隠されてた恋心。 Welcome back!!
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--- な・・・・な、んで青島くんが・・っ!? 突然立て篭もりの被疑者と共に刑事課に入ってきた青島くんを見て、心臓がまるで早鐘のように波打った。 --- 帰ってくるなんて、聞いてないわよ・・・ 「青島」って名前だけにこんなに敏感に反応しちゃうなんて・・・やっぱりダメだぁ・・・
青島くんが湾岸署からいなくなってから約9ヶ月。 その間、一回も電話もなければ会ってもない。 それまであたしの心の奥底に芽生えてた小さな気持ちを、この9ヶ月で無理矢理封じ込めて。 この想いを勘違いだと思いたくて、気付かない振りしてた。 ようやく慣れてきたの、後ろの席にあなたが居ない日常。 なのに・・・何なのよ、この展開。
相変わらずのヘラッとした笑顔で課長に挨拶する彼を横目で見ながら、係長からの報告にコートと鞄を手に取るも。 視線を感じてクルリ、振り返る。 瞬間、ぶつかる視線。 あぁ・・・変わってないなぁ。 なんだか色んな想いが入り混じって、頭が混乱してる。 だけど、ひとつだけ確かな想い。
・・・嬉しい、また会えて。
この気持ちの正体なんて、この気持ちの名前なんて、今はまだ分からない。 ううん、分からないままでいい。 今はまだ、知らない振りしてたい。 きっと、焦らなくても大丈夫。 だって、彼は帰ってきた。 あたしの後ろの席に。 あたしの一番近くに。 ニコリ、青島くんに小さく微笑むと、あたしは勢いよく刑事課を飛び出した。
「・・・さっみ~~・・・」
・・・青島くんは、やっぱり事件を呼ぶ男だった。 帰ってきて早々、刑事課占拠されちゃって・・・ったく、前代未聞よ、こんな事態。 SATまで出てきちゃうし、一年の締め括りに相応しい大事件だったから、その後は事件も起こらないだろうって思ってたのに。 早速鶴亀神社に呼び出されちゃうし、気付いたら年も明けて早5時間。 もうじき初日の出が昇ろうかって言う時間に、ようやくあたしたちは解放されて。 皆フラフラと帰途についていった。 で、あたしと青島くんは帰る方向が同じなもんだから必然的に一緒に帰ることになっちゃって。 かなり久しぶりの2人きりの時間に、無性に胸が高鳴った。
「・・・新年早々、疲れたわね。」 「ねぇ~。なーんでこう、年明けから揉め事起こるかなぁ。」 「皆浮かれてるのよ。・・・あーっ。」 「なに?」 「空。明るくなってきてるー。もうそんな時間!?」
東の空がほんのり色づき始め、あたしは驚いて左腕に巻かれた時計に目をやって。 またもやトクン、と小さく胸が跳ねた。 あたしの左腕には、青島くんがずっとつけてた、ごつい男物の時計。 ずっと、湾岸署にいない間もずっと。 青島くんと時間を共有してきた、この時計。 なんだかこの時計をつけてることで、青島くんがいなかった間の時間も共有できるような気がして。 あたしは小さく微笑んで、そっと腕時計に触れると。 「・・・気に入った?」 懐かしい、それでも当たり前になってた距離からの声に、あたしはパッと顔を上げた。
「時計。気に入った?」 「ごつすぎるよー。あたしの華奢な腕には大きすぎる。」 「でも似合ってるよ?」 「当たり前じゃない。あたしだもん。」 「こりゃ失敬。」 「・・・久しぶりね、青島くん。元気にしてた?」 「元気元気ー。もう、元気に内勤やってたよ。制服来て。」 「うわ、似合わなさそうー。」 「・・ちょっと。」 「こりゃ失敬。」 「すみれさんは?元気だった?そいや、髪伸びたねー。」 「あー・・そうね。あの頃はボブだったもんね。青島くんはこざっぱりしたんじゃない?」 「俺、こないだ散髪行ったばっかだもん。・・うん、いいね。」 「何が?」 「いや、短いのもワイルドキャットってカンジで可愛かったけど、長いのも似合うね。」 「あ、りがと・・」
サラリ、無意識か意識的か。 いつもの笑顔を携えて、あたしの髪を優しく梳く手に、思わず心臓が高鳴ってしまう。 全く、女慣れしてるとこういう時困るのよね。
