにした近藤さんだが、どこを探しても見つからない。仕方なく先に片付けを進めることにしたという。
「2階の和室の整理をしていると、押し入れの天袋から、カタカタカタ……と音がして。ネズミかイタチかな? と思い、背伸びして天袋を開けた瞬間──赤い着物の袖が見えました」
これはもしや……と思い、椅子の上に乗って天袋を確認すると、そこには例の市松人形が横たわっていた。
「髪の毛がバサッと乱れた状態で、仰向けに横たわっていて。掴もうとしたら、目だけがギッと、こっちを向いたんです……」
あまりの恐怖に近藤さんは椅子から転げ落ち、声にならない叫びを上げながら、滑るようにして2階の階段を駆け下りた──。
■とんでもないことになると慄然
「1階にいたスタッフに、『人形が! 人形が!』と叫ぶと、みんな何事かと手を止めて集まってきて。もう一度2階に戻って天袋を確認すると……人形、いなかったんですよ」
ただ、人形が横たわっていた天袋には、髪の毛が何本か落ちていた。その後、人形はいくら探しても見つからなかったそうだ。
「依頼者に電話して、この経緯を包み隠さず話しました。すると彼女も、『私も動いているのを見たんですよ……』と。何があったか聞かせてほしいとお願いすると、この家で起こった出来事を話してくれました」
依頼者の女性によると、一人で形見分けをしていたとき、廊下から物音が聞こえたらしい。ペッタペッタペッタペッタ、と聞こえてくる音。不思議に思って振り返ると、人形が一人で歩いていたそうだ。
「お互いに、『とんでもないことになるかもしれないから、深追いするのはやめよう。もし見つかったら供養して、見つからなければ追い回すのはよそう』となりました」
結局、作業が終わっても人形は見つからず、近藤さんは故人への申し訳なさから、手を合わせて帰ろうと家の中に残された祭壇に向かった。しかしその瞬間、彼は目撃してしまう。
「骨壺を包む巾着の口から、髪の毛が何本か飛び出ていました……あれは絶対に人形の髪の毛です。亡くした主を探し求め、最終的に一緒になれたんでしょうか……」
故人が最期まで気にかけた人形は、ようやく“帰るべき場所”を見つけたのだろうか……。
遺品整理や片付けは、ただ物を処分する仕事ではない。近藤さんは何度も“誰かの想い”と向き合ってきた。近藤さんは目には見えない“気配”に注意を払いながら、今日も現場へと足を運ぶ。
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近藤さんが出演中のポッドキャスト。
遺品整理や特殊清掃の現場で直面したリアルで不思議、そしてちょっと怖い体験を赤裸々に語り、その裏側にある社会問題にも迫ります。