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  『 18 』









「きゃんっ !」


「あ・・・ごめん、外寒くて。」
俺は慌てて、胸から手を離す。


「んんっ、いいのっ。」
離した手を取って、りかちゃんは胸に押し付ける。
「だめだよ、冷たいよ。」
「だから、あたしがあっためてあげたいのっ!」
どうしてわからないの?とでも言うような、大きな瞳。
俺はそうっと奥さんの胸に、掌を乗せる。


「ひんやりして、気持ちいいもん。」
俺の手の下で、柔らかな胸が波打つ。
長い首筋から綺麗な鎖骨を通って、
りかちゃんの形のいい胸。
ぴったり掌に納まって。
俺、指は長いほうだから、結構着やせするタイプだよね、この胸。
って、なに考えてんだよ。
じんわりと手に温かさが伝わる、血の流れを感じ出す。
りかちゃんの鼓動と一つになって、すいつきそうな俺たちの肌と肌。


で、俺を暖めようと、首筋に一杯舌を這わせるりかちゃん。
「ついちゃうよ、キスマーク。」
くすぐったさに笑いを堪え、ほわほわの頭をなでる。
「いいじゃない、あたしたち夫婦なんだもん!」
ちょっと怒った声のりかちゃん。
全くもってその通り。
「うん、俺の自慢の素敵な奥さんだもん。」




あああ、素敵な奥さん!
なんていい響きなのかしら。
笑窪の悠河クンの口から出ると、もう背中が痺れちゃうくらい素敵。
だから、あたしはせいいっぱい悠河クンにちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
服なんか放り出して、外の寒さが嘘みたいな熱烈さで迫りまくる。
あなたもだんだん火がついてきたみたい。
あたしに顔を埋めて、長い脚を絡めあって。



息が上がるまで、愛しあっちゃうあたしたち。











「ああん、お夕食ぅ~~~!」



額に前髪をへばりつかせたまんまのあたし。
ああ、用意しなきゃ。
でも、ドレスも着てみたい。
ああ、究極の選択だわ!
例によって、悠河クンの笑窪。
あたしってば、また上目。


「着替えてきて。」
「え、でも。」
「きっと綺麗だよ、りかちゃん。」
「準備・・・」
「でも、俺見たいもん。やっとく。」


そういってさっさとベッドを降りて、あたしのエプロンを躊躇なくつけるあなた。









「うわあ、りかちゃん。綺麗。」


そういうあなたも、とっても素敵。
いつの間にかダークスーツ、髪なんかかきあげて。
テーブルにはキャンドルライト。
旦那様の手作りのディナー。
恭しくエスコートしてくれる、あなた。


肩のがっ、と開いたふわふわの白レース。
ウエストの緑のリボンにあわせ、髪にもリボン。
白いサテンの長手袋。
白と緑は、真っ白い肌にしか映えないのよ。
うふふふふ、童話のお姫様って言うよりは、そうね、もっとドラマティックな。
南部のお嬢様、スカーレット・オハラってとこかしら。
とするとあなたは、レット・バトラー?





キャンドルに囲まれて、眩しそうに目尻に皺を小さく寄せて。
奥さんてば面白そうに唇を尖らせて頬杖。
真っ白く肩の骨が、浮きあがる。
「どうしたの?」
「行儀悪いの、あたし。」
「なんで?」
「今日はスカーレットだから。」

思わず吹き出した俺。
こういうごっこ遊び、そういや大好きだよな。
「じゃあ、俺、レット・バトラー?」
「ん。」


悠河クン、ちょっと考えて、とりあえず長い脚を組んでみる。
ワイングラスを目の高さに。
「じゃあ・・・ね、とっても綺麗なりかちゃんに、乾杯。」


悠河クンてば、言ったそばから照れちゃって。
んもう、かわいいんだから。
「りかちゃん、じゃなくて。
 り・か。」
ちょっと怒ったふりで、人差し指ぶんぶんぶん。
「・・・うんと、綺麗な綺麗な、りか・・・に乾杯。」
もう、もごもご照れ照れのあたしのバトラー。
ひらひらのふわふわのまんま、
あたしは立ち上がりテーブル越しに、また、ちゅっ。



キャンドルの明かりに浮き上がる、白いレースに緑のリボンのスカーレット。
大きく開いた胸元から、なだらかな谷間が見え隠れ。
ドキドキする、俺は結構初心なレット・バトラー。
ナイフとフォークでお肉をわけて、
「りかちゃん、食べる?」
「ん。」
長い首を出して、ああん。
ぺろってぱくついちゃう、優雅なお嬢様。








本当はね、ちょっと予想はついてるの。
プレゼントは成り行きね。
このドレス、本当は悠河クンのじゃない?
どうせ、年末の余興とかでやらせられちゃったに決まってるわ。
んもう、霧矢とか先輩風吹かせてんじゃないでしょうね。
でも、きっと・・・きっと・・・似合ってたに違いないわ。
ったく、このりか様にお伺いも立てずに悠河クンになんてことさせるのよおおっ!

・・・・・・だから、今度写真持ってこさせよっと。







あたしのためにとっておきのお皿、キャンドル、カトラリー。
「ねえ、どうしてこんなにしてくれてるの?」
あんまり素敵なセッティングに、つい言ってしまうあたし。


「ううんとね・・・・」
悠河クンちょっと考え込んで。
「りかちゃんが、綺麗だから。」
「なあに、それ?」
「りかちゃんの綺麗をもっと、見たいから。」
「そうなの?」
「りかちゃんを、又好きになってく。」

とかいって、又照れてる。



照れてるけど、いうことはきちんと言ってくれるのね。
こういうところが、昔から大好き。
あなたはいつも顔を上げてる。
大事な事はちゃんとわかってる。
あたしなんかよりも、ずっと、ずっと。




そういう処、尊敬してる。
だから、又、愛しあいましょ。



わたしの素敵な旦那様。
















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