動画 アダルト動画 ライブチャット
私の恋人であり、秘書である杏奈が手術台の上に横たわっている。
私は、彼女を自分だけの存在にしようと思っていた。彼女の美しさもそのままにして、完全な生きた人形として・・・。杏奈をそうすることが私には可能だった。
「片桐社長、本当にいいのですか?水沢さんに処置を施してもいいのですか?」
「私の意志は変わらないよ。谷本ドクター、執刀と執刀後のリハビリと訓練をお願いする」
「わかりました。それでは手術を開始します」
「その後のリハビリと教育、訓練も君に任せる。水沢君を私の本当の秘書にしてくれ」
「わかりました」
その言葉を聞いて、私は、部屋を出て行った。数ヶ月の後、再び杏奈と逢う時は、彼女は、私が望む姿になっていることだろう。
片桐伸二が部屋を出て行ったのを確認して、谷本は、アシスタントに声をかけた。
「さあ、水沢さんへの処置を開始します」
そう声をかけながら、谷本は、『社長の性癖にも困ったものだわ。でも、彼女は幸せかもしれない。だって、社長は性癖のおかげで、普通の女性を愛することなんてないんだから、だから、水沢さんへの愛の深さは本物だし、処置を終えた水沢さん以外の女性に社長の心が動くことはないのだから。おめでとう、水沢さん。社長の愛を永遠に受ける権利を持つ世界で一人の女性になれたのよ。』と呟いた。
そして、手術台の杏奈への処置を指示したのであった。
杏奈は、最新式の神経感覚除去システムと麻酔により、昏睡状態におかれて管理されていた。谷本は、全く意識のない杏奈を見下ろして、アシスタントに指示した。
「まず体毛の除去と皮膚機能の停止処置を行って。」
アシスタントは、まず、杏奈の身体をウェスのようなもので丁寧に拭いた。そのウェスには、脱毛のための特殊な薬剤が染みこませてあり、アシスタントに拭かれた部分の杏奈の身体から、体毛が抜けていったのである。頭部の毛髪の部分は、アシスタントが、丁寧にシャンプーのような液体で洗うようにすると毛髪がみるみるうちに抜け落ちていった。こうして、あんなのからだから体毛が全て取り除かれていった。
次に杏奈に施されたのは、毛根や汗腺を潰し、皮膚の機能を失わせるための薬品であった。アシスタントは、細心の注意を払い、杏奈の全身に丁寧に万遍なく何度も何度も薬液を塗布していった。
この処置は、杏奈が意識がある時に行われれば、想像を出来ない苦痛に襲われる程の処置であった。
杏奈は、薬の効果が出るまで、丸一日休みなくこの薬液を塗り続けられたのであった。これらの処置が終了し、杏奈の皮膚は完全に機能しなくなったのであった。
谷本は、杏奈の皮膚組織が、落ち着くのを待つため、24時間、杏奈を安静にし、容態を監視するように指示を出し、仮眠をとるため休憩室に向かっていった。これから、谷本の本当の戦いが始まるため、その備えのために鋭気を養おうと思ったからであった。
「いよいよ、手術開始ね。」
谷本がそう独り言を言いながら手術室に入ってきた。
彼女は看護士に杏奈の内蔵の洗浄をするように指示をだすと、看護士が、杏奈の口と肛門に内蔵洗浄機のノズルを取り付け、内臓洗浄を開始した。杏奈の内臓にあった排泄物や未消化の内容物が、口からの高圧洗浄水に押し出されるように肛門に取り付けられたノズルから勢いよく出てきた。杏奈の内臓内の残留物が完全になくなるのを確認して、看護士は、杏奈の口と肛門から、内蔵洗浄機にノズルを抜き取った。
次に、尿道カテーテルによる導尿と栄養点滴を行い、これで杏奈への手術の準備が全て整ったのである。
彼女は、杏奈の全身を改めて見つめた。杏奈の全身には、体毛がいっさい無く、汗腺や毛根などが全くなくなり、ツルツルの身体になっていた。彼女の皮膚の機能は完全に喪失しているため、皮膚による温度調節機能を代替する機械を杏奈に取り付けるように助手に指示を出した。
助手たちは手早く、杏奈の膣から、体温調整機能の代替機械のノズルを挿入した。杏奈のからだが無意識に震えるのがわかった。
「意識が無くても、性的刺激を感じる物なのね。」
谷本は、そうつぶやいて、杏奈の身体が落ち着くのを待ってから、谷本は、杏奈の身体の処置に入ることになった。
「それではオペを開始します。」
谷本はそう言うと杏奈の胸部を首から股下まで一気にメスを使い切り裂き、切り裂いた皮膚と筋肉組織を処置台の上に広げて固定した。杏奈の胴体は、内臓組織が剥き出しの状態になった。谷本は助手に指示を出し、杏奈に人工血液の輸血と栄養液の点滴を開始させ生命維持の安定を図った。
「水沢さんの意識レベルを視覚と聴覚だけ覚醒状態に戻して下さい」
谷本の指示に従い、助手は、杏奈の頭部にコードで接続されている神経感覚除去システムのコントロールパネルを調整した。
そうすると、杏奈の視覚と聴覚が戻った。
「水沢さん、これからあなたを社長秘書であり、婚約者として最適な身体にするための手術と我が社が開発に成功した長期着用型宇宙服の着用実験者としての宇宙服装着処置を開始します。この処置は、片桐社長からの命令により行われるものです。もちろん、社長はあなたを自分のものだけにしたいという願望があって、長期着用型宇宙服をあなたに装着するということは、貞操用のフルボディーケースとして着せることを最大の目的にしています。それに、秘書が、新開発の宇宙服を着せられているということで、我が社の製品の強力な広告塔としての役割を期待しています。あなたは、片桐社長に永遠に愛される唯一のものとなるのです。大きな代償を払うかもしれないけれど、素晴らしいことだと思うわ。あなたには私の言っている意味が理解できるはずよ。覚悟してね。それから、水沢さんの視覚と聴覚を活かしておくから、これから自分に起こること全てを見聞きして、理解してもらうことになります。それでは、手術を開始します」
杏奈は、自分にこれから施されるであろう処置のことをすぐに理解した。
自分が人間として生きることを許されないことの悲しさと、片桐が、普通の性癖を持つ人間でないために、彼の性癖の中で杏奈を受け入れるために最良の処置を受けさせてくれることの嬉しさが交錯した。そして、この処置により生まれ変わる自分を受け入れ、仕事に私生活に片桐のパートナーとしての人生を歩もうと決意した。その決意は、杏奈の心に至上の満足感をもたらすのであった。
仰向けに横たわった杏奈のちょうど視線の位置にモニターがあった。そのモニターには、今の杏奈が移っていた。杏奈は、自分の身体がツルツルなのを見て恥じらいを覚えた。
髪の毛から、眉毛、陰毛に至るまで、全ての体毛が無くなった杏奈の肉体は、淫靡な印象があった。杏奈は、私は、人形となり片桐に心底愛されることの喜びに再び浸ってしまったのであった。
杏奈は、心の中でクスリと笑った。何故なら、自分が生を受けた肉体をいじくり回された上に二度共との状態に戻ることのない手術を受けるのに、それが嬉しいと思い至福の感覚を味わっている自分が可笑しかったのであった。
杏奈の手術が始まった。杏奈に施されるサイボーグ処置は、実際に長期着用型宇宙服の着用者に施される手術とは若干違っていた。その違いは、片桐が喜ぶ身体にするためと、秘書用サイボーグとしての手術が併せられているところの違いであった。
谷本の執刀により、杏奈の胴体は、顎から股にかけて切り開かれ、内蔵がむき出しの状態になった。杏奈は人ごとのように、まるで人体標本のようだと思っていた。杏奈には、意識があっても、痛みを全く感じないようにシステムによって維持をされているため、モニターに映っている自分に施されている処置は人ごとのように思えてしまうのだ。
それを察したかのように、
「水沢さん。今、モニターに映っているのは、自分なのよ。だから、自分に何が起こっているのかをよく見ておくのよ。これからの生活に自分の身体が、どの様な構造になっているかわかっていると便利だからね」
