こうして開始された大作戦。一体どんな仕組みだったのか、梨花はどこに行ったのか──これはその、種明かしである。
作戦開始の号令は魅音から梨花に、暗号を使って伝えられた。
「
その後パレードの準備を終えた村人の一人が、軽トラの荷台に乗せたひっきー人形を撫でながら、暗号で梨花に報告する。
「
そして次に、沙都子からの報告が魅音になされる。
「
そう言って沙都子は電話口から、モニターが外された居間のテレビを見やる。
元々、沙都子の実家から持ち出され、ずっと上田が修理をしていたブラウン管テレビだ。テレビ自体は結局直らなかったが、中の部品を省けば子ども一人が隠れるほどのスペースを確保できた。そこに沙都子が隠れる事になっていた。
続けて沙都子はまた、魅音に報告する。
「
それを聞いた魅音は早速、仲間に無線を飛ばす。
梨花が五分後に家を出る事を知った仲間らは、十人ほどが神社の前にたむろし、山狗が目的地までに襲って来ないよう防いだ。
『
「こちら鳳1。どうした?」
『R宅に三人の村人が向かっています』
「なに?」
そしてその「三人の村人」らが梨花の家の前に行き、彼女を迎えに行った。
それまでの間、沙都子は「梨花の服」と、「梨花の髪型を模したカツラ」を被って、先ほどのテレビの中に身を潜めた。そして梨花がモニターをテレビに嵌め直して沙都子の姿を隠すと、ちゃぶ台に置いていたラジカセの再生ボタンを押す。傍らに次郎人形も飾ってやった。
時を同じくして梨花を迎えに来た三人組が、到着のチャイムを押した。
「ふぅ…………よしっ……!」
息を整え、髪を降ろして俯き、出来るだけ顔が見えないようにしながら、梨花は玄関から飛び出した。
「Rが家から飛び出しました!!」
「なに!?」
そのまま三人組に守られながら、梨花は境内を出る。
その間、山狗が仕掛けた盗聴器は、再生させたラジカセの音声を拾っていた。
『うるとらまぁ〜ん、えいてぃ〜♩ うるとらまぁ〜ん、えいてぃ〜♩』
この日の為に、事前に園崎邸で録音していた物だ。おかげで小此木らは「屋内に梨花がいる」と思い込み、出て行った梨花を偽者だと決め付けてしまった。
直後に小此木らは村内の電話回線を破壊。しかし連絡は村人らに支給されていた無線機で、問題なく連絡が出来た。
そして本物の梨花を連れた三人は追手の存在に注意しながらも、古手神社の南まで移動。その姿を双眼鏡で確認した公由喜一郎が、指笛で合図を送る。
『ウルトラセブンをウルトラ
「こちら雲雀10! 緊急事態発生!」
裏では梨花の家を調べた山狗らにより、誰も家にいない事が報告された──が、もう遅い。
「これよりッ! 公由家主催ッ!!『ひっきーのえれくとりかるぱれーど』を開催するッ!!」
梨花らを止めようとした山狗の追手を遮る為、車のパレードが道を横断。
一瞬、追手の目が遮られている隙に、梨花は背後を通りかかった車にサッと乗り込み、中にいた「同じ服を着た女の子」と入れ替わった。
こうして梨花はパレードの車の中に隠れ、偽者の梨花は三人組と共に囮となる。
「…………へ?」
「なんじゃい」
まんまとパレードの車列を抜けた追手は、その囮を引き止めてしまった。
その隙に梨花を乗せた車を含むパレードは、散り散りに解散。完全に追跡不能の状態にする。
しかしこの作戦は、誰かが冷静になってしまえばすぐにバレてしまう恐れがある。
なので冷静にさせないよう、「下手を打つ」必要があった。その役目を担うのが、テレビに隠れていた沙都子だ。
「よい……しょっと!」
居間から気配がなくなったタイミングで沙都子はモニターを蹴り落とした。無論、その物音で家内に侵入した雲雀隊に存在が気付かれてしまうが、寧ろ気付かれて良い。
すぐさま居間から外へ逃げる。その後ろ姿を捉えた隊員は、梨花の格好をした沙都子を「本物の梨花」だと誤認してしまう。
「雲雀10から鳳1ッ!! Rを発見しましたッ!!」
この報告が敵に冷静になる隙を与えない一手となり、小此木に「本物の梨花が脱出に失敗した」と思い込ませた。
