イタリアのPFAS汚染で三菱商事に損害賠償命じる判決 欧米で広がる排出責任追及の動き 日本は? #エキスパートトピ
イタリア・ベネト州の裁判所が26日、かつて三菱商事の現地関連会社が所有していた工場が発がん性の疑いがもたれている化学物質のPFASを流出させ、土壌や飲料用水を広範囲にわたって汚染したとして、当時の日本人幹部らに最長で拘禁17年6カ月の有罪判決を言い渡し、三菱商事にも被害者らへの損害賠償の支払いを命じた。PFAS汚染問題が世界的な広がりを見せる中、欧米先進国では企業の排出責任を追及する動きが進む。対照的に日本は汚染源の特定すらおぼつかず、早期の被害者救済や汚染地の原状回復は絶望的だ。
ココがポイント
裁判所は水質汚染に対する三菱商事の責任も認め(中略)個人やベネト州、工場のあった自治体などへの損害賠償を命じた。
出典:朝日新聞 2025/6/27(金)
米国ではPFASの製造や流通にかかわった企業の法的責任を追及する動きが急速に拡大している。
出典:一般社団法人環境金融研究機構 2025/1/29(水)
環境省が2023年度に実施した水質調査では(中略)自治体が「排出元を特定できた」としているのはわずか4例だ。
出典:共同通信 2025/4/25(金)
エキスパートの補足・見解
PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称。フライパンから半導体まで非常に幅広い用途があるが、発がん性や免疫機能の低下、胎児の体重抑制など人に様々な影響を与える可能性が次第に明らかになり、世界的問題となっている。
米国ではバイデン前政権時代から大幅な規制強化が進み、それと並行して行政や市民らが汚染源の企業の責任を裁判などで問う動きが拡大。2023年には、3M社が汚染水の処理費用として103億ドルを支払うことで和解。被告の中には著名な日本企業の関連会社も含まれている。
欧州では、2022年、3Mとベルギー・フランダース地域政府の間で、土壌の修復費用などとして3Mが5億8,100万ドルを支払うことで和解が成立。ただし、将来の健康被害に対する3Mの法的責任は免除されない。欧州連合(EU)が大幅な規制強化を検討していることも踏まえ、今後、欧州でも企業の責任追及の動きが加速する可能性がある。
日本もPFAS汚染は深刻だが、依然、汚染の実態調査の段階で、汚染源の特定すらほとんどできていない。そのため汚染地域の原状回復や住民への補償などは手つかずだ。規制強化に消極的な日本政府の考えが一因とみられている。