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『 19 』
げげげ ―――――――――― っ
ザザザ ―――――――――― っ
ああ、しょっぱなから耽美じゃないわ。
いやだわこんなの、あたしじゃないわ。
でも、そんなことに怒り狂う気力もなく、突っ伏してるのよ!
それも!トイレにいいいい~~~~っ!!
ああん、気持ち悪ぅい。
こないだ肩丸出しでディナーしたのがいけなかったのかしら。
それとも、悠河クンと汗かいた後そのまま寝ちゃったからぁ?
そうよ、インフルエンザなのっ。
朝はたいしたこと無かったのよ。
だからいつもの通り、アツアツのお見送り。
でもって、日が陰ってきたらだんだんと調子がおかしくなってきちゃったの。
どうすんのよお。
悠河クンにうつしちゃったら、あたし妻として失格よ!
さんざげろげろした後、はいずるようにタクシーを呼んで近くの病院へ。
待たせんじゃないわよ!あたしよ!りかさまよ!!
とか切れる気力もなく、ジャージで突っ伏してたわ、あたし。
なんだか朦朧としながら、お腹見せて、背中見せて、口あけて。
処方箋貰って、薬山と抱えて、又タクシーでダッシュで帰る。
よろよろでふらふらなあたし。
目の下にはおっきな隈。
やあよー!誰よー!こんなぶす―――!!
あたしじゃなああいいいい――――――!!
怒りと気持ち悪さでふらふらのまま、ベッドに倒れこむ。
なんか入れろとかいわれたけど、作れるわけ無いでしょ。
こんな具合悪いのに、ぶつぶつぶつって口の中で。
あああ、こういう時こそ、悠河クンに抱っこして欲しい。
でもね、それは我儘なの。
カレにうつしちゃいけないわ。
こんな辛い思いさせるわけにはいかないもん。
だからあたし部屋にあったメモに、ミミズがのたうちまわってるよーな字で書いた。
『悠河クン、立ち入り禁止(ちゅ)』
ああ、あたしにとって身を切られるくらい辛いって事が、わかるかしら。
あたしってなんて健気なんだろう。
その辺で、あたしは意識がぶっちぎれ、ベッドにひっくり返ったらしい
ひんやりとした手の感触に、目が朦朧と覚めた。
ガンガンかけまくった暖房のお蔭か、汗びっしょりですこし楽になってきてる。
「もう。りかちゃんてば、だめだよっ!」
あら、大好きな悠河クンの声。
ちょっと、まだ夢みてるの?あたし?
「立ち入り禁止じゃ、ないよっ!たくもう!!」
で、またひんやりとした手。
なんてきれいな指かしら、とかわけわからないこと考えてるあたし。
「そんなに具合悪かったら、どーして電話の一本もかけてくれないのさ?」
「だ・・・だって・・・・・・ お仕事の邪魔したくないもん。」
「ああ、もう、そんなこと邪魔じゃないってば!」
あらん、めずらしく、悠河クンてば起こってる。
なのにあたしってば、それがなんとも心地良くて、ちょっと微笑む。
「んもう、笑ってるばあいじゃないでしょ。」
そういって、手際よく蒸しタオル。
あたしのジャージもシャツもとって、さっさっさっと身体を拭いてくれるの。
「あーあ、こんなに痩せちゃったじゃないか。」
「・・・そんなことないもん。」
「すっごく苦しそうにしてたから、どーしよーかと思ったんだからね。マジ。」
「病院行ったから平気。」
「薬は?」
「飲んだ。」
「食べた?」
「食べてない?」
「なんか作る。」
「いいよう、悠河クン帰ってきたばっかでしょ。」
スーツにネクタイすらも緩めていない彼。
「いいから、その位。」
身体をしゅっしゅと拭き終えて、悠河クン新しい下着とネグリジェを枕もとに。
「じゃ、着替えられる?手伝う?」
「お薬で結構治ってきてるから・・・平気。」
「じゃあ、おかしかったら、呼ぶんだよ。」
びしっとあたしを指差して、悠河クンはキッチンへ。
あたしは汗まみれの服を捨てて、ネグリジェに袖を通す。
ああ、やっぱ、ジャージよりネグリジェのほうがふんわりしてて好き。
悠河クンのととのえてくれたベッドで、彼の料理の微かな香りを楽しみながら、
あたしは又枕に顔を埋めていた。
とろとろふわふわした頭。
ぼんやりと、あたしたちの夢を見よう。
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