作戦考案者の山田は、これを「サッカートリック」と言うマジックの技法だと言っていた──謂わば、「失敗に見せかけて引っかける」テクニックだ。
とは言え、沙都子が捕まってしまえばそれでおしまいだ。
しかし彼女は事前にトラップを仕掛けていた道を通る事により、追手を撹乱。
「雲雀10は境内のトラップにかかっている! 今追っているのは雲雀9と──うおわああッ!?」
「うぎゃーーッ!?」
「クッ……! 雲雀9沈黙ッ!! あとはひば──」
「ミュウミュウーーーーッ!!??」
雲雀隊が手こずってしまった事により、小此木はそっちに人員を集中させてしまった。おかげでパレードに疑惑が向けられる事を暫く防げた。
「へ……へへっ……で、デッドエンドって奴だなぁ……クソガキぃ……!」
「…………」
それでもトラップを切り抜け、沙都子を袋小路まで追い切った山狗の隊員がいた。
しかし彼が、梨花に化けた沙都子の肩を掴んだ瞬間──
「おにーさん、かぁいいね♡」
「……は?」
──その隊員の肩を叩き、逆ナンパ紛いの事を言うレナ。
隊員の脳が全てを理解するより先に、レナ渾身のアッパーカットが彼の顎に直撃。
「お持ち帰りぃぃーーっっ!!」
「バビロンッ!?!?」
変な悲鳴と共に隊員は地面に倒れ伏し、伸びてしまった。どうやら追い込まれていたのは沙都子ではなく、その隊員だったようだ。
情けなく気絶するその隊員を見下しながら、沙都子はレナと共に作戦成功を喜び合う。
「をーっほっほっほですわーっ!! 特殊部隊と聞いておりましたのに、大した事ないですわねっ!」
「沙都子ちゃんイェーイっ!!」
そのままハイタッチ。次に二人の元に現れたのは、圭一だ。
「よーっし! やったな! 後は俺に任せろ!」
圭一は隊員が持っていた無線機を手に取った。
「えー……こいつのコードネームってのは?」
「ひばり13って仰っていらしたわ。あぁ、あと、お家の中にいた隊員さんはみんな『おーとり1』って人に連絡しておりました。ウルトラマンレオですの?」
「オーケーオーケー……ええと、確か梨花ちゃんはRって呼ばれてたんだよな」
これは入江からの情報だ。
「よぉし……あとはこの、口先の魔術師、前原圭一に任してくれ!」
圭一は二、三度ほど咳き込んで声を作ると、雲雀13に成り切って小此木に連絡を入れる。
『……雲雀13、から、鳳1……本物のR、を、確保した。裏山の麓、フェンスのかかった袋小路だ』
『よし……鳳1、了解。すぐに別働隊がそっちへ着く。Rと共に本部へ帰還しろ。罠にかかった隊員はその間に救出だ』
実際にそこにいるのは、レナによってグルグル巻きの簀巻きにされた雲雀13だけだが。
とは言え梨花を確保出来たと安心し切った山狗らは、暫く警戒態勢を解くだろう。
次に圭一は自前の無線機で、仲間全員に作戦の成功を伝えた。
「
連絡を終えると、圭一とレナは沙都子に話しかける。
「しっかし良くバレなかったなぁ」
「良く見たら梨花ちゃんとちょっと体型が違うのにね!」
そう言うと沙都子は服の襟を広げ、得意げにサラシで潰した胸を見せ付けた。
「梨花ったら最後まで『潰す必要ない』って仰っておりましたけど……絶対これが有効だったのですことよ♡」
「………………」
「圭一くん。あっち向いてて」
急に鼻の下が伸びた圭一をそっぽ向かせてから、レナは沙都子の服をいそいそと整えてやった。
山狗らが虚偽の報告を信じている間の五分間の内に、梨花の脱出の手筈は整えられていた。
彼女を乗せた車がひと気のない林の中で停車し、運転手の老父が無線で報告する。
「
そのまま梨花らはチューペットを食べながら、時機を待った。
「……雲雀13。本名で名乗れ」
「えーっと……
そしてその時が来た。小此木が雲雀13に化けていた圭一に気付いたのだ。
梨花は捕まえておらず、しかも無線機も奪われていた事を知った小此木は、敵に与えた五分間を取り戻そうと躍起になる。
「岐阜県警に協力を仰げッ!! R捜索に動員させろッ!! そして村内にいる部隊は軽トラを探せッ!! 人員が足りない場合は診療所から動員させるんだッ!!」
