第9章 淫魔改造 

  牡と牝の放つ生々とした臭いが狭い部屋に立ちこめている。その不快な臭いに眉をひそめながらセレナは静かに意識を取り戻した。
 朦朧とする視界の中でセレナは自分がどれほど眠っていたのか、すぐに判断することはできなかった。
首を少しだけ起こし、周囲を確認しようとする気も起きないほどの気だるさだけが全身を包みこんでいる。
 セレナのいつもの朝。
 いつもならメイドが朝を告げに部屋をノックする。
両親と交わす朝の挨拶と朝食。今日は学校の乗馬部で遠乗りすることなど楽しく会話し、笑顔を見せる。学校で勉強して、身体を動かし、女友達と男の子の話題で盛り上がり・・・。
 壊れることのないはずの日常。
 それはもう失われたのだ。
「そう・・・だわ・・・わたし・・・」
 セレナ自身が流した汗と涙で、彼女自慢の金色の髪が頬にべったりとこびりついている。 
徐々に戻ってくる感覚にセレナは、自分が今全裸であり、全身に撒き散らされた牡の臭いの源が肌の上で異臭を放っていることに気づいた。
 さらに自分がいかに淫らな体勢でベッドに寝そべっているかということも同時に認識したのである。
 セレナはうつぶせのまま、安っぽいクッションに顔をうずめていた。両手は腰の横に力無く放り出され、その両足は大胆にも左右に大きく開脚させている。

「う、うう・・・」
 セレナがうめいた。彼女の丸だしになった陰部がそれに反応する。セレナの無惨に赤く腫れ上がった肉襞が僅かに収縮したのだ。
 ドロリ。
 陰部の奥から赤い物がたっぷりと混じった白い粘液がゴボリと音を立てるように滴り落ちる。
「う、うっ、・・・ひっく・・・」
 セレナは低い嗚咽を漏らしていた。
「どうして、こんなことに・・・神様・・・セレナは・・・セレナは・・・このような目に遭わねばならないほど罪深い身なのでしょうか・・・う、ううう・・・」
 涙が出てこない。
もはや枯れ果ててしまったのか、セレナは嗚咽だけを漏らし続けていた。
 セレナの頭の中を昨夜の舞踏会場で拉致されてからの出来事がグルグルと駆けめぐる。信じられない悪夢の最後はこの密室で行われた陵辱劇であった。何人の男に汚れの無かったこの身体を汚されたのか見当もつかない。
野獣のような男達の指揮を執り、まず最初に自分を抱いた男の顔を思い出してセレナはたまらず顔をクッションに押さえつけた。
「お目覚めのようだね。」
 低く冷たい声にセレナは一度だけ身体を身震いさせた。ゆっくりと身体を丸め両腕で相互の肩を抱きしめる。

  
「たっぷりと女の悦びを味わったようだね?最初は痛いとしか言わなかったが5,6人目には自分で腰を振っていたからね、君は。」
「う、嘘よ・・・」
「嘘じゃないさ。まあ薬の効果もあっただろうがね。ハハハ。」
 さも愉快そうに笑う男はすでに白衣に身を固め、身なりを整えていた。そしてその白衣を目の当たりにしてセレナの顔は恐怖に歪んだ。
 目の前の男はグリエフ博士であった。グリエフの瞳は好奇と狂気が渦を巻くような陰湿な光を発していた。
 その視線がふとセレナから外れる。セレナのベッドのさらに奥のベッドへその視線は向けられたのだ。
 そこでは赤毛の少女が屈強そうな男に抱えられるようにして激しく上下している真っ最中であった。少女の顔からはすでに感情という物は失われ、小さく開かれた口からは唾液が滴り落ちている。
空しく空中を泳ぐ瞳から、もはや彼女は己の下半身を貫いている痛みや快楽すら何も感じてはいないことが伺えた。
男の激しい突き上げに声にならない喘ぎの息を吐き出しながら少女は無意識に男の身体に両手と両足を絡みつけている。

