「コーヒーか紅茶か」すら答えられなかった学生時代
ただ、若いときは私も人のことは言えませんでした……。
35年前の学生時代、わたしはコーヒーや紅茶を出されて「あなたはどっちがいい?」と聞かれても選べなかったんです。当時の日本の教育は「どちらでも結構です」と返すのが礼儀作法だということになっていました。だからフランス留学中に「どちらでもいいです」と言ったら「ええっ⁉」とみんなに驚かれて、「あなた、自分でコーヒーか紅茶かも決められないの?」と言われました。自己決定権というものが自分には育っていない、とそこで初めて自覚したんですね。
日本なら「おかわりは」と聞かれても、「あ、結構です」とまず言って、それでも必ずまた「いや、どうぞ」と言われますよね。フランスではおかわりを待っていても、「あ、結構です」と言ったとたん、もう勧めてこないんですよ。「そうですか」って引っ込めてしまう。
日本の女性はバカなふりをしている
そういうのに慣れてから日本に帰ってきたとき、指導教授の部屋に呼ばれて、「コーヒーと紅茶、どっちがいいですか」と聞かれ、ズバリ「コーヒーで」と言ったら今度は「えっ」という顔で教授が当惑していました。「おかわりいかが?」、再びズバリと「お願いします」。「もう、あなたねぇ……」みたいな感じで、まったく逆です。
日本に帰ってきたとき、浦島太郎みたいな感じでもう一つ驚いたのが、「女性がバカなふりをしている」ということでした。例えば法科大学院で模擬裁判をやる際、裁判官役や検事役を思いっきり前に出て演じるのは男子学生なんです。逆に、筆記試験では男子学生よりよっぽど優秀な女子学生が、モジモジして表に出て行かずハッキリものを言わない。
「えっ、この人頭いいのに、バカなふりが身についてしまっている?」
防御本能なんだと、初めて気がつきました。フランスに行ったらそういう人はいませんから、ものすごく目についたんですね。そういう目であちこち見てみると、日本の女子学生は本当にどこでも一歩下がっています。今でもそうです。無意識のうちに男性を立ててしまう。組織でも、上の人が入る会議で最初に発言するのが男性。女性は判断の場から一歩引き、「自己決定権」が育っていない。

