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残間 |
『グレ』を開店する時は、 光安さんはどういう状況だったんでしょう。 |
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光安 |
その頃、私は銀座の『ピロポ』という店の ナンバー2でした。それでナンバー3の娘を誘って 独立することにしたんです。 店の場所も決めて人も雇って、 いろいろと動いていたんですね。 ところが「一億円」を出すと言ってくれていた スポンサーが、事情が変わって 急にお金は出せないと………。 |
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残間 |
では、いったん延期? |
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光安 |
いいえ。周りにはやるって言ってましたし、 プライドが高かったせいか(笑)、 どうしても「ダメになった」とは 言えなかったんですね。 それで当時、1200万円貯金がありましたから、 それで何とかやることにしました。 |
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残間 |
全然足りないじゃないですか。 |
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光安 |
もともと一億円なんてかからないんですよ。 店の保証金に2500万円、内装費に1200万円。 後は人件費ぐらいですから。 |
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残間 |
でもお酒の仕入れとか、いろいろあるのでしょ? お酒も高級なものをお出しするんでしょうから。 |
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光安 |
そんなの全体から見たら微々たるものですよ。 水みたいなもの。 だから"水商売"って言うんですから(笑)。 |
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それで開店資金は借金で賄ったんですが、 今度は一緒にやるはずだったナンバー3の娘が、 店の引き止めにあって「やっぱりやれない」と。 慌てて連絡を取ろうとしたんですけど、 もう行方不明なんですね。 それが開店一週間前。開店までで3キロ痩せました。 でも後々考えると、この苦労が良かったですね。 特にお金の苦労。 他人のお金で軽い気持ちでやっていたら、 あっという間に潰れていたと思います。 最初の3年ぐらいは常に資金繰りに 頭を悩ませてました。 |
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残間 |
開店当初の『グレ』は どんな雰囲気だったんでしょう。 今みたいに各界から 著名な方が訪れていたんですか? |
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光安 |
いいえ。 やはり前のお店のつながりが中心でしたね。 店の女の子は17~18人雇っていたんですが、 何しろ資金がないので他店から引き抜けないんです。 で、素人の娘ばかり。 それで素人ですから店で着る服がないわけです。 だから最初の頃は制服を着せていましたね。 |
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残間 |
へえー。何か銀座っぽくないですね。 |
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光安 |
ところがこれがフレッシュだと受けたんです。 応援してくれる方もずいぶん出てきて。 |
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残間 |
今や『グレ』に行かなきゃ男として一人前じゃない、 というイメージすらあります。 お客さんが変わっていったのは、 いつ頃からだったんでしょう。 |
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光安 |
しばらくしてグラフィックデザイナーの 長友啓典さんが来てくれるようになったんですが、 あの方がいろんな業界の人を連れてきてくれたのが、 きっかけでしたね。 長友さんは、一時は毎日のように来ていました。 |
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残間 |
グラフィックデザイナーで、 毎日銀座でお酒が飲めたなんてすごいですね。 |
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光安 |
(笑)さすがに毎日いらっしゃるので、 長友さんだけは"長友値段"を設定しましたけどね。 |
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残間 |
私も何度か『グレ』にお邪魔しましたが、 『グレ』のお客さんって、 店の女性目当てというより、 店に来ている他の男性を横目で見ながら 男を磨くというか、 そんな雰囲気があると思うんです。 男の美意識というか、 美学が出るところじゃないですか。 |
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光安 |
特に昔の銀座はそういう場所でしたね。 お酒を飲みますから、その方の地が出ますし。 ただ、銀座も変わりました。 財界の方もあまり夜遊びをしなくなって。 皆さん、疲れているんでしょうか。 夜遊びって体力いりますから。 |
(つづく) |
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