    

「お友達のエルセア嬢はすでに男を知っておいでだったのでね。セレナ嬢より濃密に仕込ませてもらいました。」
 グリエフは低い声で笑った。それに合わせるように男のうめき声があがる。
「う、あううぅぅ・・・」
 エルセアが哀しげな声を発し、頭を激しくのけぞらせた。男を呑み込んだエルセアの下半身がビクンビクンと痙攣している。彼女は昨夜から何度目の射精を受けたのであろうか。
「やれやれ、エルセア嬢はホント、男のミルクが大好きのようだな。」
 グリエフは男にしがみつき、荒い息を吐いているエルセアに話しかけながら近寄った。そして、いきなり彼女の赤いショートヘアを乱暴に掴み、引っ張り上げたのである。
「い、いいいっ!」
 まだ痛みを感るだけの意識が残っていたのか、エルセアは半泣きになりながらその紅潮した顔をグリエフ自身の顔正面に向けさせられた。グリエフはその表情を楽しそうに観察し、そのまま目線を落として彼女と男の結合部を覗きこむ。
エルセアの下のシーツは二人の汗や股間から溢れ出た粘液でベトベトになっていた。
 グリエフの口元に満足そうな笑みが浮かぶ。
「仕込みは充分だ。なに、妊娠の心配はいらんよ。すぐにお嬢さんたち二人の改造手術を始めるからね。」
 エルセアはグリエフが何を言っているのか理解していない様子でただ頭をコクコクと縦に振っていた。
「そうか、そうか、サイボーグになることを同意してくれるのかい。では、早速手術室へ行こうか。」
 エルセアは首を振りながらうわごとのように言葉をもらしていた。
「なる・・・なります・・・サイボーグに・・・なる・・・あはっ・・・気持ち・・・いい・・・」
 セレナはエルセアのそのつぶやきに全身を硬直させた。身体が激しく震え出して止まらない。
「いや!私はいや!!お願い!助けて!!いやあああっ!!」
 泣きわめくセレナを一瞥したグリエフがいつの間にか待機していた白衣の研究者たちに目配せする。
「は、離して!いやああああっっ!!」
 研究者たちは半狂乱のセレナをベッドの上に押さえつけると首筋に注射器を突き立てる。
「あ、アアア・・・」
 セレナの瞳から枯れ果てていたはずの涙があふれ出す。
「おやすみなさい、お嬢様。」
 グリエフのその言葉を耳にしたセレナは絶望と恐怖に包まれたまま、ゆっくりとまどろみの中に埋没していった。

 暗く冷たい地下のガルディ特別研究室。
 その最深部には悪魔の祭壇とも言うべき空間が広がっていた。
「いやあああああっっっっ!!!」
 若い女性の絶叫が闇の空気を激しく振動させる。
 その声は分娩台のようなベッドに拘束されているルシアン王女の叫び声に他ならなかった。
「お願いっ!あああっ・・・もう、もうやめてええっ!!!」
 ルシアンは胴体と両手両足を厚い皮ベルトで拘束されており完全に動きを封じられている。そしてその彼女の頭上半分を覆い隠すように機械装置が装着されていた。

  


