家を出た上田は地図を頼りにしつつ、鬼ヶ淵沼までの山林道を進む。
沼まで続く小川を遡るようにして辿るが、途中から傾斜も急になり、意外と体力を使う。
「鍛えていて良かったなぁ……しかし良い自然だ。毎朝のハイキングコースにでもしてみるか……」
夏場と言う事もあり、汗が滝のように流れる。首に巻いたタオルで拭きながら、時折走る風を浴びて涼みつつ歩き続ける。
風が木々を揺らし、絶え間ない蝉時雨。
だがその自然の音の隙間から、場違いな機械音が聞こえる。カメラのシャッター音のようだ。
「お〜い! 誰かいるんですかぁー!?」
上田の呼び掛けに応じるように音は止み、数メートル離れた岩の陰からひょっこりと人影が現れる。
「どうもー! あなたも自然観察ですか?」
そう叫びながら駆け寄って来たのは、緑の帽子とタンクトップ姿の爽やかな男だった。
首からぶら下げている一眼レフからして、彼が音を鳴らしていた者だろう。
相手が人当たりの良い男だと感じた上田は、和やかな笑みで言葉を返す。
「まぁ、そうですね。私の場合はフィールドワークも兼ねていますがね?」
「フィールドワーク……へぇ! じゃあ、学者さんですか?」
「私、日本科技大の上田次郎と申します」
上田が自己紹介をした途端、男は笑い出す。
「次郎!? ははっ! これは奇遇だ!」
「奇遇?」
「僕はフリーのカメラマンの、『富竹ジロウ』です」
「はははは! あなたも、『ジロウ』!? 確かに奇遇だぁ!」
名前の一致に、今度は上田も笑った。
こうした共通点により、二人は初対面ながら一気に距離を縮めた。
仲が深まったところで二人は行動を共にし、一緒に渓流を歩いて鬼ヶ淵沼まで目指す事にした。
道すがら、富竹は上田に尋ねる。
「フィールドワークと言うのは?」
「単純な地質調査ですよ。休火山の存在はないか、崖の風化の度合いはどうかとか」
「いつまで滞在予定で?」
「んまぁ〜……とりあえず、綿流しの後までですかね?」
「大学の教授なんですよね? 講義は大丈夫なんですか?」
帰る手立てはまだ考えていないが、だからって「未来から来たので」とも言えまい。とりあえず、それらしい事を言って誤魔化しておく。
「えー……論文の研究の為と言う体で来てますので、大学側から許可は貰ってますとも。休んだ分は後日、補講と言う事で帳尻は合わせますので……生徒たちには悪いですがね? はっはっは!」
「いやぁ、自由で良いですねぇ。羨ましい!」
「カメラマンと言うからには、やはり個展用に?」
上田の問い返しに、富竹は少し恥ずかしそうに頭を掻く。
「まぁ、そうですね。言っても全然無名ですから、鳴かず飛ばずですが。その点だけ言いましたら僕も至って自由ですよ!」
「いやいや何を〜! ここを撮りに来るなんて、なかなかのセンスだと私は思いますがねぇ?」
「いやいや! 上田教授こそ! 自分の足で調査を行うなんて、学者の鑑ですよ!」
「いやいや富竹くんこそ〜」
「いやいや上田教授こそ〜」
「「えへへへへへへ!!」」
男二人の気持ち悪い笑い声が、清流のせせらぎと共に森へ響き渡る。
暫く道なりに進んでいた二人だが、不意に富竹が足を止めた。
そこは少し高い崖の上で、真下を覗くと底が見えないほど深い淵があった。
「あ。ここですね」
「ここ? 何があるんです?」
「良い釣りのスポットなんですよ。去年もここでフナ釣りしました!」
「フナかぁ……塩焼きにしたら美味いだろうなぁ」
「上田教授は釣りとかなさるんですか?」
高らかに笑い、胸を張る上田。
「日本のみならず、海外の釣りスポットへ馳せ参じる位には釣り好きですよぉ?」
「海外の! どこ行ったんですか?」
「あれはカナダでしたねぇ。カナダ中西部サスカチュワン州の北部にある、年間十四万人が釣りに来るスポットなんですよ」
「カナダかぁ……自然王国で、僕も行ってみたいですよ……なんて所なんですか?」
上田はねっとりと、そのスポットの名前を教えてあげた。
「……『オマン湖』」
「……お、オマン湖……!?」
「そう……オマン湖……」
「オマン湖……!!」
