改め言うまでもないが、皇位継承問題の解決については、
皇室ご自身のお考えを最も尊重すべきだ。
皇室のお考えとは、突き詰めると天皇陛下
ご自身のお考えに他ならない。しかし今の憲法において、皇室典範の改正はもっぱら
「国会の議決」によるとされている(第2条)。
その一方で、天皇は「国政に関する権能を有しない」とされる(第4条)。その為に、当事者でいらっしゃる天皇陛下をはじめ
皇室の方々が、皇室典範の改正、皇位継承問題について、
直接ご自身のお考えを公然と表明することができないという、
甚だ不合理な現実がある。勿論、天皇陛下が皇位継承問題の解決について、
ご自身のお考えを持っておられないなどとは全く想像できない。
明確なお考えを持っておられることは疑う余地がない。
従って、真に皇室を敬愛する国民であれば、
憲法による制約の中での窮屈なご言動の端々から
滲み出る天皇陛下のご真意について、
虚心に謙虚に拝察する心構えが大切だ。以下に、陛下のご真意を拝察する上で
決して見逃してはならない最近の報道を、いくつか紹介しておく。先ず西村泰彦·宮内庁長官の発言について、
毎日新聞が以下の報道を行っている(6月12日配信)。「安定的な皇位継承に向けた皇族数確保策の与野党協議について、
今国会での意見集約が見送られる見通しを受け、
宮内庁の西村泰彦長官は12日、定例記者会見で
『宮内庁としてはコメントすべき立場にないが、
皇族方の減少は大きな課題であり、それを踏まえた
議論はしっかりと進めていただきたい』と述べた」このようなテーマについて、宮内庁長官が独断で
発言することはあり得ない。
しかも「コメントすべき立場にないが」と断りながら、
敢えて「議論はしっかりと進め」るように注文を
つけている辺り、天皇陛下ご自身のお考えの
かなりストレートな表明と受け取るべきだ。「立法府の総意」を取りまとめるプロセスで、
女性皇族がご結婚後も皇族の身分を保持されることで、
一旦はギリギリ合意が成立したにも拘らず、
立法府(国会)とは立場が異なる政府サイドの
人間である山崎重孝·内閣官房参与が、
何ら民主的な正当性を持たない形で介入し、
結果的に自民党の麻生太郎·最高顧問が
「ちゃぶ台返し」をして、これまでの積み重ねを
全て水の泡にしてしまった。そのことに対する 、天皇陛下の強いご不満と
危機感が表明された、と拝察できる。
具体的には、麻生·山崎両氏に対する厳しい
ご叱責と受け取るべきだろう。
叱りつけられた本人たちは、そのことに気づいているのか、どうか。又、天皇陛下はこのところ、お住まいの御所において、
大阪·関西万博への参加の為に来日する各国の元首と、
相次いでお会いになっている。例えば5月27日、アイスランドのトーマスドッティル大統領と
お会いになった。
その時のやり取りが次のように報じられている(日本経済新聞5月27日配信)。「アイスランドは世界で最も男女平等が進んでいるとされ、
宮内庁によると陛下は『どうして平等が実現されているのですか』
と尋ねられた。
大統領は『長年積み重ねてきた努力の成果』などと答えると、
陛下はうなずきながら聞かれていたという」6月11日にフィンランドのストゥブ大統領とお会いになった時にも、
次のようにお尋ねになったという(FNNプライムオンライン6月11日配信)。「フィンランドにおいては男女平等の分野で
世界をリードされていますが、どういう工夫をされていますか」
更に同13日にコソボのオスマニサドリウ大統領と会見された時にも、
次のように尋ねられたという(FNNプライムオンライン6月13日配信)。「国造りのためには女性の活躍が大切だと思いますが、
大統領はどうお考えですか」
天皇陛下とお会いしたこれらの元首たちが、
先頃、日本政府が女性差別撤廃条約に基づく
国連女性差別撤廃委員会からの勧告に反発して、
同委員会を拠出金の使途から除外するなどの
“報復措置”をとった事実を知らないはずはない。
そのような政府の頑なな姿勢と、陛下ご自身のお考えとの
ギャップがあまりにも激しいので、誰もが驚いたのではないか。しかも天皇陛下のこれらのご発言は丁度、
上記の女性皇族のご結婚後の身分保持への合意が、
自民党によって大きく裏切られた時期と重なる。額賀福志郎·衆院議長らの仲介で自民党と立憲民主党が
一旦は合意に達し(5月27日)、それを前提に衆院法制局が
「取りまとめ」案を作成したものの、
それが官邸官僚(山崎氏)の越権介入によって反故にされ
(5月30日)、そのことを事後に知らされた
立憲民主党の野田佳彦·代表が記者会見の場で、
自民党の背信的な「ちゃぶ台返し」を非難した(6月6日)
という流れだ。この経過と突き合わせると、特に自民党のちゃぶ台返し後に、
「男女平等」「女性の活躍」というご発言を
繰り返された事実は看過できない。これらのご発言が宮内庁からわざわざ公表されたこと自体にも、
明確なメッセージ性を読み取る必要がある。▼追記
今月2本目のプレジデントオンライン
「高森明勅の皇室ウォッチ」は6月29日に公開。
▼高森明勅公式サイト
https://www.a-takamori.com/
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