今月の調査マン
東京商工リサーチ 情報本部情報部課長 後藤 賢治
横浜支店調査部、同支店情報部を経て現職

 個人や法人の破産や民事再生などの情報や決算公告、合併、解散など、企業情報の宝庫といえる「官報」が発刊142年目で大きく変貌した。官報は、新聞と同じように購読者に毎朝配達され、ウェブ上でも閲覧できる。有料版の「官報情報検索サービス」は、過去分を含め、様々な情報を確認できた。

 ところが4月1日、官報が紙面を残しつつ電子版に移行した。同時に、「官報情報検索サービス」も変更された。これは官報の「正本」を紙から電子版にシフトする法改正があったためだ。また、プライバシーへの配慮も強化されたが、これが与信業界に大きな影響を広げている。プライバシー配慮が必要な記事は、破産や再生、免責、懲戒処分、帰化などの情報で、これらは「官報情報検索サービス」での検索ができなくなった。ウェブサイトや紙面では、破産情報などは掲載されている。だが、検索ができなくなり、何月何日の何ページの掲載か分からないと事実上、調べることは難しくなった。

 ある不動産仲介会社は、契約希望者の申込書を基に、「官報情報検索サービス」から会社名や個人名を検索し、破産歴などをチェックしていた。過去に破産歴のある人物と取引してトラブルになった経験があるからだ。また、金融機関の担当者は、自社データベースに登録があれば把握できるが、新規取引の顧客は破産歴の見極めが難しくなったと嘆いている。

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