「オマン湖で……フィッシング……」
「オマン湖でフィッシング……!?」
「……キャッチアンドリリース……」
「キャッチアンドリリース……!?」
「オマン湖で、フィッシング、キャッチアンド……リリース」
「オマン湖でキャッチ……イテッ、イテテテッ! イテテテテテッ!!」
「そう。オマン湖でフィッシ……イテッ! イテテッ! イテテテテテテッ!!」
「「イテテテテテテテッ!!」」
崖に立ちながら両手で股間を押さえ、悶える男二人の穢らわしい声がせせらぎと混じる。
途端バチでも当たったのか、富竹の立っていた場所が崩れた。
「う、うおッ!?」
「あっ!?」
姿勢が乱され、富竹は踏ん張り切らずに崖から川へ落ちかける。
「うわぁぁ!?」
「掴まれぇ!!」
手を伸ばす上田だが、僅かに届かなかった。
「うあっ!!」
「おうッ!?!?!?」
だがギリギリ、先ほどの猥談によって屹立した「上田の立派な大きな根っこ」が届いた。
富竹は思わずそれを強く掴む。
「う、上田教授ぅぅ!!」
「掴まってろおおぅ!?……あーっ!? アアアアアっ!!??」
「た、助かった!? 助か……あっ!?!? 萎びてる!?」
「今、引き上げ……アーッ!!!!」
「うおうおうお!? ゆ、揺れ……あーっ!?」
「「あーっ!! アアアアーーッ!!!!」」
無事、富竹は引き上げられ、二人は崖の上でへたり込む。
「あ、ありがとうございます……! 命の恩人ですよ……!」
「いや、良いんですよ。お互い、自然の厳しさを学べたんですから」
そのまま渓流を道なりに進むと、とうとう開けた場所に出た。
川の流れで泡立っていた白波は突如と消え、深い緑の凪の湖が現れる。
崖に囲まれ、木々が立ち並び、群青の空と相まって壮麗な空気を醸していた。
湖沿いの崖からクタリと枯れ木が、寄り掛かかるように倒れている。
ここが雛見沢村の源、「鬼ヶ淵沼」だ。
「ここですか。鬼ヶ淵沼と言うのは」
観察する上田へ、富竹はカメラを弄りながら話を一つしてくれた。
「沼から湧いた水が川となり、谷を切り拓いたんです。まさに村のルーツとも言える場所で、明治時代まで雛見沢は『鬼ヶ淵村』と呼ばれていたそうです」
「なるほど……昔から湖だとかの水場は、神の住まう場所として信仰されていた。『諏訪湖』は言わずもがな、山梨県の『山名湖』の水は霊水と崇められ、滋賀県の『琵琶湖』にも、浅瀬に古代の遺跡が発見されている。水は飲んだり、作物を育てたりと、豊穣と生命の象徴でしたからね」
「おぉ、さすがは上田教授……勉強になります!」
「分野は物理学ですが、日本人であるからには日本の風土を調べるのもまた一興です。はっはっは!」
富竹は沼沿いを歩いて、写真映えのする地点を探している。
その間上田は沼全体を見渡し、火山の気配などを調べた。
「ふ〜む……百聞は一見に如かずだな。火口湖にしては浅め……古手神社が高台にある辺り、恐らくは縄文海進による海跡湖。火山ガスはおろか、マグマ溜まりも存在しないだろうなぁ……つまり、ガス災害の可能性はほぼ無い……こんなの、地質学者が見たら一発だろうに……?」
ブツブツ呟きつつ分析をしながら、鬼ヶ淵沼の視察を続ける上田。
彼なら少し離れた地点まで歩いていた富竹は、大きく呼び掛けて手を振る。
「上田教授ーっ!」
「ん?」
「撮りますよーっ! 富竹フラッシュ!!」
カメラを構えたので、咄嗟に上田は顎に指を当てて気障なポーズを取る。
すぐにカシャっとシャッター音が鳴り、撮影完了。
「現像出来ましたら差し上げますね」
「いいですねぇ! 是非、私の次出す本の表紙を撮影していただきたい!」
「本も出版されているんですか?」
「何冊かは……そうだ! 一冊、私の代表作を差し上げますよ!」
上田から富竹に近付き、鞄から自著「どんと来い超常現象」を取り出す。
「どんと来い……超常現象?」
「この世に起こる事は全て、科学で証明出来ます! 私は過去、様々な霊能力者と相
「……………」
「富竹さんも、私の考えに賛同していただけますか?」
「……確かに」
本を受け取りながら、彼は微笑んだ。