「・・そいやさ。」 「なに?」 「あの彼とは、どうなったの?」 「彼って?」 「や、だから、昨日湾岸署に来てた彼・・」 「あぁー・・藍原さん?」 「なーんか格好よかったじゃない?すみれさんのコト守ろうとしてさ。」 「・・・もう会わないって言ってきた。」 「・・え?な、どして?」 「男守っちゃう女なんて、イヤでしょ?やっぱり暫くは、仕事が恋人でいいや。」 「寂しいねぇ。」 「ほっといて。」 「でもすみれさん、俺がいなくて寂しかったんでしょ?」 「は・・・・な、ば、いきなり何バカなこと言ってんの!?寂しい訳ないじゃないっ。青島くんのことなんて、すっかり忘れてたわよ!」 「・・あれー?おっかしーなぁ。」 「なにがよ。」 「雪乃さんがさ、教えてくれたんだよねー?」 「な・・・何を?」 「すみれさん、俺がいなくてずっと元気なかったって。」 「なっ・・・・!!!!」
雪乃さん、何てこと言ってくれたのよッ! 真っ赤になる顔が自分でもイヤになるくらい分かって、あたしは青島くんから思いっきり顔を逸らしたけど。 斜め上から突き刺さる、ニヤニヤした視線が腹立たしくて。 思いっきり振り向いて、ジロリ、彼を睨んでやった。
「ね。ついでだから、初日の出見にいこっか。お台場の海も近いことだしさ。」
そんなあたしの視線を気にする様子もなく、青島くんはニコッと子供のような笑顔で笑うと。 ふと、あたしの手に視線を止めた。
「あれ?すみれさん、手袋は?」 「手袋なんてしてないわよ。」 「手、寒くない?」 「寒いに決まってるじゃない。でも、苦手なのよね、手袋って。」 「しょーがないなぁ。」
凍えそうな指先にはぁーっと息を吹きかけると。 青島くんはニッコリ笑って、なんとも自然にあたしの右手をひょい、と取り。 ずぼっと彼の大きなポケットに突っ込んだ。
「あ・・っ、青島くん!」 「暖かいでしょ?」
大きなポケットの中で大きな掌に包まれて。 あたしの小さな右手は、さっきとは比べ物にならないくらい温かくなっていってる。 なによ・・何事もないように、いとも簡単に、こんなことしてくれちゃって。 あたしがどれだけドキドキしてるか分かってるわけ!? なんだかしてやられた気分になって、悔しくて。 ちょっぴり唇を尖らせると・・・ポケットの中の彼の左手を、ぎゅう、と握り返した。
「え・・すみれさんっ・・」
瞬間、うろたえる青島くんを横目で見て。 なんだか嬉しくなって、思わずニヤリ、口角を上げた。 あたしだって、いつもいつもしてやられてばっかりじゃないんだからね。
相変わらずのあたし達。 これからもきっと、こんなささやかな攻防戦を繰り返していくのかな? 今はまだ分からない、あたしの気持ち、あなたの気持ち。 それでも、いつか。 きっと、いつか。 あなたはあたしにとって、かけがえのない人になる予感がする。 あなたなしでは、生きていけなくなる日が来る気がする。 そんな日が来るように、あなたとずっと一緒にいられるように。 もっともっといい女になるから。 強くて、優しくて、美しい。 あなたがくれた「約束」に相応しいような。 守られる価値のあるような女になるから。 だから、それまでは、ゆっくりゆっくり、歩いていこうね。 もう、あたしの前からいなくならないでね。 繋いだ手の温もりに、心がジワリ、温かくなって。 とくん、とくん・・と優しく鼓動が響いてく。 もうじき、今年最初の日が昇る。 この瞬間を、あなたと一緒に迎えられることを感謝しながら。
--- 今年も、ずっと一緒にいられますように・・
繋いだ手に祈りを込めた。
((いいわけ)) いやー、最近のあたしのBGM はもっぱら踊るのビデオなのですが。 その中でも一番好きな冬SP 、もう何回見たことでしょう(^^;)あまりに見る頻度が高いので、書いちまいました。 冬SPの何がいいって、「青島」って名前に反応するすみれさんとか、凹んでる青島くんの後ろで嬉しそうに笑ってコーヒー啜るすみれさんとか、 意地張りながらでも青島くんに時計貰うすみれさんとか・・・って、全部すみれさんですかい(笑) いやー、もう、すみれさん可愛すぎ。大好きだぁ(><) |