狙われた億単位の積立金 公取委が調査 マンション修繕談合防ぐには
分譲マンションに住む人は、平均で約1万3千円の修繕積立金を毎月払い、建物の定期的な工事費をたくわえています。その工費が業者の談合によって、不当に高止まりしているのではないか。そんな疑いが浮上しています。住人の大切なお金を無駄づかいしないために、管理組合は何ができるのでしょうか。
連載「Sundayマネー」
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全面的な外壁の塗装、床や屋根の防水機能の維持などに定期的に取り組むのが、大規模修繕工事。1回あたり数千万~億円単位の費用がかかる。
この工事を巡り、談合の疑いがあるとして公正取引委員会が3月以降、約30社を対象に独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査した。結果は2026年以降に公表の見通しとなる。
管理組合が工事を発注する際、主に二つの方式がある。施工会社にすべての業務を頼むのが、「責任施工方式」。設計と施工を分けるのが、現在の主流で公取の調査対象にもなっている「設計監理方式」だ。
管理組合はまず設計事務所などをコンサルタントとして選び、工事の調査や設計などを依頼する。これをもとに同一の条件で施工会社を募り、価格などの条件が合う1社と契約する。工事が始まると、コンサルは第三者の立場で施工内容を監理(チェック)する。
「マンション管理組合理事長勉強会」代表で、マンション管理士の応田治彦さんは、設計コンサルも複数社から選ぶ必要があると指摘する。コンサルと関係のある施工会社へと、選定を誘導される恐れがあるためだ。格安や無料をうたう契約は、特に要注意という。
記事後半では「談合業者が嫌がる管理組合」になるための方法を紹介しています。
施工会社は建設の業界紙などで公募することが多い。その際に資本金や工事実績などの制限をかけ過ぎると、応募企業が減って談合の温床になりやすい面がある。
業者からの応募書類の送り先は管理組合あてにする。募集締め切り後、管理組合の理事など複数の人がかかわって一斉に開封。施工会社を決める場に、設計コンサルを同席させないことも大切という。コンサルと施工会社が結びついていて、書類を事前に見て書き換えられたり、業者選定を誘導されたりすることを防げる。
手続きが面倒な工事を、だれかにお任せして進めたい。設計監理方式が広がった背景には、そんな管理組合側のニーズがあった、と応田さんはみる。「怖い怖いと言っていても、談合はなくならない。談合する企業側が何をされたら嫌なのかを考え、管理組合も少し汗をかく必要がある」と話す。
管理組合への情報提供などをする公益財団法人「マンション管理センター」(東京都)によると、設計コンサルや施工会社との契約時、談合などの不正行為をしないように書面で誓約させる方法もある。
また、施工会社の見積もりに不審な点があれば、公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」(同)のチェックサービス(03・3556・5147)でも相談できる。
そもそも足りない修繕積立金 24年間で1.8倍に
工事の主な元手は、区分所有者が毎月払っている修繕積立金だ。
国土交通省「マンション総合調査」(2023年度)によると、1戸あたりの月額は平均1万3054円。過去24年間で1.8倍になった=下図右。
同じ調査で、修繕積立金の残高が計画に対して不足していないと答えた管理組合は約40%で、不足が約37%、不明が約24%。足りない分は一時徴収金や借入金でまかなうことになる。
大規模修繕工事は12~15年ほどの周期で、何度も実施する。国交省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(21年度)によると、1戸あたりのおよその平均工費は、1回目152万円=下図左、2回目112万円、3回目106万円だった。
管理組合向けの支援サービスを提供する「さくら事務所」(東京都)のマンション管理士・土屋輝之さんは、修繕積立金の値上げに加え、工事の周期を18年ほどに延ばしたり、必要な箇所から優先して取り組んだりして工事費を節約する工夫もある、と説明する。
その場合も管理組合内での十分な議論が欠かせない。「将来的な積立金の増額を抑えるような考え方で、工事の内容や業者を決めることが大切だ」と話す。
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