「僕も超常現象ってのは否定派なんですよ」
「はは! さすがは同じ、『ジロウの名を冠する者』! 感性も同じだッ!」
「それで一つ、上田教授にお聞きしたいのですが」
「……ん?」
富竹は上田から身体を逸らすと、一度、二度と鬼ヶ淵沼に向かって一眼レフのレンズを向ける。
静寂な沼の中、無機質なシャッター音が何度も鳴る。その合間を繋ぐような、富竹は語り始めた。
「この鬼ヶ淵沼……ある人に聞きましてね……そのある人ってのがとんと性格の悪い人で……各地の不気味な伝承を話して怖がらせるのが趣味な人なんですが」
「稲川淳二かな?」
「……昔。鬼ヶ淵沼は、『オヤシロ様』の宿る場所として、神前の儀式が行われていたらしいですよ」
一度シャッターボタンから指を離し、ダイヤルを回して視度や露出を調整する。
その最中の富竹の横顔は、どこかやるせなさがあった。
「……なんでも。『生贄』がここに、捧げられたとか?」
「…………生贄?」
思わず膠着する上田。
風が草を揺らす中で、富竹はまたシャッターを切る。
「ここは活断層が近いですし、地震も多い。豪雨になれば川は氾濫し、村は大洪水……その度に人々は『オヤシロ様の祟り』と信じて、怒りを鎮める為、村の女性を捧げたとか何とか」
「……はっ! 何とも浅ましい! まぁ、現代日本に於いて生贄なんざ時代遅れですよ! 地震になれば地盤補強、洪水になれば堤防、水不足になればダム! 科学最高ッ!」
「……その捧げられた女性と言うのは、『古手家の巫女』だそうで」
それを聞いた上田は目を剥いた。
富竹はシャッターを押すのを止める。
「古来の伝承。古手家の跡取り娘は『オヤシロ様の生まれ変わり』とされた」
「…………!」
「……人間の肉体からオヤシロ様を解き放つ為に身を捧げる」
「……それは……」
「上田教授は、二年前の『鬼隠し』と呼ばれる事件はご存知ですよね」
「確か、古手神社の……」
「神主さんが病死、奥さんが行方不明……嫌な事件でしたねぇ」
カメラのレンズから目を離し、再び上田へ視線を合わせた。
「その奥さんは古手家の跡取り娘さんで……ここに身を捧げたらしいですよ?」
何も言えずに固まる上田の手前で、次に見せた富竹の表情は、悪戯に成功したと言わんばかりの笑みだった。
「……噂ですけどね!」
「な、なんだ! やめてくださいよ!」
「確かに不気味な事件ですけど……上田教授は解き明かせたり出来ますか?」
「探偵ではないんで、憶測ですが……旦那さんが死んだショックで気が動転し、古手家の娘さんとあっては信仰心も厚かったでしょう……オヤシロ様の存在を確信し、後追い自殺をしてしまうと言うのはあり得る話ですか。ここはオヤシロ様信仰の中心地でもありますし、飛び込む場所としてうってつけでしょう」
自分で言っておきながらなんて残酷なんだと身を震わせる。脳裏に梨花と沙都子が浮かんでしょうがない。
「……しかし確か……死体は見つかっていないんでしょう? だとすればもう一つ、可能性はあります」
「……自殺に見せかけた殺人で、誰かが遺体を隠したと?」
「古手家はダム建設には中立だったらしいじゃないですか」
富竹は無理やり話を切らせようとするかのように、高笑いをあげた、
「……ははは! この話は村では出来ないですね! オフレコって事にしときますか」
「……私も、村に狂った暗殺者がいるなんて……信じたくはないですがね」
二人はもう一度だけ鬼ヶ淵沼を眺めた。
澄んでいる訳ではなく、濃緑色に濁った水面を覗いた。
見入ればどこまでも飲まれ、沈んでしまいそうだ。それがまた不気味に思い、上田だけはつい目を逸らした。
対して富竹は、最後に一度だけシャッターを切った。
「……帰りますか?」
「ええ。調査は終えましたんで」
二人は来た道を戻り始めた。
帰り道、また同じ崖から富竹が落ちかけたので、上田のモノで助ける。
「上田教授ーっ!! うわぁぁ!!」
「掴まれぇおおう!? あーっ!! おううううっ!?!?」
「落ち、落ち……あーっ! あーっ!!」
「「あーっ!! アアアーーッ!!」」
再び崖の上でへたり込む二人。富竹はまた助けてくれた上田に感謝をする。