谷本の声が、頭の中に飛び込んできた。
そうなんだ、これは自分のことなんだと杏奈は思い返した。
「心臓と肺の除去と高性能血液循環用心臓代替ポンプの取り付けを行います。外部設置型人工心肺へのバイパス処置と人工血液への交換処置を開始して下さい」
谷本の指示にアシスタントドクターや看護師が、てきぱきと行動しているのが解った。
それでも谷本にとっては心許なく映るのか、
「もっと、動作を速くしないと、実験体のスペアはないのよ、普通の実験体とは違う貴重な素体なのを忘れないで!もっと機敏に動かないと実験体が死んでしまうわ」
「すみません!」
現場にさらなる緊張感がみなぎって、 スタッフの動きがもっと機敏になった。杏奈は、自分が実験動物の一種であることを痛烈に思い知らされたのであった。
谷本が用意された外部設置型人工心肺装置に、心臓に繋がる動脈と静脈を肺動脈と肺静脈をのぞいて手際よくつなぎかえ、心臓と肺を一気に杏奈の身体から取り除いた。取り除いた臓器は、生体移植用として、移植を待つ患者の元に手際よく搬送されていった。杏奈は、自分の分身が誰かの身体で生きていくことになることを思い、少し、ホッとした気分になった。
杏奈の人工心臓は、片桐からの注文により、心拍音が出ないように万遍なく人工血液をサイボーグ体に供給できるようなポンプタイプの特殊なものが設計された。ロータリー式のポンプであるため、効率的に体内へ血液を搬送できる設計になっていた。このタイプの人工心臓は、私たち、サイバーヒューマン社の新商品となっていくのであった。杏奈は、この人工心臓の移植第一号でもあったのである。杏奈は、もうこの時点で心臓の鼓動という人間本来の音をも失うことになってしまったのである。
谷本は、素早く杏奈の心臓のあった位置に杏奈の新しい心臓になる人工心臓を納め、循環液の満たされたタンクと循環液を再使用するための循環液クリーナー、使用不可になった循環液をためるタンク、そして、循環液の流れや再利用か廃棄かを選択するためのコンピューターが、杏奈の肺のあった位置に納められた。それらの機材を素早く接続し、外部設置型人工心肺に繋がれていた動脈と静脈類を人工血管を使用しながら、杏奈の新しい人工心臓であるロータリーポンプに素早く繋ぎ変えられた。そして、人工心臓等の循環液の体内循環システムを体外の動力供給システムと繋げていった。
杏奈の身体に新しい血液である循環液が流れ込むのを谷本は確認して、杏奈の体内を流れていた赤い本来の血液と人工血液が混じり合った液体を完全に杏奈の体外に排出した。この処置により、杏奈の身体を流れる血液は、淡いピンク色をした循環液だけとなった。
「さて、次は内臓の摘出ね。」
谷本は、そう言うと、迅速な手さばきで、杏奈の消化器官を喉から、食道、胃、小腸、大腸に至るまでを全て摘出した。もちろん、肝臓や膵臓、腎臓や膀胱も全ての内臓が、杏奈の身体から摘出されていった。一時的に、杏奈の身体は、杏奈に新に与えられた人工心肺システム以外のスペースは全て空になったのであった。
杏奈の喉には、除去された声帯の代わりに、脳からの音声信号をデジタル波に変換して外部との無線による会話が出来るようなコミュニケーションシステムと人形のような音声を発声できる人工声帯音声スピーカーが取りつけられた。そして、その空間を埋めるように杏奈の首から胸部までのコントロールを補助する補助コンピューターが納められた。
彼女が長期着用型宇宙服を未着用で外部に直接聞こえるような声を必要とするのは、片桐と二人の時だけなのである。その時の声は、出来る限り作り物の声に近い方が、片桐の恋愛対象になるのであった。片桐の特別な恋愛観を満たすためにも、人形やロボットのような声にする必要があったのであった。ちなみに長期着用型宇宙服にも外部スピーカーが装着されていて、そちらの方は、杏奈本来の声を再現できるように外部スピーカー兼人工声帯が調整されるようになっていた。
本来は、宇宙空間での作業を大気中と同じようにこなせるようにするために装着される長期装着型宇宙服であるため、オリジナルの設計では、外部とのコミュニケーションは、デジタル無線コミュニケーションシステムのみであるのだが、杏奈が地球上で生きた広告塔になるために特別に付け加えられたうちの一つが、この外部人工声帯スピーカーであった。このシステムのおかげで、彼女は、宇宙服を着せられている状態でも周りの人間と普通に会話することが出来るのであった。
次に谷本は、杏奈の腹部の処置に移った。腹部の大きな空間には、通常の長期着用型宇宙服の着用者の三分の一の大きさの循環液貯蔵タンクと廃液貯蔵タンクが納められた。そして、こちらの循環液貯蔵タンクにも淡いピンク色の循環液が満たされていった。胸部のタンクと腹部のタンクで、杏奈は宇宙服のバックパックにある循環液再生システムに頼らない状態で、丸一日間生命維持が可能になったのである。通常の装着者は、標準人体単独での生命維持は、240時間可能になっていた。
杏奈の単独生命維持の時間が極端に短いのは、長期装着型宇宙服を脱いでいる時間が、片桐との二人だけの時間に限定され、それ以外は、長期着用型宇宙服を脱ぐことを許されていないのと、彼女が、宇宙服の故障でのバックアップサポートまでの放置時間が、地球上での活動が主なために、それほど長く放置されることがないという点、そして、秘書用サイボーグとしての電子機器を併設して納めるような設計であるための三つの理由によるのであった。杏奈は、通常の長期着用型宇宙服の着用の宇宙飛行士と違い、地球上での長期着用型宇宙服を未着用の姿での生活は、許されていないのであった。唯一許されているのは、片桐のプライベートでの相手をするときのみであった。
次に、谷本は、杏奈の腹部の空いた空間に、秘書業務をこなすための外部コンピューターとのダイレクトアクセスやコンピューター通信網との接続、彼女の記憶や視覚、聴覚、会話記録等のデーター保存、補助頭脳としての記憶領域、彼女の生命維持サポートなどの秘書業務や生命維持をカバーするための大容量のコンピューターが取り付けられた。そして、杏奈の身体の全ての電子機器や機械部品に電力を供給する発電ユニットと蓄電ユニットが納められた。発電や蓄電ユニットも、体内に置かれるものは、長期着用型宇宙服のバックパックに不具合が生じたときや長期着用型宇宙服を脱いでいるときの補助のイメージが強いものであった。
肝臓、膵臓、胆嚢などの特殊な内臓の代替をする人工器官も杏奈の身体の中の電子機器類の空いた空間に収納された。膀胱や腎臓といった血液の老廃物を除去する内臓は、循環液が全ての老廃物を取り除いてしまうので必要がないため、代替器官の人工臓器は、長期着用型宇宙服の装着者にとっては、不用の器官となったのであった。
杏奈の腹部で数少なく残された内臓は、性器と直腸と肛門ぐらいであった。その残された臓器もこれから谷本のメスが入ろうとしていた。
谷本が、杏奈に話しかけた。
「水沢さん、これから、あなたと社長の性生活を充実させる処置を行うわよ。いいわね」
そう言うと、谷本は、杏奈の女性器に手を付けた。
まず、卵巣から、卵子を採取する作業を開始した。人工的に生理を短期間に何度も起こし、排卵を促進して、卵子を多数採卵した。数分に一度起こる生理の時の血液が、淡いピンク色をしていて、杏奈の体内には、本来の赤い血液が一滴も残っていないことを杏奈に実感させた。
採卵された卵子は、冷凍保存され、もしも、杏奈と片桐が子孫を残したいと考えたときに人工授精により、代理の母胎での出産が出来るようにしたのであった。