ここでやっと山狗らはパレードの存在に疑惑を向ける。
そのタイミングで、一番目立つ「ひっきーの新宿エンド」のモニュメントを荷台に乗せた軽トラを山田らの家に到着させた。一番目立つが故に、山狗らはこの車にこそ梨花が隠れていると思い込んだ。
即座に山田らを監視していた鶫隊に屋内を襲撃させるも、上田や富竹によってこれを打破。
富竹は別の作戦の為に一時離脱し、山田と上田は事前に隠していた防弾リムジンに乗り込み、園崎邸を目指した。
「ええと……
二人の乗るリムジンに梨花を乗せていると思わせ、そのまま園崎邸へ。あとは梨花が逃げられるまで籠城すると言う作戦だ。
その途中、山田は小此木らに自身の推理を話したのみならず、黒幕の正体も言い当ててやった。これは相手を煽り、一層山田らに注意を引かせる為でもあった。
その中で唯一、山田は「あえて推理を外した」部分がある。それは────
── 一方、リムジンで走り去った山田らとは別に、一人こっそりと診療所近辺に辿り着いた富竹。
決められた場所に付くと、合言葉を言った。
「燃える闘魂はアントニオ猪木。抜ける毛根は──」
ギリースーツを身に纏った矢部が茂みから飛び出して襲い掛かろうとし、石原らに止められる。
実は矢部たちに与えられた任務とは、「診療所の監視」。
「昨日の晩からずっと監視してたんやでぇ? ガッ虫ぶんぶん飛んだって大変やったわ!」
「それはお疲れ様です……それで、報告は?」
「おぅ、山田の言う通りやったわ。小娘見失った敵が診療所からも人員持って行きおったわ! 十人ぐらい出て行ったんちゃうか?」
この作戦で本物の梨花と沙都子側で揺さぶりをかけたのは、単に梨花の姿をくらませるだけではない。山狗部隊を西へ東へと分散させ、人員を多く使わせる為でもあった。
これは以前「園崎三億円事件」でジオ・ウエキが仕掛けたトリックを応用したものだ。規模を村全体に広げたとしても、上手く機能してくれた。おかげで診療所の人員は元の十五人から、五人ほどにまで減らせた。
富竹は目と鼻の先にある診療所を伺いながら、矢部たちに説明を始めた。
「診療所には地下があります。入江所長が軟禁されているとすれば、恐らくそこです」
「はぁ、なぁるほど! つまりやな? 下にあるホンマもんの研究施設隠す為に、上から診療所被せたっちゅー訳か!」
「矢部さんの頭みたいですねぇ〜」
半笑いでそう言った秋葉に矢部の鉄拳制裁が入る。
続けて菊池が富竹に尋ねた。
「しかしその地下施設! そう簡単に入れる所ではないのだろう?」
「その通り。研究施設へは指紋認証と、パスワードが必須になります。診療所を警備している人間を捕縛し、脅せたら良いんですが……」
「諜報部隊の、それも訓練された人間が脅しに屈するとは思えんな」
「でも僕たちの任務は、『診療所』の制圧……ひとまず地上を抑えるのが目的なんでしょう。幸い診療所には監視カメラの類はないので、制圧しても暫くは地下区画の保安隊員にはバレない」
「ほいじゃけんのぉ!? 特殊部隊に勝てるモンかのぉ!? ワシらまるごしデカじゃッ!!」
石原の心配は尤もだ。人数が五人に減ったとは言え、向こうは標準装備で拳銃を所持した特殊部隊員。丸腰であるこちらが勝てるのだろうか。
しかし富竹はずっと、自信満々だ。
「いえ……丸腰でも勝てる術はあります」
彼がそう言った直後、どこからか女の子の声が聞こえて来た。
「燃える闘魂はアントニオ猪木。抜ける毛根は〜」
再び声の主に襲い掛かろうとした矢部を、石原らが止める。
そんな矢部たちに気付き、大荷物を背負って現れたのは──詩音だった。
「お待たせしました〜! 配達で〜す!」
詩音は持っていた鞄をドサっと地面に置くと、汗を拭きながら息をつく。
「ふぃ〜……一応、似た物を集めては来たんですけど……イケますかね?」
富竹は鞄を開いて中を見て、深く頷いた。
「……えぇ。大丈夫です!」
──地下区画にある一室に、入江は囚われていた。三人ほどの隊員に監視された状態で、椅子に座らされている状態だ。
