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『 3 』
ああ、もうこんな時間。
あたしは埃っぽい身体でいそいでシャワーに飛びこんだ。
だいたいね、大っきらいなのよ。
ご近所付き合いとか集団清掃とか。 ←【狼】
でもね、あんまり無愛想にして悠河クンがなんか言われちゃかわいそうって思って、
いってやったわよ!芝生の草むしり当番!! ←【当然だって】
大体、なあに!あのドレス・コード!! ←【大きく違う】
「汚れてもいい服」なんてあるわけないじゃない。
悠河クンが稼いでくれたお給料で買ってくれた服なのよっ、絶対ダメっ。
←【ぶんぶんっ】
仕方なく独身時代のジャージをひっぱりだしたわよ。 ←【ダンナには見せらんない】
軍手とかさせられて、この寒空になぁぁぁんでこのりかさまがっ!!←【当番だから】
悠河クンのためよってぶつぶつ呟きながら、あたしは頑張ったわ。
←【絵としては怖い】
そりゃあ、他の人達の三分の一も進まなかったけど、←【役立たず】
あたしが草むしりしたって段階で、誉められてしかるべきよ。 ←【誉めらんない】
で、お隣の芝生にすっごい可愛い奥さんがいたの。 ←【よそ見】
やっぱりジャージなんだけど、そのへんのアイドルなんて目じゃないくらい。
会社にだってちょっといないくらい、可愛いのようっ。
ああ、もう、あたしが服をコーディネートしてお人形ごっこしたいくらいにいっ!
←【おいおい・・】
そのうえ、性格もいいみたいで、にこにこ皆に囲まれてるの。
で、もうじき終わりって時になって、ぽつ――んと仕事してる ←【避けられてる】
あたしのとこにすたすた来たのよ。
「あの・・・大和さんの奥さんですか?」
「そうだけど、なあに?」 ←【虚勢】
「はじめまして、紫吹の家内です。」 ←【花のような笑み】
いやだ、お向かいさんだったの? ←【愕】
だって引越しのご挨拶に行ったのは、お休みの夜だったから、
なんかすっごくカンジ悪い男が出てきたじゃない。 ←【自分は棚上げ】
顔はね確かにカナリ良かったけど、もうオンナは皆俺のもの、って感じの。
ぜえったいカタギじゃないコイツ、って思ったもの。 ←【オマエモナー】
だからそれからお付き合い全然してなかったのに~ ←【めんどくさかっただけ】
なに、アナタ、あの男の奥さんなの?! ←【大きなお世話】
なんか変な写真取られて脅されたとか、借金のカタにされたとか・・・・ ←【想像】
ううん、あの男にだったら誘拐だってされかねないわ。 ←【妄想】
そういや、うちの団地壁薄いし。
時々お隣から泣いてるみたいな声聞えてきてたわ。 ←【聞くな!】
きっと暴力だわ、ドメスティック・バイオレンスだわ、ああサイテー
←【あんただよ・・・】
「あ、袋纏めて持っていきますから。」
そういってゴミ袋を手にとって微笑んだ、
悠河クンと同じ処に笑窪ができて、あたしったらどきっとしちゃったの。
←【 ・・・・ もしも~し】
「ご近所ですよね、これからも宜しく。」←【社交辞令】
でもって、ぱたぱたっと走っていっちゃった。
髪をブローしながら、あたしはどす黒い不安に襲われていた。
そりゃあ、あたしはものすごく綺麗だけど。 ←【一点の疑いも無い確信】
でも、あんな可愛い奥さんがお隣なんて。
嬉しいけど、嬉しくないっ! ←【でも嬉しい・・・】
きっとあのカタギじゃなさそーなダンナに不幸な目にあわされてるに違いないわっ。
←【こっちも同じ位確信】
でもって、悠河クンの出勤前のゴミ出しの時なんかに出会ったりしちゃったら、
あんなに素敵な彼ですもの、きっとうっとりなっちゃうわ。 ←【杞憂】
でもって、悲惨な結婚生活なんて涙ながらに相談されたりしちゃったら、
あんなに優しい彼ですもの、きっと同情しちゃう。 ←【被害妄想】
鏡で殆ど百面相になりながら、あたしはディオールのクリームをいつもの倍すりこんだ。
アンチ・エイジングのラインなんて揃える必要無いくらいぴっかぴかの肌だったわ。
なのに、あたしってば目の下に隈できてるじゃない。
向かないのよ、あーゆー野蛮な肉体労働って。 ←【言うほどしてねえよ】
ああ、今夜は気合入れて綺麗にしよう。
そういやこないだ買ったアレ、うん、アレがいいわ! ←【浮上】
大人の魅力爆発で、悠河クンを昇天させてやるわよっ!! ←【怖】
さあ!帰っていらっしゃい!!! ←【ちからこぶ】
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