杏奈の性器は、谷本の手により、採卵が終わると卵巣を除去され、子宮も卵子が着床できないような処置を施された上、性感を増幅すると同時に生理がこないようにホルモンをコントロールするためのコンピューターが子宮の横に取り付けられた。杏奈の性感を高めるために、クリトリスの包皮を切除され、ヴァギナの組織が何度ペニスを挿入されても拡がることがなく、常に締まりの好い状態を保てるように、人工筋肉が、ヴァギナ周辺の筋肉に編み込まれていった。そして、子宮の横に取り付けられた性器をコントロールをするためのコンピューターにより、片桐にとって最適な性器として、杏奈の性器が保てるようなコントロールが行われるようになった。
卵巣の代わりとして、片桐が、杏奈の性器以外の性器では絶対に物足りないと感じるようにするための分泌液を分泌する装置が、谷本の僅かながらの杏奈へのプレゼントとして、密かに取り付けられた。
膣から腹部の廃液タンクに杏奈が受け入れた精液を膣から排出するためのカテーテルが連結された。このカテーテルは廃液タンクの内部の負圧を利用して、杏奈の膣に精液が溜まらないようにするものであった。性器のコントロール用のコンピューターの制御により、男性からの射精が終わるたびに膣洗浄と精液の除去を自動的に行い、常に杏奈の性器を清潔な状態に保つようになっているのであった。
杏奈の性器が何度もの性交に耐えられるようにしたのであった。杏奈の性器は、片桐以外の男性にとっても、一度セックスするともう、杏奈の性器の虜になるような設計がなされていた。
こうして、ほぼ、作り物のようになった杏奈の性器を谷本は、満足げに眺めて、
「水沢さん、私が考えられる最高のセックス専用性器をプレゼントしたわ。片桐社長に心ゆくまで愛されてね」
そうつぶやいて、今度は、杏奈の肛門の処置に移った。
杏奈の肛門は、排便するために残されたのではなく、直腸と共に、アナルセックスのためだけに残されたものであった。彼女の肛門は、片桐のペニスが入る最適のサイズに拡張され、その大きさで緩むことのないようにオーリング状の人工筋肉でその大きさを固定されたのであった。彼女のアナルは、片桐にとって最高の性器になったのであった。そして、直腸も片桐の性器のサイズよりも少し細い状態で保持され、性器挿入時に少しきつい位の最適な挿入感覚と収縮性を保持するように、状の人工筋肉で覆われた。
次に、この収縮をコントロールするための装置が取り付けられ、この装置と子宮横のコンピューターがケーブルで接続された。
杏奈が受け入れた男性の精液を廃液タンクに吸い取るカテーテルが、直腸の片方に取り付けられ、その脇に、杏奈の性器の虜に男性をしてしまう分泌液を合成分泌する装置から伸びたカテーテルが取り付けられた。
次に、谷本は、杏奈の肛門と性器をカバーする特殊樹脂製の自動開閉式のカバーを取り付けた。このカバーは、杏奈のマスターである片桐の静脈マスターキー以外での開閉は不可能であった。
局部洗浄液のタンクが身体に取りつけられ、性器制御コンピューターの制御により、定期的に杏奈の尿道の位置に尿道に代えて取りつけられたノズルにより、カバーの中でヴァギナとアナルの洗浄が出来るようになっていた。
洗浄した廃液は、再びノズルを通じて腹部の廃液タンクに吸収される仕組みになっていた。
こうして、杏奈のアナルは、杏奈の第二の性器として、ヴァギナ同様に谷本の最高傑作品となったのであった。
杏奈は、自分の下腹部の三つの穴が、全て人工のものになり、そのうち二つは、セックスをされるためのものになったのであった。
その上、杏奈の性欲は、性器制御コンピューターの制御により、制御され、長期着用型宇宙服を着用している時は、性欲がゼロになるようになっていて、未着用時は、片桐の持つ性欲コントローラーによって制御されることになっていた。
谷本は続いて、腹部の最後の空いたスペースに、杏奈の身体の体温調節システムを埋め込んだ。杏奈は、体内に電子機器や機械装置がめいっぱい詰め込まれていることにより、普通の人間より発熱量が多いことに加えて、杏奈の皮膚は、汗腺が無くされてしまった上に人工皮膚で覆われてしまうために放熱することが不可能になってしまうため、体内温度調整システムのお世話にならないといけないのである。
このシステムは、発声した熱を電気エネルギーに変換して蓄電ユニットに蓄電すると共に、人工皮膚を人間の体温になるようにするためのヒーターとなっていた。長期着用型宇宙服を着用している時は、人工皮膚への熱の供給を最低限に抑えて、バックパックの放熱システムを通じて外部に放熱されるようになるのであった。長期着用型宇宙服の着用時は、皮膚の体温が宇宙服内の温度を上げてしまうため、その放熱をすることを考えるよりも、人工皮膚に温度を与えないで、直接熱を放出してしまう方が、都合がよいと考えられたからであった。逆に、作り物となったからだとはいえ、人間の体温を持っていたほうが、より、杏奈を感じやすいという片桐のリクエストによるものであった。
杏奈の身体の胴体部分の変更が終了した。
谷本は、腹部を接合せずに杏奈の頭部の処置を開始した。
まず、谷本は、杏奈の嗅覚の剥奪を行った。鼻の嗅覚細胞を全て破壊し鼻の中に生体融合タイプの充填剤を詰めていった。この作業に併せて、鼻の整形を行い、杏奈本来の鼻のラインより高くて鼻筋が通った形に整形していった。この処置によって、杏奈は臭いを楽しむということが出来なくなってしまったのであった。長期着用型宇宙服にほとんどの時間、閉じこめられることになる杏奈にとって嗅覚という感覚は全く不要なものであると考えられたのである。
もちろん、通常の長期着用型宇宙服の着用を行われるアストロノーツに施される処置においても同様の初期の段階では、この処置が行われるのであった。しかし、未着用時が、杏奈のように短い被験者と違い、地球上では、普通の人間と同じような生活を行うことが許されるアストロノーツにとっては、嗅覚の欠如というのは、生活に不具合をきたすということが確認されたため、後のタイプのサイボーグ処置では、人工嗅覚への転換という処置に変更されるのであった。
次に処置されたのが、目の部分である。杏奈の眼球は、眼窩から引き出され、視覚神経から切り離されて、その代わりに人工眼球が視覚神経に取りつけられた。この人工眼球は、高性能デジタルCCDとなっていて、ダミーとなっている瞳は動くことがないような設計になっていた。杏奈の新しい目の性能は、人の目と変わらない性能があったが、人形の目のようにして欲しいという片桐のリクエストにより、瞳が動くことがないような設計になっていたのであった。それでも、充分な視野を確保できるようになっていた。
谷本は、視神経に分岐コネクターを取りつけて、杏奈の耳たぶの裏の部分に取りつけた外部接続ターミナルとをケーブルで結んだ。その上で慎重に眼窩に人工眼球を戻し、動くことがないように固定した。そして、杏奈の瞼と人工眼球の間に透明な高強度樹脂の保護カバーが取り付けられた。その表面は、瞼を開け閉めするのに支障がないように適度の潤滑性が保たれていた。
耳たぶの裏の外部接続ターミナルは、長期装着型宇宙服のフェースプレートから伸びるコードが宇宙服の着用時は、接続され、杏奈の人工眼球での視覚を遮断し、フェースプレートが彼女の
視覚になるようになっているのであった。長期着用型宇宙服のフェースプレートは、大きな画像レンズとなっていて、彼女の宇宙服着用時の視覚となると共に、バックパックのコンピューターから供給される色々な情報がディスプレイされるようになっていると同時に彼女の秘書サイボーグとしての腹部のコンピューターや外部ネットワーク接続時の外部コンピューターの情報を表示したり、彼女がコンピューターとの直接アクセスでワークしている情報が表示されるようになっているのであった。その為、彼女は、コンピューターとのアクセスにキーボードなどを介する必要が無くなるようになったのである。