「に、二度も助けられましたね……!」
「いやなに……自然って言うのは予想外の連続ですよ……えぇ……」
「是非この御恩、お返ししたいですね……」
「それはまたいずれ……」
村が見えて来た所で二人は別れた。
気付けば真上にあった太陽は、西に向かって下り始めている。
「ぐぅー……ぐぉー……」
「オイいつまで寝てんだ! こんの寝太郎めッ!」
「ふにゃっ?」
障子に頭を突っ込んでいた山田を叩き起こし、子どもたちとの約束通り放課後の学校へと出かける。
道すがら、寝ている間に出掛けていたであろう上田にどこへ行っていたのかを山田は尋ねる。
「上田さん、どっか散歩してたんですか?」
「ああ。渓谷の方にある、鬼ヶ淵沼って所に」
「ガスが発生した所でしたっけ?」
「そうだが、俺が確認した限りでは火山の気配はなかった。だからと言って他にガスの発生源は思い付けないなぁ」
「そうだったんですか……尚更、謎ですねぇ……オカルトに片足を突っ込んでる気分……」
「だが思ったより綺麗な場所だったよ。行って良かったなぁ……男の友情も深められたし」
誰かといたような口振りだなと山田は気付く。
「一人じゃなかったんですか」
「村外から来たカメラマンと仲良くなった……聞いて驚け! 名前が俺と同じ、ジロウなんだ!」
「それはまた奇遇でしたね……」
「さすがはジロウの名を冠す者……俺と同じ、筋肉モリモリマッチョマンの天才だ! まぁ少し腹は出ていたがな。次会ったら、俺の考案したロングブレヌダイエットを教えてやるか」
「全然痩せないって苦情来た、あの?」
「黙れッ! あれはやり方を間違えている奴らからの苦情だッ!」
ピシャリと叱ってから、上田は続ける。
「まぁ、そのジロウさん、今度会ったらお前にも紹介してやろう。俺にも恩があるし」
「恩ですか?」
「あぁ……話せば長くなるが、崖から落ちた彼を俺は華麗に駆け寄りそして──おおう!? 知恵先生ッ!!」
校庭で知恵先生と再会し、山田そっちのけで目から星をキラキラ飛ばながら華麗に駆け寄った。
「こんにちは知恵先生っ!! どうでした?『上田次郎の新世界』!」
「大変、参考になりました! 物理学者なのに、こんな細かく日本の風土を調べられて……尊敬します!」
「またじっくり話しませんか? それについては隣町のホテルで、朝まで語りま」
「そぉいっ!!」
山田は近くにあった箒で上田をぶん殴った。
校内の廊下を歩く二人。部外者だが簡単に入れて貰えた辺りは、田舎らしい緩さと言うべきだろう。
上田は殴られて痛む頭を摩りながら、不安そうに呟いた。
「しかし罰ゲームか……なにされるのやら……」
「子どもの考える事ですよ。そんな怖がる必要ないんじゃないですか?」
「子どもだからこそ恐ろしい! それに俺は、もうあいつらを子どもとして見ないぞ……!」
「そんな大袈裟…………でもないのか」
思い返せば部活メンバーの面子が濃ゆいと気付く。
魅音はヤクザの次期頭首。
レナは二人の知る限りじゃ、金属バットで生徒を殴った危ない人。
沙都子は上田の話では、ゲリラ兵が作るようなトラップを仕掛けられる罠師。
梨花は言動と思考が年不相応な、パワフル不思議っ娘。
年相応な人物と言ったら、もしかしたら圭一しかいないのではないか。
「どうなってんだこの村、濃過ぎだろ……学園モノの漫画か?」
「俺の児童期でもこんな濃い奴らはいなかったぞ」
「まぁ……覚悟した方が良いかもですね」
「指詰められるのだろうか……」
「博打で負けた訳じゃないんですから……」
廊下を進むと、突き当たりで見知った人物と再会する。
二人にとっては全ての始まりとも言える存在、竜宮礼奈──レナだ。
「あっ! 山田さんに上田せんせー! 昨日ぶりですね!」
「うおおおおう!?」
動揺を隠さない上田に、山田は肝を冷やす。
だがレナは上田の動揺を、いきなり現れた自分にビックリしたのだ解釈してくれたようだ。
「上田せんせーってば! ちょっとレナが出てきただけで……驚き屋さんなんですね!」
「……ん、まぁ。今のは不意を突かれただけだ。俺に基本、死角はないッ!」