彼女の苦悶の理由はその装置が原因であることは明らかであった。
 コードに接続された機械装置の回路が明滅するたびにルシアンは下着姿にされた身体を激しく硬直させる。
 ルシアンの全身には玉のような汗が無数に浮かび上がり、その白く美しい肌は食い込む革ベルトによって赤く染まって血がにじみ出していた。
 チューン、ピ、ピピッ!
「う、うわあああっっ!」
 冷たい電子音が発せられたとき一際激しくルシアンは甲高い悲鳴をあげ、身体を痙攣させた。
ルシアンの頭の中にはこのとき脳をズタズタに引き裂かれる感覚と激痛が間断なく深層意識に送り込まれてきていたのである。
 ルシアンを苦しめる装置から延びるコードの先には大きな箱状の装置があり、その操作パネルの前に置かれた椅子にガルディはいた。
「閣下、このままではルシアン姫の身体がもたないのではありませんか?」
 傍らのエリーシャがもがき苦しみ、息も絶え絶えになっているルシアンを横目で眺めつつ歩み寄る。
そして手術台の脇に用意された台の上に並べられたアンプルのひとつを手に取った。
「ふん。まだまだ調整作業の序の口なのだが。ほんとお嬢様育ちの娘は困る。」
 ガルディはそう言って苦笑を浮かべた。その顔には狂気が滲み出ている。
「エリーシャ、ポロミナスルβを0.02㎎投与してやれ。少しは静かになるだろう。」
「かしこまりました。」
 エリーシャは手慣れた様子で注射器を用意するとルシアンの腕に薬を投与する。
これによりほどなくルシアンの悲鳴は収まったが、その様子は変貌を始めた。
「はあ、はあ、はあああ・・・」
 呼吸が荒くなり、全身が上気したように赤く火照り始めたのである。ルシアンの唇が濡れ光り、下着の下の乳首がそり立っているのが一目で確認できる。彼女が極度の性的興奮を味わっていることは確かであった。
「あまりこれを使うと淫乱なだけのSEXマシンになってしまうからな。それでは困る。」
「承知しております。」
 明瞭な返答にガルディは満足そうに頷いた。
「これからルシアンには身体だけでなく精神も新しくなってもらわなければならない。」
 そうつぶやきながらガルディは目の前のカプセルの中に無言で浮かぶタニアを見つめた。低い笑いが自然と漏れ出る。
「姉上、いや、タニア。もうすぐですよ。愚かな兄・・・国王はすでに消した。我々のための時代が始まるのです。」
 エリーシャは物言わぬ人形でしかないタニアに語りかけるガルディを無表情に見つめている。その瞳は自分の横で悶え苦しむルシアンに向けられていた。
「可哀想なお姫様・・・」
 それは純粋な哀れみなのかそれとも別の意味があるのか、エリーシャの氷のような肌の下にそれはすぐに消え去っていた。
「エリーシャ、次の段階に移る。記憶のフォーマット完了後ただちに洗脳処置。脳組織の摘出のあと肉体強化手術にかかる。まだまだこれからだ。準備にかかれ。」
 エリーシャのアイスブルーの瞳が静かに揺らめいた。
「はい。かしこまりました、ガルディ閣下。」
 エリーシャは深々と一礼したがガルディはそれを見てはいなかった。
 ガルディは荒い息を漏らすルシアンの乳房をゆっくりと掴みもみつぶす。
それに合わせてルシアンも官能の声をあげ、ゆっくりと両足を開いて行った。
「男が欲しいか、ルシアン。今から脳をフォーマットしてやる。待っていろ。」
 ガルディはそう告げるとエリーシャの用意したレーザーメスを手に取っていた。
「まずは開頭する。いいなエリーシャ。」
 エリーシャはガルディの指示に従い、ルシアンの頭部を覆っていた装置を取り外す。
その下から顔を出したルシアンの瞳は欲情した牝猫のように潤み、宙を漂っていた。


 ルシアンの洗脳手術が始まるのと時を同じくして、研究所の手術実験室ではグリエフによって一人の少女の脳が手術により摘出されていた。
「マテリアル・セレナの脳組織摘出しました。」
「人工神経組織に接続完了。脳波正常です。」
 手術台に拘束されたセレナは脳を摘出されたまま静かに口を開閉させていた。
 研究者たちの報告を聞きながらグリエフは摘出され、培養カプセルに移されたセレナの脳髄に直接電極を差し込んで行く。


