謎の美女が隠していた、凍った動物の死体。妻を殺した夫が握りしめていた名刺。特殊清掃員で遺品整理士の近藤嘉貴さんは、さまざまな現場で現代社会の闇と人間の深淵を見てきた。
そして、後編となる今回は、遺品整理の現場で起こった、ある人形をめぐる身の毛もよだつ怪異についてお届けする。
■語ることすら恐怖を感じる体験
「この話、あんまり人にしたことないんです。正直、話すのもちょっと怖いくらいで……」
そう近藤さんが語る事件が起こったのは、今から10年ほど前のこと。遺品整理の依頼で、近藤さんは大阪の某所にある一軒家を訪れた。昔ながらの木造二階建ての純和風な家。女性が一人で住んでいたが、病院で亡くなったという。
「故人はひとり暮らしだったらしく、姪にあたる方が家を相続されました。その女性からのご依頼で、『家を売却する予定なので、中の荷物をすべて撤去してほしい』とのことでした。そしてもうひとつ、『人形を供養してほしい』と……」
亡くなった女性は生前、ある人形を我が子のように可愛がっており、病院で亡くなる間際も人形のことを気にしていたらしい。
「亡くなられる直前まで、『人形はどこにいったの?』『人形はどうしたの?』と口にされていたそうです。それほど大事にされていた人形なので、供養してあげてほしいとお願いされました」
■骨壺の脇に市松人形が…
作業の打ち合わせをすべく、近藤さんはさっそく現地へと出向いた。故人の死後すぐの依頼であったため、四十九日もまだ終わっておらず、家の中には白木(しらき)の祭壇が設置されていたそうだ。
「亡くなった女性の骨壺があり、お線香が上げられていました。大切にされていたという人形も、そのとき確認しました。真っ赤な着物を着た、おかっば頭の市松人形だったのですが……まるでこちらをじ――っと見つめている感じがして、正直『うわ、怖ッ!』と思ってしまったんです」
一見、ありふれた日本人形だったが、何か恐ろしい気配が漂っていた。
(写真はイメージ)画像:shutterstock
本能的にゾクリとした近藤さんだったが、依頼者から「ずっと大事にされていたから、しっかり供養してくださいね」と念を押され、承諾したという。
「作業開始は四十九日が終わってからで、それまでは依頼者の方が形見分けを進めるとのことでした。ところが……打ち合わせから1週間経った頃でしょうか。その方から『片付けと処分を始めてほしい』と連絡がありました。
『まだ四十九日は終わってないのにいいんですか?』と聞くと、『いいから早くお願いします!』と。その時点では、何かあったんだろうかと少し不思議に思う程度でした」