唖然とした政治家の“ヤバい一言”
つまり、小さなころから女性にも自己決定権を与えて決めさせ、包括的な性教育と人権教育を行った上で、なおかつ16歳以上に育って、そこまでいって初めて「性的同意」というものが意味を持つんですね。日本の場合はそこに至るまでまともな性教育もないのに、「あの時いいって言ったじゃん」と男性に言われ、性的被害を受ける社会だということです。
他方では、日本はAVが非常に普及していて暴力ポルノも多い。最初、女性は嫌がっていたけど実は喜んでいた、みたいなものが非常に多く、実体験や性の知識が少ない人たちはそういうフィクションをまともに受け止めてしまっています。しかも、そういう危うい人権状態であるということを女性たち自身が自覚していません。
2021年、刑法で性行為が一律禁止される年齢を「13歳未満」から引き上げることを審議するために開かれたワーキングチームの会合で、「未成年と『同意』のもとで自分ぐらいの年齢の成人が性行為をして逮捕されるのはおかしい」と56歳の国会議員が発言して問題になりましたよね。同じ席に私もいました。刑法の専門家として「性交同意年齢を最低でも15歳か16歳には引き上げるべき」と私が発言した途端、「ええっ」と抗議の声を上げられまして。
「およそ50歳の自分は14歳の中学生と自由恋愛だってできるでしょ? もし16歳に引き上げてしまったらもう、それも性犯罪になっちゃうの? 自由恋愛はどうなんの?」と言いました。
自分の権力の強さを自覚できていない
性交同意年齢というのは、暴行脅迫等がなくてもその年齢未満だったら性犯罪が自動的に成立する年齢のことです。2023年の刑法改正以前、日本ではそれが13歳未満でしたから、中学生に上がってしまえば本人が「同意」すれば大人の側は性犯罪にならなかったんです。それはおかしい、16歳に上げなければならないという議論をしている真っ最中でした。
私は非常にびっくりして、開いた口が塞がらないというか、まともに答えられませんでした。「外国だったらそれは犯罪ですけど」としか言えず……それぐらいびっくりしたんです。性交同意年齢も上げるべきだし性犯罪改正をさらに進めるべきだということで開かれた研究会でしたから、アンチの立場で来られていたんじゃないかと思います。
性的同意以前に、年齢差や業務上の立場など、人と人の間に多くの場合は「権力勾配」が存在する、という意識が必要です。力の強いものから弱いものに対する権力の差があって、それに当てはまれば上のものから下のものに対しては差別があり、下から上にNOと言えない、そういう構造的な問題があることがそもそも理解されていないと思います。
20歳と50歳との本当に真摯な恋愛は、0%かと言えば、ありえるとは思います。そこは否定しません。しかし16歳以下だったらそもそも義務教育のなかにいるわけで、同意能力が問題となります。同意能力というのは従来、ただ「行為の意味を認識する能力」としか考えられていませんでしたが、そうではないんです。