それに反応するように手術台のセレナの肉体が激しく震え、口から「ひっ、ひっ」という小さな悲鳴を発した。
大きく見開かれた瞳は閉じられることなく天井の照明を映したまま微動だにしない。
 額から上をすっぽり切り取られたセレナのその様子をグリエフは楽しそうに眺める。
「可愛いよ、セレナ嬢。すぐに脳味噌の中を新しく作り替えてやるからな。おい!洗脳データのインプットを始めろ。臓器摘出改造班は開腹手術にとりかかりたまえ!」
 グリエフの指示が飛び、四人の担当技師達が手術台のセレナの柔らかな肌に群がった。
 技師達は天井から延びてきたレーザーメスをおのおの手に取る。
 ザシュ!
 ザシュ!
 上半身担当の技師二人はまず容赦なくセレナの二つの乳房を容赦なく切除した。
さらに下半身担当の一人がセレナの呼吸で小さく上下する腹部をためらいなく縦に切開する。
そして残る一人は彼女の手術台に縛り付けられた細くしなやかな両足の切断を始めたのである。
 次々にセレナの臓器や骨格が摘出されて行く。
「心臓摘出します!」
 生命の鼓動を続けるセレナの小さな心臓が何のためらいもなく切り開かれた胸から摘出される。それに合わせて人工心臓の埋め込みと接続が始まっていた。
 これまで行われ、積み重ねられてきたサイボーグ手術実験によって生体改造手術の技術はすでに完全に確立されたと言ってもよいだろう。
 セレナの身体は瞬く間に解剖標本のように解体されていった。そこに何十本ものコードやチューブに繋がれた人工機械が次々に埋め込まれていく。

   


 僅かに残された生体の筋肉組織が手術のレーザーの火花に反応するのか、ピクピクと震えていた。
「おい、お嬢さまがまた泣いているぞ。」
 技師のひとりがセレナの大きく開かれた瞳から流れている涙を見て言った。

  


「あれだけ泣き叫んでおいてまだ涙が出るのか、このお嬢様は?おい、さっさと眼球を摘出してしまえよ。」
「何と言っても身体の中を空っぽにされちまってるんだからな。これで生きてるんだからサイボーグってのはほんと化物だよ。」
「じゃあ、このお嬢ちゃんも、もう半分化物ってことだ。」
 セレナに自分の暖かかった肉体を冷たい機械に変えて行く男達のこの会話は聞こえていたのだろうか。
彼女の唇が何かをつぶやくようにかすかに動いていた。
「貴様ら!無駄話をするな!」
 グリエフの鋭い叱責が走る。
 セレナの改造手術が進むなか、その左横に並ぶように設置された別の手術台では別の娘が四つん這いにされた体勢で手足を固定されていた。
 そこにいたのは全裸にされたエルセアである。
 エルセアは投与されていた媚薬の効果も切れ、正気をかろうじて取り戻していた。
しかしそれは彼女にとって不幸だったのかもしれない。
 自分の横で無惨に身体を切り開かれ、機械を埋め込まれて行くセレナの姿を目の当たりにしたエルセアは幼い印象のその顔を蒼白にして小刻みに身体を震わせていた。あまりの恐怖で声も出せない状態であった。
「エルセア、昨晩は楽しませてもらったよ。どうだった、久々の男の味わいは?」
 グリエフの呼びかけにエルセアは拒絶するように瞳を強く閉じて、顔をそむけた。
 そう、エルセアは処女ではなかったのである。その肉体は男を経験していたのだ。
 グリエフは彼女を抱いてそれに気が付き、自分の行為のあと、選りすぐりの猛者にエルセアを一晩中抱かせたのである。
「う、う・・・うう・・・わたし・・・そんなふしだらな女じゃありません!」
「なに?一晩中腰を振ってよがりまくっていた淫売が何をぬくぬくと言うか!幼い顔立ちの裏にあるのはどんな顔だ?」
 怯えるエルセアのむき出しになった股間にグリエフは指を差し入れる。
「痛いっ!!」
 グリエフの引き抜いたその指先はねっとりと濡れ光っていた。
「見ろ。やはりお前は淫乱な女だ、友人の娘が今まさに機械へと生まれ変わるのを目の前にして欲情しているんだからな。」
「ち、違う・・・違うわ・・・助けて、お父様・・・」
 絞り出すようなエルセアの言葉にグリエフは再び荒々しく二本の指を彼女の陰部に押し入れた。激痛にエルセアが悲鳴と一緒に四つん這いのまま背中をのけぞらせる。
「何が違うんだ!?この淫乱娘が!!」
「ひ、ひいいっ!」
 手術台に顔を押しつけて痛みに耐えるエルセアにグリエフは満足そうに頷いた。
「お前はおもしろいサイボーグになるな。さて、見て見ろセレナ嬢が美しい姿になっているぞ。」
 エルセアは恐る恐る左の手術台に顔を向ける。