杏奈に与えられた新しい視覚システムは、杏奈が見たものをそのままデジタルデーターとして、杏奈の体内のコンピューターまたは、長期着用型宇宙服のバックパックのコンピューターにデーター保管できるようになることが可能になっていた。
そして、脳と腹部などの内蔵コンピューターとの接続が丁寧に行われると共に、首筋に外部コンピューターとの接続ターミナルとバックパックのコンピューターとの接続端子が新設された。宇宙服未着用時には、外部コンピューターとの直接の光LANケーブルによるアクセスとなるが、宇宙服を着用している時は、バックパックのコンピューターを介して外部のコンピューターとのLANを組むようになるのであった。
続いて、谷本が、杏奈の聴覚の改造に取りかかった。両耳の鼓膜がこじ開けられて、内耳の聴覚組織が聴覚神経ごと引き出された。そして、長期着用型宇宙服の未着用時に杏奈の聴覚として作動する高性能デジタル集音システムと聴覚神経が接続され、外部との会話を行うデジタル無線コミュニケーションシステムも同時に接続されていった。このシステムにより、宇宙空間や遠距離との交信が可能になるのである。
続いて、杏奈の三半規管に変わって、宇宙空間のような無重量状態でも自分の置かれた位置が解るような絶対的平衡感覚取得システムに交換された。このシステムによって、杏奈は、自分の絶対的な平衡感覚を手に入れると同時に自分が今どこにいるのかを地球上や宇宙空間で把握できる現在位置把握システムが備わることになったのである。杏奈の現在位置は、新視覚システムにディスプレイされるようになっていた。
そして、聴覚神経を電気ケーブルで分岐させ中耳部分に接続コネクターを取り付けるられ、聴覚システムの全てが谷本の手で丁寧に杏奈の耳の奥に再び収納されていった。内耳の接続コネクターは、長期着用型宇宙服を着用しているときの宇宙服の集音システムと接続するためのものであった。
頭部の改造の最後は、口腔部の改造であった。既に杏奈の口は、食べ物を食べるためや、空気を呼吸するためや、言葉を喋るために存在するものではなくなってしまっていた。今の杏奈の口は、ただ、存在するだけのものでしかなかった。
そのような杏奈の口に谷本は、新たな役割を与える処置に入ったのであった。
杏奈の口腔内は、杏奈と膣と同様のひだが形成され、口腔の奥行きが片桐のペニスが勃起した時に丁度すっぽり収まるサイズに調整された。そして、喉仏は切除され、精液を胸部の廃液タンクに吸引するためのカテーテルで、廃液タンクと結ばれた。口腔全体の感度が性器並みの敏感さに神経組織を調整された。そして、歯は、全て除去された上、新に、軟質シリコンの義歯を植え付けられた。この処置は、杏奈がフェラチオを行っている間に片桐に怪我を万が一させるのを防ぐためであった。もう、固形物を咀嚼する必要が無くなっているため、歯の硬度は必要なくなっているのも事実であった。
喉の奥に口腔を洗浄する洗浄液のタンクと洗浄液噴射ノズルが取りつけられた。そして、唾液腺からは、愛液同様の粘度の分泌液が分泌されるようになっており、この分泌液も、杏奈の虜になってしまう媚薬が含まれているのであった。舌は、少し長くされて、異性の身体を万遍なく舐める愛情表現がとりやすくなる様に調整された。新に性器に変更された杏奈の口腔部は、喉元に取りつけられた口腔部性器制御コンピューターで制御されるような処置が加えられたのであった。口腔部性器制御コンピューターは、杏奈の口が理想的なフェラチオを行うように口や舌の動きを制御することが出来るのであった。
谷本は、杏奈の頭部の電子機器や機械から伸びるケーブルを手早く腹部の所定の場所に接続していった。
次に、杏奈の骨をカルシューム素材の本来の物から、物質元素変換器によって、宇宙空間でも脆くなることの無く、しかも、しなやかさのあるシリコンセラミック素材に転換するために、物質元素転換器を杏奈の腹部の骨の露出したところに接続し、骨を、シリコンセラミック主体の物質に変換した。
ここまでの処置が終わると次は、谷本は、彼女の全ての関節に関節の動きをサポートする超小型関節制御用リニアモーターを取りつけていった。このモーターの働きにより、長期着用型宇宙服を着用している時は、宇宙服の重さや不自由さを感じないようにすると同時に少し余計に力が出せるようになっていた。
このモーターの役割は、通常の長期着用型宇宙服装着アクアノーツならこれだけの機能なのであるが、杏奈にはささやかなオプションが追加されているのであった。
そのオプションというのは、宇宙服を脱がされた時に、片桐の持つコントローラーにより、通常の動きに差し障りがないように関節をしておくように作動するところから、関節を杏奈の意志では動かすことが出来ないように負荷をかける状態までの調節が出来るというものであった。つまり、杏奈は片桐の意志によって、人形のごとく勝手にポーズを作られる状態にされてしまうこともあるというものであった。
谷本は、杏奈の身体内部の処置が終了したのを再チェックで確認し、腹部を生体融合接着剤で切開跡が完全に消えてしまうように丁寧に融着した。
「水沢さん、後少しの我慢よ。頑張ってね」
そのように谷本は、杏奈を励ました。これは、谷本自身へのエールが含まれた言葉のようであった。
谷本は、杏奈の身体を理想的な体型に整形していき、バストもいかにも作り物に見えるようなきれいな紡錘形のバストを形作っていった。この杏奈の新しいバストは、その中に性感制御コンピューターと刺激に対して標準人体の20倍の感度を持つように神経を過敏にする装置が入れられていて、コンピューター制御により、宇宙服を未着用の状態のみ、絶大な感度を持つように調整されていた。さらに、杏奈の女性器同様、宇宙服を未着用状態では、片桐の持つコントローラーにより、性感をコントロールされるようになっていた。
最後に、谷本は、杏奈の身体の皮膚を人工皮膚と融合させる処置に入った。頭の上から、脚まで、万遍なく人工皮膚が生体融合接着剤によって貼り付けられた。数時間すると杏奈の身体の皮膚は全て今貼り付けられた人工皮膚と同化してしまうことになるだろう。
杏奈に貼り付けられた人工皮膚も片桐の要望により、光沢のあるラバーとセルロイドが合わさったようないかにも人形のの表面のような作り物の艶を持った人工皮膚なのであった。
最後にアシスタントが、杏奈の頭部にロングの毛髪を植毛し、睫毛や眉毛も人工の毛が移植された。この瞬間、杏奈は、人間ではなく、サイボーグであり人形でもある姿に生まれ変わったのであった。
杏奈は、モニターに映る自分の姿を見て、片桐の愛情を独り占めできる身体になったことの喜びと作り物の身体になってしまったことへの悲しみを味わっていた。それでも、杏奈は、自分が片桐に永遠に愛されることになることの喜びの方が強かったのである。片桐は、普通の生身の女性を愛することが出来ず、人形だけが恋愛対象の特殊な性嗜好の持ち主であったのだ。しかし、片桐は、杏奈に人間の女性としての愛情を感じて、仕事上の秘書としての境界を越えて、人生のパートナーにしようと決断したのであった。しかし、その時、同時に杏奈を人間の女性でそのまま迎え入れることが出来ない片桐の性癖の特殊性から、片桐自身が悩んだ末、杏奈を人形のような女性にして受け入れることにしたのであった。その意味で、片桐が完全に望んでいた最高の女性に杏奈はなったのであった。セックスドールであり、秘書サイボーグである杏奈がここに誕生したのであった。
しかし、片桐の性癖は、それだけではなかった。
片桐は、自分の愛する女性を他人に直に触らせることを許すことが出来ないのであった。そこで、自分の会社が開発した長期着用型宇宙服を杏奈に装着し、杏奈を片桐がセックスドールとして必要とする時だけ宇宙服を片桐が脱がすことが出来、それ以外の全ての時間は、杏奈を宇宙服の中に閉じこめ、他の誰もが杏奈を着説触れることが出来ないようにすることを考えたのであった。
