国道318号線と国道501号線が交わる十字路の一角。二つのブランコと小さな滑り台だけが設備されている東公園には、とある噂がまことしやかに囁かれていた。

男性用トイレに抜きを行ってくれる女が現れる、と。

夜更けも夜更け、日も跨ぐか跨がないかといった時間帯。静静と構えられた公衆便所の個室トイレは片方が施錠されており、もう片方が解錠されている。裡に進み、壁とされた仕切り板を窺ってみれば、ぽっかりとくり抜かれてしまった穴が。そこに陰茎を挿れると、あろうことか口淫で精蟲を搾り取ってくれるという。

しかも、金を渡せばというわけでもなく、勃起から射精までタダだというから驚きだ。ピンサロで大枚はたくより、酔狂に嬉嬉として搾り取ってもらうほかない。

残業後、聖地に赴いた。

淋しげな園地の端でポツンと建っていた公衆便所。あたりを窺ってみてもひとけはあまり感じられない。半信半疑、くだらない噂に駆られてしまったか、と頭をもたげながら男性用トイレに進んでいく。

一歩、脚を踏みいれると公衆便所独特の酸い臭いに顔を歪まされた。ブルーライトに照らされた裡を進んでいくと、噂通りに二つの個室トイレが並んでいた。しかし、個室トイレの鍵はおろか、扉すらも開け放たれており、痴女が待ち構えているといったことはなかった。

はぁ、とため息がこぼれ落ちる。やはり、噂は嘘っぱちだった。

踵を返そうと体を翻したが、念の為、抜き穴をたしかめておこうと個室に進み、鍵を掛けた。経年劣化でいたるところがひび割れた便器。散り散りに千切り捨てられたロールペーパー。壁面にいたっては稚拙な落書きが所狭しと並べられて、ヤンキーどものキャンバスと化している始末だった。

お世辞にも居着きたいとは思えない僻地。しかし、颯爽と去ろうとした俺の目の端が目当てのものを捉えてしまった。

穴。

個室と個室を隔てていた仕切り板に、意図的でなければ説明がつかないほどの、直径9センチメートルほどの壁穴が、ぽっかりとあいていた。

淡淡と刻んでいた鼓動が途端に走り始める。蹲み込み、穴を詳しく窺ってみれば、隣の個室に誰も居ないことがよくわかる。宝探しでも達成したみたいに心を弾ませていると、公衆便所の表から音が聞こえてきた。カツカツとタイルをたたく快活な音だった。

俺の頭には、ピンヒールで男性用トイレを歩いている女の姿が浮かんでいる。

其の場で無意味に立ちあがり、身を強張らせる等してしまう。音が扉を過ぎていくと、ガチャンッ、と鍵の掛かる音がして、またカツカツとタイルをたたき、服の擦れる音が聞こえる。固唾が喉を通っていく音すらも響いてしまいそうな静かなトイレで、俺は、恐る恐る蹲み込んだ。

(っ゛......!?)

さっきまで誰も居なかったはずの穴の向こうに、女の小さな口が上顎と下顎にねっとりと糸を伸ばして、こちらの理性を煽っていた。まさに、愛液を垂らし、雄棒を誘い込まんとしている陰部のそれだった。

(マジだっ......!!マジだったんだっ......!!あの噂は......!!)

粛粛とした公衆便所に尾錠の音が渡っていく。トランクスごとおろされたスラックスは小汚いタイルに身を縮めた。

ありえないほど勃起している。

二十余年、連れ添ってきたチンポは見たこともないほど腫れ、感じたこともないほど苦しかった。興奮が心音に変わり、鼓膜がジンジンと響いて、じぶんの息があがっているのにも気づけない。

(いれるっ、いれるっ、いれるぞっ゛......!!)

恐る恐る歩き進み、待ち受けた抜き穴に腰を突っ込む。外気に触れていたはずのチンポが、ちゅぽぽっ、と音を鳴らしながら温かいぬめぬめに包まれた。

「ぉ゛ぉっ、、、ぉ゛っ、、、ぉ゛ほっ、、、」

引き摺り出されるように情けない喘ぎ声が咽び出る。

肉棒にフィットさせるため、窄められたであろう頬の肉がチンポの側面を包み込んで、裏筋から尿道にかけてを舌が這っていく。

高まった感度に挿れただけでチンポが跳ねあがって上顎や舌の上に当たると同時に腰が引けた。

(やっべっ゛......きもちよすぎるっ゛......!!)