  

  


「バストウェポン、装着かかれ!」
「人工血液への交換終了しました。人工心肺への完全移行に入ります。」
「神経組織のシンクロ確認!」
「人工性器取り付け急げ!脳波乱れているぞ!」
 技師達の復唱が続けられる。その手術台の上にはもはや人間はいなかった。ただ人の形をした機械の固まりが組み上げられているだけである。かつて顔のあった箇所も不気味な機械の部品がそれに変わっていた。もはやセレナという少女はそこにはいなかったのである。
 エルセアの顔が蒼白になる。
「や・・・いや・・・いやあぁ・・・」
 泣き叫びたい衝動がのどの奥からこみ上げてくる。
 そのとき口を空しく開閉させていたエルセアはその口に太いパイプ状のチューブを押し込まれ、激しくむせ混んだ。


「げほっ、げほっ、ぐむううううっっ!」
 エルセアは喉元のチューブの苦しさに加え、さらに己の下半身の穴二つに同様のチューブが押し込まれた激痛に全身を硬直させた。
 そこではグリエフが天井からのびた二本のチューブをエルセアの中に押し混み続けていたのである。


  押し込まれるチューブの異物感を体内に感じ取りながらエルセアは身をよじり、喉の奥から苦痛の悲鳴をあげ続けた。
「おとなしくしたまえ。君の臓器は摘出後、私の研究資料になるのだ。そんなに動かれては傷だらけになってしまう。」
「うっ、うううう・・・」
 グリエフの平然と口にする悪魔の言葉にエルセアは歯を食いしばって耐える。
 その様子を満足そうに眺めながら、グリエフは手に持つチューブのバルブをゆっくりと開いた。
用意されていた薬品がそれぞれチューブの中を通り、エルセアの体内へ注入されてゆく。
「ううっ!?うあああああああっっっ!!あううううっっ!!!!」
 さすがのエルセアもこれには耐えきれなかった。下腹部に注入される得体の知れない液体への嫌悪感と恐怖感にエルセアは手足を手術台に縛りつけているベルトをひきちぎらんばかりに身体を動かす。
 エルセアが尋常ならざる抵抗を見せたことで、セレナの手術を続けていた技師達もその手を止めて、慌ててエルセアの身体を押さえ込んだ。
「グリエフ博士、先に脳改造やってしまった方が良いのではないですか?」
「いや。」
 両目を見開いてのたうつエルセアの臀部を撫でながらグリエフは技師の一人の提案を拒んだ。
「貴族のご令嬢のくせにこの年齢ですでに男を知っている破廉恥な娘だ。お嬢さんにお仕置きをしてやらねばな。ふふふ、自分が生まれ変わってゆく姿をしっかり見せてやるのだ。」
 手術台に押さえつけられていたエルセアが力尽きたようにグッタリと静かになった。
 その瞳は光を失い、焦点がぼやけたまま宙をさまよっている。
「薬が効いてきたようだな。では上のお口からも薬を入れようかね。」
 ゴボッ。
 エルセアの喉が大きな音をたてた。彼女の口に差し込まれたチューブが波打っている。
「マテリアル・エルセアは下半身から改造する。人工性器は準備できているな?」
「万全です。」
「よろしい。では、始めよう。」
 グリエフは嗜虐的な笑みを満面に浮かべながらうつぶせのエルセアの秘部に顔を埋める。
 その手には不気味な光を放つレーザーメスが握られていた。