片桐は、秘書が自分の会社の商品の着用者として、PR効果を狙うと共に、全身貞操帯、つまり、ボディーケースとして長期着用型宇宙服を杏奈に装着することを思いついたのであった。だから、杏奈の装着する長期着用型宇宙服は、片桐も生体静脈キーのみでしかファスナーを開けることが出来ない仕掛けになっている特製のものであった。
つまり、これから着用する長期着用型宇宙服を杏奈が着用させられれば、杏奈は、完全に片桐のものになるのであった。
杏奈は、手術が終わり、改めて自分の身体を見つめる時間が出来た。
谷本の怒濤のようなサイボーグ手術によって、自分が生まれてから慣れ親しんだ生身の部分はどこにもなかった。杏奈の今の姿は、まるで子どもの頃に自分が遊んでいた人形そのものであった。杏奈は自分の人形のような身体にある種の陶酔感を覚えて、自分の今の姿にうっとりしていたのであった。
谷本ドクターからの報告を受け、私は、サイボーグ処置室に入っていった。
私が部屋にはいるのを谷本ドクターが確認して、私に近づいてきた。
「片桐社長、水沢さんのサイボーグ手術は成功しました。後は、水沢さんの回復を待って長期着用型宇宙服を装着させるだけです。どうぞ、サイボーグとなった水城主任をご覧下さい。社長のリクエストには全てお答えしています。これが水城主任の身体の長期着用型宇宙服未着用時のコントローラーです」
谷本ドクターはそう言ってから、二つ折り携帯電話型の機械を渡して、私を杏奈のもとに案内してくれた。
「携帯電話のように見えるんだね」
「ハイ、社長が常時持っていられても、不自然がないように工夫しました」
「ありがとう。気を使ってもらって感謝する」
私がそう言い終えて、サイボーグ処置室の隣にあるサイボーグトレーニングセンターに入っていくと、サイボーグ専用調整機に座らされている杏奈の姿があった。
谷本が杏奈の機能の調整を行っている調整機械を操作すると杏奈を拘束している拘束ベルトがはずれた。
杏奈がサイボーグ専用調整機から起きあがって私の方に近づいてきた。
その姿は、人間と言うにはもう程遠い、セミトーランス色のラバー光沢のある皮膚を持ち、頭髪はセミブロンドのいかにも人工毛髪といったロングヘアーであった。
私が、恋愛の対象として受け入れることの出来る人形が、自分の意志で近づいてくるのであった。まさに私が望んでいた、生きた意志を持つ人形であり、理想の恋人であった。杏奈がこの姿になることを選択してくれたことを、そして、その立場を受け入れてくれていることに私は満足していた。私の理想の女性を理想的な人形として生涯、愛していけることの喜びを私は噛みしめていた。
「伸二さん。全て順調に回復しています。生まれ変わった私を気に入っていただけたでしょうか?もちろん、細部にわたって伸二さんを失望させない仕様になっていると谷本ドクターからご説明を受けています。これから、我が社の最新の長期着用型宇宙服の中に閉じこめられて、秘書サイボーグとして、我が社の長期着用型宇宙服の着用実験者として、大半の人生を送ることになるのですが、伸二さんがお許しくださるときのみ、長期着用型宇宙服を着ていない姿を見せられることになるのですが、早く伸二さんにこの姿を見ていただきたくて、谷本ドクターにお願いして、伸二さんを呼んでいただいたのです。仕事の上では、秘書として、プライベートでは、従順なパートナーで、生きた人形ロボットとしてあなたのお側で仕えさせていただきます。よろしくお願いします」
私の耳に杏奈の新しい声が聞こえてきた。その声は、私が官能する理想の声である電子的な人形の声であった。杏奈は、私の理想とする私の私物になってくれたのであった。
「社長。もちろん、夜の営みの時の水沢主任の持ち物は、社長にとっての理想的なものに仕上げてあります。それに、内蔵された感情を制御するコンピューターによって、水沢主任は、社長しか恋愛対象として思考することが出来ないようになっていますし、その感情は、秘書として、パートナーとして、従順に従うことが前提としての恋愛感情に制御されています。それ以外の彼女の意志に制御はもうけていませんから、人間らしさを失うことはないと思います」
谷本ドクターの説明が私に届いた。
私は、杏奈の全ての状態に満足して、谷本ドクターに
「ありがとう。素晴らしいパートナーを作ってもらえて満足している」
と短く言った。
「社長。水沢主任とお二人にしましょうか?性器の具合を確かめてみられますか?」
谷本の勧めに、
「いや、今日はその必要はない。杏奈も長い手術によって疲れているだろうし、私の仕事のパートナーとして早期に職場に復帰させることを優先させて欲しいのだ」
私の言葉に、
「わかりました。水沢主任のサイボーグ体の調整を急ぐとともに、長期着用型宇宙服への封入を急ぎます」
「谷本ドクターそうしてください。杏奈が無事に私の秘書として職場復帰するのを待っています」
「伸二さん。いえ、片桐社長、私は、早くこの身体に慣れて、サイボーグ秘書として、早期に職場復帰するように頑張ります」
「杏奈、早く職場に戻ってきてくれ、それから、いつでも一緒にいるパートナーとしての生活をはじめよう」
「よろしくお願いします」
杏奈の抑揚のない、電子音のような言葉が、私の性欲をさらに刺激した。私は、今この場で、セックスドールとしての杏奈の性能を試したいという衝動があった。その強い衝動を私は、あえて抑えることにしたのだった。私の大事な宝物である杏奈を大事にしたい、ただの宝物ではなく、人形しか愛せない特殊な性癖を持つ私にとっての理想にして最高の女性であり人形である、理想の恋愛対象が杏奈なのだ。だから、あえて、杏奈との関係を大事にしていきたかったのだ。だから、初夜は、杏奈との婚姻届を出して、真のパートナーにしてからにとっておきたかったのだ。 それほど杏奈は私にとって大事な存在になったのであった。
そして、私は、私の欲望を抑え込むことに成功すると次の性癖が心の中で大きくなった。それは、恋愛対象を誰にも触らせたくない、貞操管理を徹底させたい。それを早く行わせたいという願望だったのである。
そのような感情が私に芽生えたのを谷本ドクターは、察知したのだろう。
「水沢主任への長期着用型宇宙服の装着を出来る限り早期に行います。私にお任せください」
「ドクター、お願いします。杏奈は私の公私に於ける大事な存在です。頼みましたよ」
私は、そう言うと、杏奈と谷本ドクターのいる部屋を出て行った。
谷本は杏奈のサイボーグ体の最終調整を行っていた。
杏奈を長期着用型宇宙服に入れていない状況なので、単独体としての杏奈の生命維持の許容時間は24時間以内であった。そのため、あえて杏奈に単独体としての活動を禁止し、サイボーグ専用調整機に拘束する形で行われた。サイボーグ体の調整が終了すれば、長期着用型宇宙服の中での生活になることがほとんどなので、3600時間に一度、長期着用型宇宙服のバックパックに作られた循環液の交換や長期着用型宇宙服の細部のチェックを行うための機械と接続するためのコネクターにケーブルを6時間ほど接続すれば、自由に動き回れる状態で暮らすことが出来るのであった。
もっとも、片桐が24時間以上杏奈を未着用の状態で置くときは、生命維持用ケーブルを杏奈のヘソのところに作られたコネクターに接続し、サイボーグメンテナンス用寝台に24時間に一度、