ちらりと時計を確認する。時刻は既に、十時過ぎ。作戦が順調に進んでいれば、山田たちは園崎屋敷で籠城している頃だろうか。
暫くして一人の隊員がトランシーバーを取る。そしてそれを「出ろ」と言いながら、入江に渡した。
「……はい。入江です」
『ご機嫌はいかがです? 入江所長』
わざとらしいまでに艶やかな声。間違いなく、声の主は「彼女」だ。
「……鷹野さん」
『あら? 前にお聞きした時よりも声がやつれておりますわね?』
「……今日は一度も太陽光を浴びていませんからね。体内時計が狂ってしまって調子が悪いみたいです。医学的観点から外に出た方が良いと思うのですが」
トランシーバーの向こうから小さな笑い声が聞こえた。
『所長ったら、いつの間にユーモアのセンスを上げられて? 私たちがスカウトした時はもっと口下手でしたのに!』
「鷹野さん……今ならまだ間に合います。あなたが行おうとしている事を中止して──」
ぴたりと笑い声は止み、深い溜め息が聞こえた。
『「間に合う」、ですか……所長は私に、何から間に合わせる為にやめさせようとされて?』
「罪を負う事からです」
『馬鹿な事を言わないでぼうや。私も、あなたも、既に多くの罪を背負っているじゃないの』
「あなた方がやろうとしている事は虐殺です……!」
『いいえ、世界を変える崇高な行為です。いつだって歴史の転換には犠牲が払われる……世界は生贄なしでは変わらない。つい四十年前の戦争がそうだったでしょう?』
「生贄って……」
『人は痛い目を見なきゃ分からないと言う事。三十四号マニュアルの発動は、政府に雛見沢症候群の研究の正しさを認めさせる最後の一手……間に合わなかったのは私ではない、あちらなのです』
淡々と業務的で冷たい、しかし高揚と狂気が滲み出ている鷹野の主張。説得は無理だと悟った入江は、その狂気に圧倒されかけ、黙るしかなかった。
一瞬の沈黙の後、鷹野はまた話を切り出した。
『入江所長。彼らが今、我々を手こずらせているその魂胆……洗いざらい話して貰えませんか? そうすれば命は助けて差し上げます』
「私は話しません。何も……」
向こうも入江の説得は不可能だと悟り、鷹野は悩ましく息を吐いた。
『では……せめてあの、山田さんと上田教授についてお教え願えませんか?』
「何を仰って……お二人は東京から来たマジシャンと物理学者ですよ」
『あら……だとすれば所長も騙されていた事になりますわね』
「え?」
意地の悪い笑い声が流れる。
『東京の方でお二人の身元を確認したところ……名前も肩書きも偽造だと言う事が分かったようです』
これにはさすがの入江も驚き、トランシーバーに目を向けて反応していた。
『つまり山田奈緒子も、上田次郎も、この日本には存在しない人物と言う事です。どこかの派閥の刺客か、はたまた海外組織のスパイか……』
「…………」
『……ねぇ、入江所長。あなたは今、私たち以上に得体の知れない人間と手を組んでいますのよ? 彼らが梨花ちゃんを助けてくれると言う保証は、あるんでしょうか?』
山田と上田が存在しないハズの人間だと言う情報を使い、揺さぶりをかける。効果はあったのか、入江の表情に険しさが現れた。
しかし入江はそれを、跳ね除けられた。
「……少なくとも、全てを壊そうとするあなたよりは……私は人間に見えました」
『……人間、ねぇ……』
「そうやって私を揺さぶろうとしても無駄です。それにあなたの情報だって、嘘かもしれないんですから」
きっぱりと言い切った。言い切れたのは、一重に二人に対する信頼が勝ったからでもあった。
刺客であれスパイであれ、二人が梨花、そして入江が気にかけている沙都子の事も動いてくれたのは事実。それを知っているからこその信頼だ。
鷹野は数秒ほど沈黙。次には納得したように、「分かりました」と返事が来た。
『所長のお考えが変わらないようですわね……仕方ありません。裏切り者には、相応の罰を用意致しましょう』
途端、入江を見張っていた三人が彼を取り押さえた。
持っていたトランシーバーは机の上を転がり、不適な鷹野の笑みを鳴らし続けている。