穴に向けて下ろしていた腰を支える脚がガクガクと震えていた。

もう一度、穴に挿れる。

怖がりで前に進めないチンポを舌を使って根本から亀頭へと撫でるように舐めてきて「こっちだよ」とリードしてくれているような気がした。

その誘導の通りにゆっくりも引けていた腰を押し込んでいく。

「ぉ゛ぉ、、、ぉ゛っ、、、ぉ゛、、、っ゛ほっ、、、」

膣壁のように窄められた頬を押し拡げながら、折り曲げられた舌先で裏筋と尿道を責め立てられ、悶絶しながら腰を進めた。

息を荒げながらなんとか腰を挿れる淹れ切ると、ぐちょ、と亀頭が行き止まりに当たる感覚がした。

喉奥に衝突している。

俺のチンポが全部女の口に入っている。

根本でぱっくりと口を閉じられて、舌や頬や上顎がどんどん密着していった。

亀頭、裏筋、カリ、竿、根本、すべてが温かいぬめぬめに包まれてふるふると身震いをかましながら排泄欲がふつふつと湧き立った。

続けて、頭が動き始める。

分泌された唾液がチンポをまとわりつけて、唇がチンポを摩擦するたびにぐちょぐちょと猥音を立てていた。

頭を引くときは吸い込み、頭を入れるときは吸い付く。

ねっとりとねちっこくチンポを味わい尽くすようなフェラに体が震えて壁がガタガタとうるさかった。

穴に挿れて1分も経っていないというのに体の奥底から湧いてくる射精感。

「ぁ゛ぁ......やっべぇ゛......いっくっ゛...いくっ゛いくっ゛いくっ゛......!!」

この幸せな時間をまだ終わらせたくないとなけなしの理性を奮い立たせた俺は、括約筋をグッと締め上げ、慌ててチンポを引き抜いた。

吸い付いていた唇が、ぢゅっぽっ、と音を立ててチンポを離した。

根本から先っぽまで、泡立った唾液が蹂躙している。

チンポは無意識に、ビクンッ、ビクンッ、と小刻みに跳ねあげ、終わらせまいと襲い来る快感に必死に耐えていた。

その姿が余計に射精感を助長させた。

「んふふっ......💕」

穴の向こうで射精しまいとビクビクと震えている情けないチンポの姿を見ているのか、壁の向こうから嘲笑するかのような女の声が聞こえてきた。

その声で反骨心が湧き立ってきた俺は、ビクビクと震え続けるチンポを根本で持ち直し、穴で待ち受ける女の口に向かって勢いよく突き刺した。

「ぅ゛ぉ、、、ぉ゛っ、、、っ゛ほぉ、、、」

一時の感情でむざむざとチンポを突っ込んだことを後悔させるように、下劣に、卑猥に、音を立てながらチンポを啜り上げられた。

ビクンッ、ビクンッ、ビクンッ、と断末魔のように跳ねあがる。

身震いを頬で感じ取ると頭の振りを止めて、いつまでも射精させないように、焦らすように、裏筋をチロチロと舐められる。

それを何度も繰り返されていると射精管理をされているようで、また反骨心に火が付いて今度はこちらから腰を振り始めた。

「くそっ゛......!!この淫乱女がっ゛......!!」

激しく動く頭に併せて腰を振り翳した。

ぶっぽぉ゛ぶぽっ゛ぶっぽっ゛ぶぽっ゛......!!

「ぅ゛っ、、、くっ゛ぅ、、、ぁ゛ぁ、、、やっべぇ゛、、、」

しかし、膣に陰茎を挿れるセックスとは違い、口にチンポを抽送するだけの作業はこちらにトぶような快感を残すばかりで、女になんの影響も与えない。

自ら死に向かっていくような恐怖感に襲われながらも、動く腰を止められない奇妙な感覚に襲われていた。

チンポの根本に浮遊感が起こり始め、射精が近いことを予感させる。

唾液塗れの摩擦音と俺の吐息が静かなトイレに響き渡る中、逝きかけのチンポが限界を迎えた。

「射精すぞっ゛ぉ......!!射精すぞっ゛射精すっ゛......!!うっ゛...くぅ゛っ......!!射精る射精る射精る射精る射精るっ゛......ぃ゛っっっ.........くっ゛!!!」

トぶような射精感を伴ったオーガズムに頭がチカチカとなり、壁にもたれかかりながら残尿をひり出すようにチンポは収縮を続けていた。

精蟲を吐き出すとともに、段段と萎れていくチンポが波打つ動きの喉に締めあげられる。

(し、搾りながら飲まれてるっ゛ぅ......)

ゴクッ、ゴクッ、と喉を鳴らすたびに、さっきまで俺の陰嚢で蠢いていた精蟲が女の胃に進んでいくのがわかる。

射精のポンプ運動が止まり、威勢も尊厳もなくしたチンポは、チュヂュッ゛チュズズズズッ゛と竿も亀頭も吸いあげられながら、チュポンッ゛と解放された。

腰砕け、あまりの脱力感に脚は言うことを聞かなくなり、後ろの便座に項垂れてしまう。言うまでもなく生涯はじめての超快感。異常なシチュエーションと一級品の舌の妙技に意識は朦朧とし、隣の淫乱を犯してやろうとも思えなかった。

「んふっ......ごちそぉさまっ......💕」

艶っぽい声と一緒に隣の個室トイレがガチャリと音をたてた。また、カツカツと快活な音が渡っていく。慌てて起きあがり、公衆便所を出ていったがすでに女は消えていた。

次こそ、あの女を犯してやる。