個性『RTA』があまりに無慈悲すぎるヒーローアカデミア   作:ばばばばば

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最速ヒーローRTA_113925時間24分51秒_Part7/11

 

 

<そっちは順調?>

 

「かなり上手くやってるよ。表のヒーローは結構苦労してるけど皮肉だね。人目を気にしなくていいこっちの方が計画の進みがいいみたい」

 

<今はヤクザの締め付け厳しいって聞くけど、どこも不景気って感じなのかなぁ……>

 

「ヤクザ組織なんてほぼ摘発されたからね、残った組織も公安の監視付きで細々としたものだよ」

 

<人に迷惑かけないなら何でもいいよ。あぁ、必要なお金は送っておいたから、会社の方の“私”様様だね>

 

 

 車内で話をつづけながら、そのスピードが緩められた時、私は顔をあげて窓を見る。

 

 古風な日本家屋、指定敵団体「八斎會」

 

 既に絶滅の憂き目にあっているヤクザではあるが、他の犯罪組織との交流の多さもあって、裏社会においては今だ根強い影響力を持っている。

 

 

「こっちだ。案内する」

 

「あぁ、よろしく頼むよ」

 

「……チッ、いいからこい」

 

 

 体をまさぐられながら、隠し持ったものが無いかを確認され、その門を通る。

 

 長い廊下を歩かせられながら、案内役の男がこちらに目を向けず、嫌悪を滲ませながら悪態をついた。

 

 

「俺はお前みてぇなヒーローが気に食わねぇ……。暴排条例とヒーロー共の取り締まりのおかげで俺達ヤクザは死に体だ」

 

「そういう世の流れだからね」

 

「おまけにそれでヤクザ辞めても元ヤクザの肩書のせいでロクな仕事もねぇから結局は犯罪に手を染める。お前らは見えない部分を切り捨てていい気になってる偽善者だ」

 

 

 個人的な感情で言うなら彼らヤクザに対する好感はない。

 

 社会のはみ出し者の受け皿という理論も言われてはいるが、緩やかに絞め殺されていくのがこのヤクザという界隈の現実だ。

 

 今のヤクザという世界にそういった受け皿としての機能はもはやない。

 

 

 

「だがな、それはまだいい。この道を選んじまったことに後悔はねぇ……。だがそんなヒーロー様が、……だ。世間様にいい顔をしておきながら俺達ヤクザに金出して甘い汁をすすりてぇだ? 吐き気がするぜ。俺に言わせればテメェみてぇな道理をわきまえない屑が一番嫌いだね」

 

「正論だ。たのしい世間話をどうもありがとう」

 

 

 

 現在のこの八斎會という組織は、土木建築、運送に的屋といった昔気質の極道という体でいる。

 

 今の悪党はわざわざヤクザなどにはならず、もっと地下に巣くう。わざわざ悪党であることを喧伝せずに人々を狙う。

 

 

「でもね、そんな屑が容易に近づけてしまうのが君達ヤクザという組織だ。君たちの組織力は本当の悪人には魅力的に映るだろうね」

 

 

 社会は悪を定義する。

 

 そこから外れる存在は必ず生まれる。

 

 どうしようもない事実だ。

 

 

 例え彼らが社会に馴染めないなりに集まる寄合だったとしても、一滴のドス黒い悪意が交じれば、その脅威は計り知れない。結局私達の社会はいまだに必要悪を御せてなどいないのだ。

 

 

 私の言葉に舌打ちで返す案内の男はある一室の前に立つ。

 

 

組長(オジキ)……、連れてきやした」

 

 

 部屋の前には幾人もの強面の男たちが詰めており、自分の後ろを挟むように座っている。

 

 

 部屋の奥には痩せた男がいた。

 

 それでもその節だった体と堂々とした風格を見れば一角の人物と思われるが、目にある意志だけ力を持ち、体は明らかに病を患ったようなやせた体は今の極道のありようを映してるようにも私は思えた。

 

 

「おう、アンタがヒーローのくせに俺達みたいな日陰者とつるみたいって奴か……」

 

「えぇ」

 

 

 私は頭を下げて挨拶をする。

 

 今の私はヒーローコスチュームではない。そしてもちろん生身でもない。

 

 わざわざヒーローの姿をして堂々と組に出入りすることも、幼い姿を晒すことも論外だ。

 

 

 顔をあげるように言われ、頭ではない作り物の顔を私はあげる。

 

 お金にものを言わせて人に精巧に似せた新開発の着ぐるみ、それが今の私の姿だ。

 

 

「なんでも俺達の伝手と人手を使いたい……、そういう話だったな」

 

「えぇ、私はヒーローですが建設会社も経営してましてねぇ、やはり地元に根差した組織との繋がりがあるとないとじゃ話の進みが違いますから」

 

 

 ここに来た表向きの理由は会社としての話、表の顔としての土建屋もやってる彼らへのあいさつだ。

 

 

「立ち退き交渉、土地の売買、接待、建設、結局ものを言うのは人だ。あなた方をエキスパートと見込んでビジネスパートナーになりたいんですよ」

 

