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其の二十三
あなたのまわりで世界は煌く。
収束する輝きの頂点に降りたった、純白の王子さま。
あなたは蕩けそうなほどに美しく、ぼんやりと言葉が流れ出す。
「 ・・・・・・・・・・・・ わたくしは、とても、我侭よ。」
驚いたように澄んだ瞳が見開かれる。
わたくしは、何を言おうとしているの。
「 ・・・ え?」
「いつだって、自分が一番に愛されていたいの。」
開いた唇が呆れてしまった所為なのか、
もうそんなことすら考えられない。
「それに、とても、傲慢なの。」
涙で歪んだ視界の中で、それでもあなたは神々しいまでに美しく。
「わたくしだけしか、見て頂きたくないの。」
滑らかな頬に笑窪が浮かんだように見えるのは、きっと気の所為。
「寂しいのも、嫌いなの。」
手を握り締められて、きらきらした瞳にわたくしは包み込まれる。
「一人にされたら、 ・・・・・・死んでしまうわ。」
あなたの腕が、わたくしを抱き締める。
長く形のよい指が、わたくしの頬を包む。
大好きな声が,優しい響きを紡ぐ。
「我侭も、傲慢も、何もかも全てを、
愛しています。」
揺るがないあなた、頑是無いわたくし。
「でも、あなたは国王様になられるのよ。」
「お義母さまが望むのならば、そんなもの願い下げです。」
信じられない、信じたくない。
「このお国の理ですもの、きっと後宮を作られるわ。」
「俺の代で廃止すればよいことです。」
言葉ならば、どうとでも言えるもの。
「お忙しいあなたは、きっとわたくしを置いてゆくわ。」
「いいえ、どこへなりと連れてゆきます。
ずっと側に、いてさしあげます。」
こんなに愛されるはずがない。
「お世継ぎが出来たならば、きっとその子を一番に愛するわ。」
こんなに愛するはずはない。
あなたの手の中で、わたくしは力無く抗うように首を振る。
「 ・・・・ お義母さま。 」
呆れてしまうのも当たり前、なんて愚かなことばかり。
腕が一層強く、わたくしを抱き締める。
「その子に言います。
ニ番目に好きだよ、って。」
「え・・。」
「一番に愛してくれる人は、・・・・・・自分で見つけろって。」
わたくしは、もう繕う術すら見つけられない。
波のように寄せるのは、やっと解き放たれた、
あなたへの思い
「お義母さま。」
「いいえ。」
「 わたくしは、りか、よ。 」
天と海との間に、わたくしはあなたと二人きりで。
それだけのことが、こんなにも嬉しいなんて。
涙にまみれた頬を包まれ寄せられる口唇を、
わたくしは震えながら受け入れる。
胸の鼓動が収まらなくて、
しゃくりあげる子供のような姿を晒したままで。
あなたは柔らかく、わたくしの涙を口唇で拭ってくれる。
その温かさに溶け出す涙は止めど無く。
「りか・・・・さま。
もう、泣かないで。」
互いの瞳の中には、あなたとわたくししか映らない。
それだけのことで、こんなにも幸せになる。
あなたは困ったように、でも少しだけ嬉しそうに、
わたくしの顔に口付ける。
瞼に、鼻筋に、頬に、なすがままにされるのはとても幸せなこと。
いつのまにか絡み合った指を、尚一層強く絡め合う。
重なった掌から伝わる思いが止まらない。
あなたのマントに包まれながら、
わたくしは数限りなく口付けをかえそう。
吐息の温度が上がってゆく。
あなたの肩の向うで、星は微かに降るように瞬いた。
あなたが緩やかに首筋を伝う。
わたくしの耳の奥、波の音が寄せてはかえす。
そっと胸が肌蹴られる、あなたの舌は痛い程に心地よい。
吐息ではなく、漏れた声にあなたは不安そうにお顔を上げる。
いいえ、もっと触れて欲しいだけなの。
柔らかな栗色の髪に、指をさしいれ引き寄せる。
「愛してるわ、
わたくしの、あなた。」
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