「先生の科目が終了することになりましたが、これまで本学の教育にひとかたならぬご協力をいただきましたことに対し、厚く御礼申し上げます」
東京造形大で非常勤講師を務めていた松本順子さん(64)は、そのあっさりとした文面を前に、怒りとむなしさで頭がいっぱいになった。
松本さんは大学で、新入生や留学生への日本語表現に関する講義を12年間担当。1年更新の有期雇用契約を繰り返してきた。しかし2023年2月下旬、次年度の契約はないことを知らせる通知書と、冒頭の言葉が書かれた学長からの書面が届いた。
「1年間休まないか」
13年に施行された改正労働契約法(労契法)では、労働者は有期契約が5年を超えると、無期雇用に転換できる権利を得る。大学教員など研究職の場合、プロジェクトが長期にわたるとして、特例法で一般労働者より長い10年に設定されている。松本さんは、10年特例の対象者が無期転換権を得る直前の23年3月末、雇い止めされた。
さかのぼって21年、実は松本さんは、科目の取りまとめを担当する専任教員から、「1年間休んで、その後また続けないか」と打診されていた。
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東京造形大非常勤講師の松本順子さん=東京都内で2025年2月21日午前11時52分、中村好見撮影