 深層意識の中でルシアンは全裸で虚空を漂っていた。
 どちらが上で、どちらが下なのか、何も判らない空間に浮かぶルシアンの身体は黒い革ベルトによってがんじらがめに拘束されている。
「う、うう・・・」
 ルシアンが苦しそうに悶え身をよじった。
そのときである。
忽然と現れた黒い影がルシアンの身体に絡みついてきたかと思うと、その肌を舐めるようにねっとりと愛撫を始めたのだ。
「は、はう・・・ああ・・・」
 ルシアンの小さな唇がせつなげな吐息をもらす。
 全身を舐めるように愛撫されるルシアンは静かに瞳を開いた。
そこには白髪の老人が自分の身体に指を這わせているではないか。
 その老人の顔を見たときルシアンはあまりの驚きと戦慄に低い悲鳴をあげた。
「タニア・・・おお、タニア・・・」
 そう言って老人は動けないルシアンの股間に右手を差し入れて来る。
「や、やめて!いや!いやです!お父様あっ!!」
 ルシアンは髪を振り乱して泣き叫んだ。
 彼女の目の前の影の正体は父、そう国王ローム三世であり、その実の父が自らの娘の肉体を弄んでいるのである。
「タニア、おお可愛いのう、震えておるのか?」
 ルシアンはこれまで見たこともない父の姿にまともに言葉を発することもできない。
「あ、あう・・・ううっ!」
 そのルシアンの口にローム三世は己の口を圧し当て、唾液にまみれた舌を押し込んでくる。
「は、はむ・・・あぷっ」
 ルシアンは父の舌に口の中を犯されながら、不思議な感覚に捕らわれていた。
 とてもつらく苦しく哀しいはずなのに、ルシアンの身体は熱く火照り始めていたのである。
 自分が自分でないように、いつしかルシアンは自分からローム三世の舌に自分の舌を絡み合わせ、激しく吸い上げていたのである。
 唇を重ね、舌を絡ませ互いの口内を愛撫する。唾液と唾液が淫らな音と糸を光らせ、ルシアンの瞳がうっとりと細められていった。
 そして拘束されたベルトの隙間からのぞく豊満なルシアンの乳房がローム三世の胸で押しつぶされ、その乳首が官能に隆起している。そのとき股間から一筋の光る粘液がルシアンの腿を滴り落ちた。
「わたし・・・お父様に・・・恥ずかしいことされているのに・・・どうして・・・きゃあっ!!!」
 そのときルシアンは股間に走った激痛に身をよじった。ローム三世が剛直した自身をわずかに開いたルシアンの蜜口に挿入していたのである。
「タニア!タニア!」
「ち、違う!お父様!わたしは、わたしはルシアンです!あなたの娘です!やめて!うあああっ!」
 全身を引き裂かれる破瓜の痛みにルシアンは悲鳴をあげていた。
ローム三世はルシアンのその反応を楽しみながら両手でルシアンの乳房をもみつぶし、隆起した乳首を喰いちぎらんばかりに噛みあげる。
 ズリュッ!
 淫猥な音をたててルシアンの胎内にローム三世は潜り込んだ。
「は、はう!痛い・・・痛い・・・」
 両目に涙をいっぱいに溜めたルシアンを無視して、ローム三世は腰を前後させ始める。
ルシアンは実父にその純血を奪われ、汚されたのである。声にならない悲痛なうめきをもらしながらルシアンは天を仰いだ。
「タニア!お前の中は暖かくて最高じゃぞ!ほれ、ほれ!わしの子を孕ませてやるぞ!うほほほ!」
「ああ、ああああああっっ!」
 間断無い激痛と熱情の波に呑み込まれながらルシアンは天を仰いだまま、父の行為にその肉体を委ねていた。
 ルシアンの両足は左右一杯に広げられ、ローム三世は獣のようにルシアンにの股間に己を叩き付ける。
「あ、ああっ、ああっ、・・・」
「ゆくぞタニア!」
「あああっ!いやあああああああっっっ!!!」
 ルシアンは自分の子宮が膨れ上がるのを感じた。
そして自分の胎内いっぱいを熱い迸りが満たしたときルシアンの視界は白い光に包まれていたのである。
 二人の雄と雌は動かなかった。
 長くそして短い空白の時間が流れる。
「うふ・・・ふふふ・・・」
 不思議な光景である。やがてルシアンの唇がクスクスと笑いを漏らし始めたのだ。
「あはあ・・・うふふ・・・もっと、もっとくださいませ・・・陛下ぁ・・・」