1時間拘束されることになるのだった。ノーマルの長期着用型宇宙服装着対応アストロノーツは、240時間に一度、2時間の拘束で済むのである。しかし、杏奈の場合は、秘書用サイボーグとしての電子機器が体内にたくさん納められているため、未着用での生命維持の時間が極端に短いのであった。杏奈が、未着用での生活時間を短くしなければならなかったのは、着用状態での生活が、この製品のPRそのものであるため、未着用の時間を考える必要がないことと、片桐の杏奈を自分だけのものにしたいという独占欲からくる要望によるものということもあったのである。
しかし、谷本にとっては、杏奈のサイボーグ体を調整をするのに、杏奈を完全に拘束した状態で行うことが可能なため、非常にやりやすいものであった。
今後のノーマルの着用者もこのように完全に拘束された状態でサイボーグ調整機の一部としての調整が行われることであろう。しかし、このことは、杏奈にとっては不幸なことであった。少なくとも、長期着用型宇宙服の着用前のこの時間は、少しでも人間に近い最後の生活がしたかったのに違いないのに、サイボーグ調整機に縛り付けられたままの囚人生活を送ることになり、自由な日々とは程遠い日々になるからである。
杏奈は、そのことを知って少しの悲しさを覚えた。しかし、彼女の目は、完全に機械で出来た作り物であり、デジタルカメラでしかないため、涙を流す機能なんてどこにもなかったのである。杏奈は、涙を流すことさえ出来ない身体になったのである。もちろん、人形というコンセプトで造りかえられた杏奈の顔は、表情を作ることが出来なくなっていた。従って、笑うとか、怒るといった表情さえも作ることを許されない身体になっていたのである。この点もノーマルの着用者とは、違うところなのである。
ノーマルの着用者は、人間のアストロノーツとして、未着用での生活も想定し、少しの表情を作ることは可能であった。もっとも、目は人工のものになるのは、杏奈と変わらないため、涙は流すことは出来ないであろう事は同じであった。長期着用型宇宙服の着用者たちの目は、物を見るということよりも、記録機械の意味が強かったのである。
谷本は、杏奈のサイボーグ体の調整中、杏奈を人間のように感じられない錯覚に陥ることがあった。それほど、杏奈は、人形に近い存在になっていたのであった。長期着用型宇宙服を着ていない杏奈は、片桐の望むセックスドールになってしまったのであった。たぶん、長期着用型宇宙服を着ているときは、人間か、若しくは、機械と生体の共生体であるサイボーグに感じるのであろうし、秘書としての能力を追求している人間の女性か秘書サイボーグと感じるのであろう。しかし、未着用の杏奈は、人形そのものであった。生身の人間の女性を愛することが出来ない片桐の最愛の婚約者として、当然のことなのであるが、それは、残酷なことなのであった。人間の意志を持ったサイボーグであるのに、人形としか見えない。それが今の杏奈なのであった。
杏奈のサイボーグ体の調節が終了すると杏奈は、自分の身体の機能を谷本から教えられ、その一つ一つを最大限に使いこなせるようになるための訓練を受けた。しかし、使い方の訓練を受けていない箇所がいくつかあった。それは、杏奈の口とアナルとヴァギナであった。この3カ所は、片桐が、実際に使用するまで、試験的にであっても、使用することは認められなかった。この3カ所は、片桐のための物であった。
そのほかのサイボーグ体の機能は、みっちりと訓練を受けたため、杏奈は、10日もするとアストロノーツサイボーグとして、秘書サイボーグとして、全ての機能を何不自由なく使いこなせるようになっていた。サイボーグ体の慣熟訓練の大部分は、サイボーグ調整機からの拘束を外されて行われることが多かったため、サイボーグトレーニングセンターを動く杏奈は、決して自由ではなかった。なぜなら、杏奈のヘソに接続された太い生命維持用ケーブルは、杏奈のサイボーグ体の維持管理のために外すことが許されなかったからである。サイボーグ調整機に拘束されたままの状態で行える限りの慣熟訓練が行われ、それでは出来ない慣熟訓練は、へその緒を付けたままの胎児のような状態で行われたのであった。従って杏奈が行動できる範囲は、生命維持用ケーブルの長さの範囲内であり、常に生命維持用ケーブルを引きずっての行動を杏奈は余儀なくされたのであった。杏奈は、サイボーグ調整機の拘束から解き放たれても、囚人としての生活をしなければならない立場に
変わりなかったのであった。それでも、杏奈は、谷本の指示通りに自分の身体の機能を完全にマスターしていったのであった。
「水沢さん。あなたは私たちが想定したサイボーグ体の機能の全てを使いこなすことが出来るようになったわね。水沢さん、合格よ。慣熟訓練を行わなかった水沢さんの身体の数箇所は、片桐社長の伴侶水沢杏奈として、片桐社長に開発してもらってください。それと、あなたには、まだ筋肉が生体部分として残っているから、長期着用型宇宙服の中に閉じこめられても、トレーニングは怠らないでね」
「ありがとうございます。やっと、片桐社長のパートナーとして、終生お側に居れる資格を持てたと思っています」
杏奈の機械的になってしまった音声が、谷本の耳に帰ってきた。
彼女は、片桐にとってもっとも理想とするセックスドールになってしまい、もう人間であって人間でない存在にしてしまったのだという罪悪感が谷本の心の片隅に芽生えた。それをつみ取るかのように、
「それでは、明日、長期着用型宇宙服の着用処置と使用方法の説明を行います。今日は、サイボーグ調整機で最後の夜を過ごしてください」
谷本は、そう言って、杏奈をサイボーグ調整機に戻るように指示し、杏奈がサイボーグ調整機に横たわると、コントロールパネルをいじり、杏奈の身体を拘束した。杏奈の身体は、その時点で、レストモードに入り、杏奈は、生体部分の休養と機械部分のアイドリング状態に入っていった。
杏奈は、標準人体でいうところの睡眠状態に入っていった。長期着用型宇宙服を装着してからは、特に事前のプログラムの変更を本人か杏奈のコントロール権を持つ人間、つまり、当分の間、片桐と谷本の二人になるのだが、彼らがしない限り、杏奈は、地球時間の7時から25時までの18時間は、生体部分の覚しゅう状態と機械部分の稼働状態を維持するアクティブモードの状態に置かれ、
1時から7時までの6時間は、生体部分の休息状態と機械部分のアイドリング状態の置かれるレストモードに自動的に切り替わるようになっている。サイボーグとして、機械的に生活パターンが繰り返されるようになっていた。人間としてのファジーさを喪失してしまったのであった。
「おはよう。水沢さん。」
谷本の声が杏奈の頭の中に響いた。杏奈がサイボーグになってから、いつものような目覚めだった。もう、杏奈には耳がないようなものであるが、脳の聴覚神経にダイレクトに外部の人間の声がアクセスすることが可能な機能が付け加えられたためであった。杏奈は、自分が生まれてから慣れ親しんだ身体ではなくなっていることに気が付く一日の始まりだった。
杏奈の身体の拘束が解かれた。杏奈がサイボーグ調整機の寝台から起きあがるとそこに谷本が立っていた。そして、その横には、透明のカプセルが運び込まれていた。その中には、ラバーキャットスーツのような薄緑色の長期着用型宇宙服がつり下げられているのがわかった。杏奈は、この宇宙服を人工視覚でとらえ、この中についに入れられるんだと思った。
実は、長期着用型宇宙服の色に関して、今後、杏奈が生涯脱ぐことを許されないで、杏奈の皮膚の一部のように一生付き合っていかなければならない服なのだから、せめて、自分の好きな色にして欲しいと懇願したのであった。そして、その杏奈の願いを片桐と谷本は理解して、想いに答えたのであった。だから、杏奈は、長期着用型宇宙服の出来上がりを見て、満足していたのだった。しかし、今の杏奈には、表情を作ることは出来ない身体になってしまったので、谷本には、杏奈が喜んでいるのかそうでないのかがわからなかった。