そして机の先にある扉が開き、一人の隊員が姿を現した。
その手には、薬液が充填された注射器が。
「そ……それは……!?」
机の上のトランシーバーから鷹野の声が流れる。
『ふふふ……「H178」……聞き覚えはおありでしょう?』
「馬鹿な……!? アレは前回の内部調査の際に全て破棄されたハズです……!!」
『実は少しだけ、破棄せずに隠していたのですよ。我ながら上手いやり方で……』
注射器を持った隊員が入江の頭を掴み、無理やり傾けさせる。そして顕になったその首筋に、注射針を近付けた。
「ぐっ……!!」
『本来ならその効力を富竹さんか上田教授で試したかったのですが……機会に振られましてね。都合が良いので、あなたで人体実験しましょう』
「私はここで死ぬ訳には……ッ……!!」
取り押さえられながらも必死に抵抗する入江。しかしまどろっこしくなった隊員の一人がスタンガンを取り出し、それを入江に押し当てた。
くぐもった悲鳴をあげ、痙攣をした後、とうとう入江は意識を手放した。
その隙に注射針は刺され、薬液が入江に流れ込んでしまった。
『H178は雛見沢症候群の末期症状を誘発させる薬……数分で錯乱と妄想が起こり、さらにその数分後には自らの首を掻きむしって死に至る……』
鷹野の説明を受けながら、とうとうシリンジの中の液体が全て流し込まれ、なくなる。針が入江から引き抜かれた。
『今より十分間は部屋を閉鎖しなさい。暫く彼は暴れ回るでしょうから、部屋の前で二人見張っていなさい』
指示を受けた隊員らは入江を床に転がし、見向きもせずに部屋から出ようとした。
『さよなら、入江所長』
隊員が持って行ったトランシーバーから鷹野の挨拶が流れ、そしてそのまま部屋の扉が閉められた。
──診療所のエントランスには、暇潰しに『
「なぁ。この作品の連載中に六人も仮面ライダー変わってんだけどさぁ。そろそろ終わってくんねぇかなぁ」
「この作者、『今年で終わる』って言い続けてもう二年経ってるよな」
「マジで早く終わらせてくんねぇかなぁ〜」
「ウォン(*3*)チュ〜キスミ〜」
そこに診療所に入って来る、五人の隊員たち。隊員だと思ったのは、自分たちと同じ鼠色の作業服と帽子を着ていたからだ。
彼らは一人の少女を連れて入って来た。すぐに二人は本を閉じ、彼らに駆け寄った。
「おいどうした? お前たちどこの隊だ?」
「小此木隊長から言われて、作戦本部から保安隊員として来た」
五人は帽子を深々と被っており、人相が遠目では分かり難い。二人は目を凝らしながら更に近付く。
「そうか……ところでこの娘は?」
「診療所の近くにいた。どうやら園崎家の者らしい。敵との交渉材料に使えるだろう」
「なんだって!? そりゃ大手柄だ──」
一人が少女に近付いた時、彼女の後ろに控えていた隊員がその一人を殴って倒した。
「マグニチュード8.0ッ!?」
「お、おい!? 何してんだお前──フラッシュッ!?」
拳銃を抜こうとするもう一人も、別の隊員が殴って制圧する。
エントランスに誰もいない事を確認すると、彼らは俯きがちだった顔を上げた。
「何とか……上手く行きました」
「こない、どこにでもあるよーな作業服着とるから騙されんやでぇ!?」
隊員、と思われた五人とは、変装した富竹や矢部たちであった。
連行される少女役を買って出た詩音が、富竹や入江の情報を元に揃えた衣装を持って来てくれた。それを使って変装した訳だ。
「矢部さーん! 拳銃取りました〜! うぉおおーー! S&WのM39だぁぁあ〜!! ブラックラグーンのレヴィが日本編の回想シーンで見せた荒んだ子ども時代に使っていた銃だぁあぁ〜〜っ!!」
「兄ィッ! これでワシも危ないデカになれるかのぉ!?」
「バカッ! 使うのは僕だよッ!」
秋葉、石原、菊池は二挺しかない拳銃を奪い合っている。
その様を見て困ったように笑ってから、キッと詩音は診療所の奥を見た。
「さぁ……敵はまだいます。一気に制圧しちゃいましょう!」
そう言って彼女は、肩にかけていたボストンバックを揺らした。