「はぅ! 強がる上田せんせーかあいいよぉ!」
「待て。デジャブが」
「お待ち帰りぃ〜!」
「アウチッ!?」
「……死角取られてどーする上田!」
レナが上田を掴んだ瞬間、昨日ぶりに消失した。
今度は探す事はせず、呆れたように首を振るだけの山田。
「何やってんだあの二人……」
「あるぇー? レナどこ行った……あ! 山田さん!」
「……あっ! 魅音さん!」
続いて現れたのは魅音だ。すぐに山田は彼女に駆け寄り、ジオ・ウエキの件に対する確認を取った。
「圭一さんから話は……!?」
魅音は対して危機感はないようで、笑い飛ばして言った。
「聞いたよ! 明後日、ウチから三億円を盗りに行くってのでしょ? ふはは! 上等じゃん! 取っ捕まえて『ケジメ』付けさせてやるさ!」
「やっぱヤクザだ……」
「そうなったらもう、もしかしたら山田さんの出る幕はないかもね。まぁ、綿流しまでは離れ使って構わないから」
「それは助かります……あ、あの〜……その場合でも金封は」
「無いよ?」
「ですよね」
魅音の後から次々と、残りのメンバーががやって来る。
暗い顔をした圭一を、逃げないように梨花と沙都子が両サイドから捕らえて連行していた。どうやら罰ゲームから逃れようとした彼を捕縛したようだ。
「あらっ! 山田さん昨日ぶりですわ!」
「上田より何倍も凄い山田なのです」
『聞こえてるぞーっ!!』
連行されている圭一はしょんぼりと項垂れている。
「うぅ……なんであそこに罠があったんだ……!!」
「圭一さんは行動パターンが単純ですもの! 席から一番近い窓から逃げるなんてすぐに分かりましたわ! を〜っほっほっほ!」
「くっそぉぉ……! もう一つ隣の窓から逃げりゃ良かった……!」
良く見れば圭一は後ろ手に手首を縄で縛られ、沙都子に手綱を握られている。
途端に朗らかだった様子から一転し、不安そうな顔付きで山田に小声で話しかける魅音。
「………あの、山田さん」
「分かってますよ。魅音さん……大丈夫です」
圭一へは鬼隠しの事は話すつもりはないと、改めて伝えておく。
思えばこの面子の中、圭一が年相応な少年でいられているのは、知らなくても良い事を知らずにいられているからだろうか。
部室に入るとレナと上田は先に着席しており、「いっせーの」をしていた。
「いっせっせーのっ! さんっ!」
「ぬぅ!?」
丁度、上田が負けて終わったところだ。
魅音が「はいはーい!」と部活の開始を告げたところで、圭一の縄は解かれる。
痛そうに手を振る彼にこっそり近付き、山田はマジックを一つを教えてあげた。
「圭一さん。手首を縛られる時、こうしてましたね?」
握った指と指を付ける形で、両手を合わせて見せ付けた。
「え? そ、そうっすけど……」
「こうした状態で縛られると、手の平を閉じた時に隙間が出来て縄抜け出来ますよ」
そう言いながら山田は、握った指を上へ向けるようにしてを手首を開く。
「へ!?」
手を開いて、また閉じるを繰り返している内に原理を理解したようだ。
開いている際の手首の横幅の分、閉じた時に余剰を作り、縄を緩ませると言ったものだ。
「これで次から逃げられますね」
「……ほぉお……!……山田さん……あなたを、師匠って呼んで良いっすか……!?」
「……まぁ、何とでも……」
変に懐かれたなと困り果てながら、圭一から浴びせられる憧れの眼差しを前に、顔を背けて見えないところで苦笑いをする。
「……師匠、素敵……」
「星を飛ばすな」
圭一の目から山田に向かって、キラキラ星が飛ばされた。
一般的に火口湖は、空になったマグマ溜まりに水が入り込んだ物の為深いらしいです。
また規模が大きい物は 地震でズレた断層に水が溜まった断層湖と呼ばれ、これによって出来たのが諏訪湖、琵琶湖です。
ニオス湖の悲劇は、雛見沢大災害の元ネタらしいものです。ニオス湖は火口湖であり、水の底に火山ガスが充満していたのが、湖底爆発によりガスが噴出したのが原因らしいです(諸説あり)。
上田と富竹の「イテテテ」の下りは、「ピカルの定理」のとんこつくん。