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『 9 』
「り・か・ちゃん。」
「ちょ、ちょっと・・・待って。」
ああ、あたしってばこんなときまでクリームすりこんでる。
ううん、こんな時だからよ。
本当に効いてんのかしら?このアンチ・エイジングのライン。
目元と口元に、とくにぐりぐりって。
だって、だって、悠河クンてば、
男のくせにアップに耐えるぴかぴかすべすべの顔なのよ。
鏡のあたしの後ろに、この世で最高にいい男が立っている。
肩に手を回して、耳に頬を押し付けて。
「りかちゃん、いい匂い。」
「ん、今日はね、薔薇のバスソルト。」
柔らかい鼻が耳の後ろに触る。
「ううん、それだけじゃなくて。
りかちゃんの ・・・・・匂いなんだ。」
あらん、いい声。
耳の後ろなんか、ぺろっと舐められて、
背中に電気が走るみたい。
もうクリームなんてどうだっていい。
振り向いて、抱きついて。
電気が走ったまま、あたしたちはベッドに倒れこむ。
ううん正確には、あたしがベッドにカレを引っ張り込むってカンジだけど。
だって、もう我慢できないくらいセクシーな声音だったんだもの。
あら、今日は悠河くんたらちょっと強引。
ぐるんとあたしの上に来て、首筋に唇なんか押し付ける。
ガウンを肌蹴させながら、唇を下げてくる。
「そんなに強くしたら・・・・痕が残っちゃうわ。」
柔らかな髪に指を入れながら、あたしの声ったらとっても嬉しそう。
「いいの、俺のりかちゃんなんだから。」
ちょっと拗ねた唇で一言。
「皆に、分からせるんだ。」
あたしったらもっと嬉しくなっちゃうじゃない。
ああ、おれってば、なんか焦ってて、
変にイキがってない?
りかさんは、こういう時可愛らしいんだけど、なんか余裕なんだよな。
くすくすした笑い声なんかが、頭の上から聞こえてくる。
湯上りの薄桃の肌、甘いあまあい匂い、
肌が唇に吸い付いてくるみたいで、
もうすっかりテンションあがっちゃってる、俺。
ああ、あたしって、悠河クンの前だと、
余裕全然なくなっちゃわない?
大事そうに、優しく胸を包んでくれる掌。
綺麗な指があたしを爪弾くように。
吐息のあたる鳩尾の唇が、くすぐったい。
ねえ、もっともっとあたしに触れて。
少し強引で性急なあなたに、すっかり嬉しくなっちゃてるあたし。
悠河クンの唇で、あたしの身体はすっかりほぐされちゃうの。
なんか今日はどうしたのかしら、すっかりリード取られちゃってる。
でも、いいの、あたしの旦那様なんだもん。
悠河クンって呼びながら、あなたのふわふわの髪の感触を楽しもう。
りかちゃんって呼びながら、胸にくぐもる声が素敵。
抱きあって、お互いの胸の汗が混ざりあう。
あたしたちの気持ちも混ざりあう。
こんなに好きって、お互いに伝えあう。
ねえ、あなたとのセックスが大好き。
人生、こんな幸せなこと、そうあるもんじゃない。
鏡の向こうのあたしは何でも出来て、綺麗で格好良くて。
恋とか愛とか、らしき事はいっぱいしたの。
だけど鏡のこっちでは出来ないことばっかりで、
本当に綺麗?って時々心配しちゃったりもする。
そんな自分は好きだけど嫌い。
こっち側に来てくれたのは、あなただけ。
だから、本当に好きなのはあなただけ。
「りかちゃん。痛かった ?」
おっきな目で、心配そうな悠河クン。
「ううん。」
やだわ、あたしたっら幸せで目が潤んじゃってるじゃない。
睫なんかぱしぱしいっちゃってる。
「えっとね。」
言い訳を考えてみて、必要ないってことに気が付くの。
嬉しくて潤んでるのは、瞳だけじゃないもの。
そのまんま言っても、いいのよね。
「 ・・・・・・・・すっごくね、気持ち、よかったの。」
ちょっと目尻を赤くして、潤んだ瞳の俺の奥さん。
可愛いけれど、ぞくっとするほどハスキーな声で囁いた。
瞳一杯のうるうるは、気持ちいいから?
頬を優しく包まれたと思ったら、瞳にひやりと舌が触る。
「ぁ・・・あん。」
そのまま睫をついばむように含まれて。
こんなの、されたことない。
こんな気持ちいいこと。
「あ・・・しみた? ごめんね、・・つい。」
ちょっと赤くなってどぎまぎしてる悠河クン。
そんな顔されたら、あたしの鼓動は急上昇しちゃうでしょ。
だからあたしも、ぺろっ、て返しちゃう。
「うわっ・・・」
肩に両手をかけたまま、もう一方の瞳にも。
「ねえ、気持ち、いいでしょ。」
彼ってば、眩しそうに笑うの。
「う・・・ん、変なカンジ。」
「いや?」
「ううん、いい。」
「でしょ 。」
そうしてあたしたちってば、抱きあって転げまわって。
笑いあって。
ねえ、もっと、
いろんなことをして。
ねえ、もっと、
あたしを潤して。
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