 惚けたようにルシアンの唇が意外なつぶやきをもらす。
だがその口調はそれまでのルシアンとは明らかに異質なイントネーションを含んでいた。
 牝猫のように甘美で淫猥な色を持つ声である。これまでのルシアンと比べてまるで別人と言っても過言ではない。
「陛下、もっと・・・気持ちよくしてくださいませ。ああ、陛下・・・」
 淫靡な言葉をつぶやきながら、天を仰いでいたルシアンがゆっくりと乳房を貪るローム三世に顔を向ける。
そのルシアンの瞳はそれまで柔和で優しげであった雰囲気を微塵も感じさせなかった。鋭く吊り上がった瞳はまるで鋼の刃のように冷たい光を湛えている。そして花の蕾のようであった唇もまた、血のように赤く輝き、ねっとりとした微笑を浮かべていた。
 乱れた髪のほつれ毛を妖艶に口に含んだルシアンはその豊満な乳房に舌を這わせるローム三世の動きに合わせてその肢体を動かす。
「ああっ陛下、気持ちいいっ!抱いて、抱いてくださいませ、もっと強く・・・激しく!ああああっ・・・」
「おおっタニア!ゆくぞっ!もっと、もっとじゃ!!」
 ローム三世は再び激しくルシアンに腰を叩き付ける。
「ひあっ!ひあっ!ああうううっ!!」
 そこで獣のようにルシアンは嬌声を挙げた。
 間違いない。そこにいるルシアンはもはやルシアンではなかった。
別人である。
 その正体はルシアンと同じ顔を持つ女性、ローム三世の第一王妃タニアがそこにいるとしか考えられなかった。
 ピピッ!
 短い電子音が走った。
 エリーシャの指が静かにコンソールを叩く。
彼女の背後で悲鳴が上がった。
「うああああっっ!!」
 ルシアンの悲鳴である。
 エリーシャはゆっくりと肩越しに背後のルシアンが拘束されている手術台をのぞき見た。
その瞳がかすかに揺らめく。
 そこにはガルディによってその裸体を犯されているルシアンの姿があったのである。 
 ガルディは容赦なくルシアンを貫き、歓喜の声をあげている。
 ルシアンは上半身を拘束され、下半身をガルディに抱えられて陵辱されていた。その姿はルシアンが深層意識のなかで見て、感じている姿そのままである。
 ルシアンが見ていた黒い影、すなわち父王はガルディの影であったのだ。
「さすがは姉上の血を引くルシアン・・・この肢体まさにうり二つ。」
 ガルディはルシアンを犯しながら笑った。
そしてゆっくりと悶えて声をあげるルシアンの後頭部に手を伸ばし彼女の長い髪をなで上げる。
 その手が無粋な電子コードにふれた。
 そのコードの先はルシアンの額へとのびている。おぞましい光景である。
ルシアンの額から上は無惨に切り開かれ、むき出しになった脳細胞に直接三本のケーブルが直結されているのである。