「希望通りの色の長期着用型宇宙服で安心しました。うれしいです」
杏奈の機械的な声が、谷本の耳に入った。
「よかったわ。気に入ってくれたようね。安心したわ」
谷本は、そう言いながら、長期着用型宇宙服を透明のカプセルから取り出し、
「水沢さん、これから長期着用型宇宙服の着用処置を開始します」
谷本は、杏奈の傍らに長期着用型宇宙服を持って近づくと、杏奈のへそのコネクターに接続されているケーブルを抜いた。杏奈は久しぶりに、何もつながっていない状態の裸体で立っていた。杏奈は、長期着用型宇宙服に閉じこめられてしまう悲しみより、サイボーグに改造されてから、今まで、着衣を着ることを許されていなかったので、長期着用型宇宙服とはいえ、着衣を着用出来ることのうれしさの方が勝っていたのだった。
谷本がアシスタントに指示を出し、杏奈の身体をラバーシャイン液のついた洗浄クロスで、
まんべんなく拭き清めていった。
杏奈の身体は見る見るうちに艶やかな輝きを増していった。杏奈は、自分の光沢のある身体にうっとりしていた。自分が人形になったことに満足している自分の姿がそこにあった。谷本は、そんな杏奈の身体に、長期着用型宇宙服をスムースに着せられるように、杏奈の全身に潤滑クリームワックスを薄くまんべんなくのばして塗っていった。
次ぎに谷本は、長期着用型宇宙服に杏奈の身体を脚から滑り込ませるように着せていった。この長期着用型宇宙服は、杏奈の顎までをつま先から、指の先までも含めて完全に包み込んでいった。杏奈は、まさに、ラバー製の全身キャットスーツを着せられたようになった。身体の線が忠実に長期着用型宇宙服で再現された。
谷本は、宇宙服の背中にあるコネクタージョイントを杏奈の背中に作られた4つのコネクターと丁寧に重ねてつなぎ合わせていった。杏奈の背中のコネクターバルブは、長期着用型宇宙服のバックパックに接続し、循環液の供給排出、汚れた循環液の排出、杏奈の機械や電子機器部分の動力の供給、杏奈の体内に発声した熱の排出、杏奈の体内のコンピューターと、バックパックのコンピューターの接続といった杏奈の本体と長期着用型宇宙服のバックパックを接続し、長期着用型宇宙服のバックパックを杏奈の身体の一部とするためのものであった。
長期着用型宇宙服の首の回りの肩の部分には、長期着用型宇宙服の付属のヘルメットを固定するガイドレールとヘルメット内の電子機器や機械類とバックパックをつなぐためのコネクターが首の後についていて、そこから、バックパックと接続できるようになっていた。
完全に杏奈の身体に長期着用型宇宙服が、フィットしたのを確認して、谷本は、杏奈の長期着用型宇宙服の背中のジッパーを引き上げた。
完全にジッパーを引き上げるとパチンという音がして、ジッパーのロックが完了した。
これによって、杏奈の着させられた長期着用型宇宙服は、片桐か片桐の許可を受けた状態の谷本にしか脱がせることが不可能になったのであった。
「どう?長期着用型宇宙服の着心地は?」
「何か、見た目より厚い感じですね。それに外部からの感触が全く感じられないですね」
杏奈の抑揚のないロボットのような声が響く。
「水沢さん、その着心地、気が付いたようね。普通の長期着用型宇宙服は、着用しているアストロノーツを、外部環境から隔絶し、宇宙服内の温度を適温に保ったり、過酷な環境から守ると共に、着用者の外部からの感覚を維持するために、メタルラバー樹脂にセラミックチタンが編み込まれた特殊な生地で薄く仕上げられているんだけれど、水沢さんの長期着用型宇宙服は、通常の素材の下に、ラバーウレタンと発泡セラミックの複合素材により、刺激を完全吸収できるようになっているの。それに、メタルラバー樹脂とセラミックチタンの素材も、通常の長期着用型宇宙服の3倍の厚さで、外部からの刺激や衝撃を完全にシャットアウトしてあるの。つまり、宇宙服の形をした全身貞操帯になっているの。社長は、水沢さんが他の人に触られても、絶対にその刺激に対し、水沢さんに感じることのないようなもので、水沢さんの身体を包み込んで、水沢さんを守ることと、社長以外が触れられないようにすることを可能にするように、長期着用型宇宙服を改造した上で、水沢さんの身体を包むように指示を出していかれたのよ。だから、この宇宙服を着ている間は、外からの刺激は何も感じることが出来ないようになっているの。ものを持っても、ものを持っている感覚もないはずよ。さあ、次は、ヘルメットを付けましょうね」
谷本はそう言って、長期着用型宇宙服専用でしかも、杏奈の頭部にピッタリ合わせて作られた宇宙ヘルメットを保存カプセルから取り出す作業にかかっていた。
杏奈は自分の身体の首から下が、外部感覚から、完全に遮断されたのを感じていたいくら作り物の身体になったとはいえ、杏奈の身体は、生身の時と同じように風の感触や物を触った感触、人とふれあったりする感触は、正確に再現され、感覚として、杏奈の脳に伝わっていた。
もちろん、その感覚も、片桐の持つコントローラーによる制御が可能になってはいるのだが、それでも、感覚を失わせることはないだろうと思えた。しかし、この宇宙服の中にいると宇宙服の内側が触れる感覚はあるのだが、それ以外の感触は全て無かった。谷本が介助するために触ったり、服の表面を試しに押したのだが、そう言った感触や圧迫感のような感覚は一切、杏奈に伝わることはなかった。
杏奈は視覚から入る情報と体感する情報の相違に戸惑いを感じながらも、今の自分の状況の可笑しさを感じていた。
そんな、杏奈の元に、谷本がヘルメットのセットを持ってきた。まず、谷本は、杏奈の髪の毛を丁寧に束ねて、ラバー製の薄い緑色のヘアキャップを頭に被せた。丁度、コントなどで使用するハゲヅラの様なもので、杏奈の頭部はスキンヘッドのような状態になった。
通常の長期着用型宇宙服を着用するアストロノーツは、サイボーグアストロノーツへの処置の際に、頭髪から、全ての体毛を永久で完全に除去したままのため、未着用時に自分の気で作成したカツラやつけまつげ、付け眉毛を着用して、通常社会に置いても違和感がないようにするのであるが、杏奈の場合は、片桐のセックスドールなので、人工毛髪を人工皮膚の上から、人工毛根を使用して、植毛しているために、キャップが必要になるのである。ちなみに、通常の長期着用型宇宙服を着用するアストロノーツは、爪も手脚から除去されているのである。何故なら、長期着用型宇宙服の指先は、爪の機能を果たすようにかたくなっているから、宇宙服を傷つけるような爪の存在は、不要なものであった。
脚の爪に関しても、宇宙服を傷つけるという意味で除去されていて、宇宙服の上に装着する特殊なブーツで、爪が無くても平気なような工夫がされているのであった。こちらに関しては、杏奈は、人形に近い存在なので、爪の除去後に、人形の手や足のように、爪の形に人工皮膚が窪んで、色がつけられていた。
谷本は、杏奈のキャップの上から、インナーヘルメットを取りつけていった。杏奈に取りつけられるインナーヘルメットは、視覚保護のためのゴーグルが一体になっていて、顔の目から上の頭部と頭の後がカバーされていた。そして、耳のコネクターと人工視覚関係と人工聴覚関係のヘルメットの装置と接続するアダプターが取りつけられていて、インナーヘルメットを装着されると自動的に、耳のコネクターにアダプターが接続されるようになっていた。そして、バックパックとの接続用のコードが伸びている。このコードをアウターヘルメットに接続するようになっていた。杏奈は、一時的に視覚と聴覚を失った。
次ぎに杏奈は、口にマウスピースを噛まされた。