「そりゃ別に構わねぇ。うちの会社に仕事の話を振ってくれるってんならありがてぇ話だ」

 

 

 平坦な声で話す男は、そこで一旦話を切ってからこちらをじろりと見る。

 

 その目の力はこの場の空気を一段冷やし、鋭利なものとした。

 

 

「お前さん、最近ずいぶんと羽振りがいいらしいじゃねぇか。金融、飲食、建設、人材派遣、

ウチのシマでアンタの会社の名前を見ねぇ日はねぇよ」

 

「えぇ、おかげさまで」

 

「うちから飛び出したヤンチャ共や破落戸にもずいぶんと気前よく大枚叩いて人を集めてるみてぇだが……、どういうつもりだ?」

 

「自由市場です。ノウハウがあるものを雇うのがそこまでおかしいことでしょうか?」

 

 

 場の空気が徐々に不穏なものとなっていく。後ろの男たちの衣擦れ、片足を立ててこちらににじり寄る気配を感じる。

 

 

 八斎會の現組長は任侠、つまりは弱者による相互扶助を掲げている。

 

 訳有って戸籍を持たない者の就労の仲介、売春の斡旋や賭博の元締め、興行など、国が公に介入できない闇の部分を取りまとめて管理する。

 

 だが、その中でもさらに外道を働く者達がいる。

 

 人身売買まがいの違法就労、売春の強要、暴利な闇金融、覚醒剤の密売。

 

 彼らに任侠などという道理はない。

 

 

「そもそも彼らは破門されてあなた方とは関係ないのでしょう?」

 

「あいつらは人の道を逸れた。関係ねぇが、お前の目的次第じゃ見過ごせねぇ」

 

「そうです彼らは外道です。社会からあぶれた中でさらに道を外れた者達です」

 

 

 今の彼らヤクザに外道を管理する力はない。私は彼らを時には金で、時には暴力で屈服させてきた。

 

 

「はい、私はあなた方の()()()()を使って彼らを管理したいんですよ。あなたがそれを放棄したんです。拾ってはいけない理由はありますか?」

 

「何故そんなことをする……?」

 

 

 

「あなた方がそんなことも出来ないからです」

 

 

 その瞬間、周囲から怒号が飛び交う。

 

 

「やめろ」

 

 

 たった一言の小さな声。

 

 だが大の男の心胆を冷やす、地響きのような響きを持つその声は場を静まり返らせる。

 

 

「これは悪い話じゃない。経営規模は増加させる。もちろん実を伴う利益を約束します。あなた方のプライドも守る。私の話を受ければ八斎會の復興も――」

 

「金だの面子だのそんな話は知ったこっちゃねぇよ」

 

 

 私の言葉を一刀両断した彼はこちらの全てを透かすように見つめる。

 

 

「俺が知りてぇのはお前さんだ」

 

 

 ゆるりと肩を回して肘をついて身を前に乗り出す。

 

 

「そこまでのことを考えてお前さんは何が欲しいんだ」

 

 

 たった一欠けらの嘘も許さないという力強い目、それは生半可な答えを許さない圧を伴っていた。

 

 その言葉に私はしばしの沈黙の後に答える。

 

 

「未来です」

 

「……ほぉ? それはどういう――」

 

「二人きりにさせて下さい。そしたら全てをお話します」

 

「親父相手にふざけてんのかてめぇ!!」

 

 

 またも一瞬で暴発する周囲、その中で誰よりも早く立ち上がり、こちらに掴みかからんとする少年がいた。

 

 治崎廻(ちさき かい)

 

 未来においての死穢八斎會の若頭。

 

 その過ぎた組織への愛から、未来で個性社会の破壊と裏社会の支配を目論む危険なヴィランとなる。

 

 

「いい廻、下がれ。俺はコイツの口から聞いてみてぇんだ。全員下がれ」

 

 

 そんな彼を目で制し、面白そうに男は笑う。

 

 

「親父に何かあったら、死ねるなんて甘い考えを持つなよ? テメェに地獄すら生ぬるい苦痛を与え続けてやる……!」

 

 

 私の提案にのった彼は部下を下がらせる。

 

 

 

 そして私は全てを見せ、同時に全てを話した。

 

 

 

 彼は初めに驚き、そして話を幾つか交わすと最後には豪放に大笑いをして部屋の戸を開け放つ。

 

 

 

 

 

「おめぇら、俺はこいつの話に乗った!!」

 

 

 突然の宣言。襖の前で、臨戦態勢を取っていた者達は驚きのままその場を動けない。

 

 

「廻! テメェはコイツの補佐につけ! まぁ見張りみたいなもんだ。任せたぞ!」

 

 

 突然の声にうろたえる少年。

 

 その様子を見てもう一度大笑いをした組長は、動揺のまま質問攻めをする少年の頭をガサツに撫でるとその目を細めた。

 

 

 

「なぁに、ガキ共の未来は守りてぇと思ったのよ」

 

 

 

 

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