そのケーブルから送られる信号に反応するようにルシアンの身体は悶え、呼吸と喘ぎを続けているのである。
 エリーシャの視線はルシアンの脳に繋がれたケーブルの先に向けられていった。
 信号を送るコンピュータ、そしてさらに延びるケーブルはカプセルの中に浮かぶタニア王妃の亡骸から摘出され、保存されていた脳細胞に繋がっていた。
「ガルディ閣下の妄執・・・ね。」
そうつぶやくエリーシャの瞳は冷ややかであった。
 ルシアンの肉体を貪るガルディに、そのつぶやきは当然聞こえていない。
彼女は黙ってガルディにあらかじめ指示された処理を続けていた。
 彼女の目の前のモニターに膨大なデータが流れて消えて行く。
「ルシアン王女・・・今までのあなたには・・・消えてもらうわ。お母さんと一緒になるの・・・母親と呼べるかどうかは判らないけどね・・・」
 エリーシャの指がコンソールを叩いた。それに同調するように膨大なデータがルシアンの脳に注ぎ込まれて行き、さらにタニアの脳細胞が詰められたカプセルの中に無数の気泡が発生する。
その光景はまるで脳細胞自身が脈動しているかのように見えた。
「ぎ、ギャアアアアアアアッッッ!!!!!」
 とても女性とは思えない、獣のような絶叫であった。
ルシアンが脳を覗かせたまま全身を痙攣させて悶絶する。
その表情はかつての清楚で穏やかであったルシアンとはまるで違っていた。
 絶叫し、白目をむいてしまっているルシアンの胎内に三度目の精を放ったガルディは悶え苦しむルシアンの頬を撫でながら満足そうに彼女の身体から己自身を引き抜く。
「ふう。」
 ガルディは大きく息を吐き出した。
「閣下、ただいま最終データのインプットに入りました。脳細胞の完全フォーマット及び人格改造完了まで二時間です。」
「ご苦労、エリーシャ。ルシアンの改造はまだまだこれからだ。生体組織強化改造手術、続けて機械化改造手術を行う。」
「ルシアン王女を・・・本当の怪物になされるおつもりですか?」
「怪物?いや・・・我がアイアス王国の科学力の象徴である”機械女神”・・・我らの築き上げる新生アイアス帝国の象徴に生まれ変わるのだ。ローム三世が推進していた強化人間兵士計画と私の機械化人間兵士計画、その二つのノウハウを私はルシアンに注ぎ込む。」
「目的はそれだけなのですか?」
 そう問われたガルディは口元に苦笑を浮かべていた。
「新生アイアス帝国を統治するのは私と・・・タニアだ。タニアは判っているよ。もう私を拒むことは決してしない。あの淫売のポーラなぞに王妃の座を奪われたタニアの無念がわかるのは私だけだ。」
 低い笑いをもらすガルディをエリーシャは静かに見つめていた。
「閣下は・・・」
 エリーシャの静かな言葉にガルディはふと視線を彼女に向ける。
「閣下は私をサイボーグに改造しようとは思われないのですか?」
 その言葉にガルディは笑みを浮かべたまま冷淡に言い放った。
「貴様は私の肉人形だ。不思議なことだがお前の身体はどんな高性能なモノより具合がいい。サイボーグに改造しない理由はそれだけだ。」
「そう・・・ですか。」
 エリーシャの顔が一瞬、悲しみに染まったようであった。しかしそれもいつものごとく一瞬である。
「なんだ、サイボーグになりたいのか?」
「い、いえ・・・」
 ガルディはそんなエリーシャの表情を見たのか見ていないのかゆっくりと天を仰いだ。
 地下深いこの研究室の上は冷たい闇に包まれている。
この上では今、グリエフがルシアンの衛士となる二人の少女を改造していることを思い出したガルディは軽い興奮をおぼえた。
「グリエフめ、あいつもさぞ楽しんでいるんだろうな。フフフ」
 ガルディはエリーシャが注いだブランデーを口に運びながらほくそ笑んだ。
 そしてこのときも手術台の上のルシアンは脳髄に絶え間なく注ぎ込まれるデータによってその全身を苦痛と快楽に激しく痙攣させ続けていたのだった。
第9話/終

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