マウスピースは、デリケートな口の中を保護するためのものであり、杏奈の性器と化した口にとっては傷つかないようにするために特に必要であった。ただし、杏奈にとって、マウスピースを挿入される時に、性的刺激を感じてしまうのであった。しかし、性欲制御コンピューターの働きにより、性的刺激をすぐに感じることはなくなってしまった。そして、顎から下の首の部分を固定するためのコルセットがはめられた。硬質樹脂製のコルセットによって、首を動かすことが出来なくなるだけでなく、口を開けることも出来なくなってしまった。
このコルセットは、地球からの打ち上げの時などに受けるGからの首の保護の目的があった。
そして、最後にアウターヘルメットを谷本は杏奈の頭部に被せた。まず、インナーヘルメットから伸びているコードをヘルメット内部のコネクターに接続し、頭部の前と後に開閉できる仕掛けになっているアウターヘルメットの後部を後頭部に押しつけて、長期着用型宇宙服の方に付いているアウターヘルメット固定用レールに取りつけて後半分を固定し、その上で、前側を蓋をするように後側と合わせた。
そして、肩ののガイドレールと接続固定し、ヘルメットのつなぎ目をロックしていった。アウターヘルメットは、顔やインナーヘルメット、首との隙間を緩衝素材で完全に埋めていて、インナーヘルメットのゴーグル部分には、透明な接合素材により、総合的な視力が確保できるようになっていた。
杏奈の視界は、首を稼働しなくても、360°の視野を確保できると共に、杏奈に必要な情報が
全てディスプレイされるようになっていた。そして、耳の外側の部分に外部集音マイクが設置されていた。杏奈とアウターヘルメットは、インナーヘルメットの仲介を受けて視覚と聴覚が連結される形になったのであった。
しかし、現時点では、杏奈は何も見えないし、聞こえないのであった。というのは、アウターヘルメットの動力は、バックパックから供給されるため、バックパックを取りつけて、駆動開始するまでは、
視覚聴覚も失った状態になっているのであった。杏奈にとって、長期着用型宇宙服の着脱時で一番不安を覚える十数分間であった。
インナーヘルメットは、完全に杏奈の頭部とフィットするように出来ていて、隙間がないし、アウターヘルメットの緩衝材は、杏奈の頭部から首にかけて隙間無く覆われているため、杏奈は完全に長期着用型宇宙服に覆われてしまった状態になった。谷本が、ヘルメットをたたいても、音はするが、その衝撃は、杏奈に伝わることはなかった。アウターヘルメットも、長期着用型宇宙服と同様、特殊ロックにより、片桐か谷本以外には、開けることが不可能になったのであった。
谷本は、手早く、ケースから取り出して、用意しておいた長期着用型宇宙服専用バックパックを杏奈の背中と首にあるコネクターと接続するようにして、背中のバックパック固定レールに固定し、ロックしていった。バックパックは、杏奈の背中にロックされると同時に、作動を開始し、杏奈の身体に電力や循環液を供給し始め、杏奈の身体から、老廃物を除去し始めた。そして、ヘルメットにも動力を供給し始め、杏奈の視覚と聴覚は元に戻ったのであった。
長期着用型宇宙服のバックパックは、杏奈の体内で消費された循環液のリフレッシュを行い、杏奈の身体に再供給する機能、杏奈の身体やアウターヘルメットが必要とする動力の供給が行われた。杏奈の身体の廃棄物タンクに貯められた循環液や精液、老廃物は、バックパックで再処理されてフレッシュな循環液に変換されるようになっていた。
杏奈の体内のコンピューターや生体脳と協調して機能する高速処理コンピューターもバックパックに装備され、秘書用サイボーグとしての杏奈の活動を助けるため、外部のシステムとのLAN接続が出来るようになっているし、杏奈の体内に保存された記録データーを保存する予備ハードディスクになっていると共に、それらのデーターを外部メインコンピューターの記憶分野にデジタル回線やLAN回線で送ると共に、外部データーを取り込むことが可能になっていた。そのコネクターは、杏奈の腹部に取り付けられたフロントパックを開くと、コネクターがあって、そこで、杏奈が自分自身で有線LANに着いては、接続できるようになっていた。このフロントパックには、循環液の再生使用の限界時間である3600時間に一度、循環液の交換やバックパックの電気エネルギー供給装置の補助燃料交換のためのチューブを接続するコネクターが設置されていた。
杏奈が僅かに自分自身で出来る生命維持や仕事のための準備のための作業用につくられた物であった。
バックパックには、杏奈の会話手段であるコミュニケーションシステムのメインシステムや杏奈の体内の熱を処理するシステム、宇宙空間での自由な作業を行うためのイオン推進システムが内蔵されていた。このバックパックは、流線型をしていて、これらの機能を全て内蔵しているにしては、コンパクトに設計されてはいたが、かなりの重量があったため、杏奈は、バックパックとフロントパックを取り付けられたときによろけそうになった。
しかし、身体の関節の動作補助モーターの働きにより、倒れることもなかったし、すぐにその重量にも慣れてしまった。フロントパックとバックパックの間をベルトとチューブが結ばれていて、これらの付属品を固定するための物になっていた。
次に、谷本が、杏奈に取り付けたのは、硬質樹脂とセラミックの複合体で形成された膝丈の長期着用型宇宙服専用ブーツであった。このブーツは、着用者である杏奈の足元の保護を目的にしていると共に、どんな足下の状況にも対応して、最適な力を地面に加えられる装置が付いている靴底によって、杏奈の作業をサポートするようになっていた。無重量の宇宙空間や宇宙船内の作業のために特殊な吸盤も靴底に取り付けられていたのである。
また、杏奈の両手には、柔軟性を持つ樹脂とセラミックの複合素材で出来た肘まであるグローブがはめられた。
このグローブは、爪のない長期着用型宇宙服の装着者にとって、標準人体の手先と同じように爪と同様の役割をする機能やどの様な物質も落とすことなく持つことが出来るような吸着盤が付いているのであった。
このブーツとグローブも、杏奈に取り付けられた物は、ロックが付いていて、片桐か、片桐の許可を受けた状態の谷本以外脱がせないようなロックがかかっていた。
ブーツとグローブはきれいな白色をしていて、長期着用型宇宙服の薄いグリーンと調和の取れたデザインになっていた。
杏奈は、この時、全身を包み込む宇宙服という密閉性の高い全身貞操帯の中に閉じこめられたのであった。今後は、ほぼ全ての時間をこの全身貞操帯としての長期着用型宇宙服の中で過ごし、片桐が望む時のみ、宇宙服を脱がされて、セックスドールとしての裸体を片桐のためにだけさらすという人生が始まったのであった。
もう、片桐に捨てられたとしても、生涯、この長期着用型宇宙服を着用し続けないと行けない運命なのであった。片桐に捨てられた時は、長期着用型宇宙服を脱ぐことは完全になくなるはずであった。
杏奈は、谷本に、
「ありがとうございます。素晴らしい宇宙服にはいることが出来て幸せです」
そう言った。
そして、その声は、長期着用型宇宙服の音声発声用スピーカーからの発声であり、その声は、杏奈の生まれながらの声に合成されたもので、人間としての杏奈の声らしいものになっていた。宇宙服を着ている時の声は、秘書として、広告塔としての活動のために、人形としての声ではなく、人間としての杏奈の声に戻されることになっているのであった。
コミュニケーションシステムを使用しての無線から聞こえる声も、杏奈の本来の人間らしい声で
話せるようになっていた。
谷本は、何故か杏奈の本来の声と抑揚を聴けて、ホッとした気分であった。
しかし、片桐の所有物としての宇宙服を脱いだ杏奈は、人形らしい合成音と抑揚のない声になっているのは、何とも言えないことだと思った。
杏奈は、この後、10日間、宇宙服を着せられた身体になれるための訓練を施されることになったのであった。