Bad B*tch 美学 ~ なぜゆるふわNENEはちゃんみな、HANA、BMSG、SKY-HIをDisったのか
みなさんこんにちは
毎日企業なんかに行って
人間関係の揉め事やコミュニケーションを教えております
コエダスのじゅんです
同時に長年のHipHopファンであり
密かにラッパーとして活動した過去もあったりします。
偶然なんですけど!!
今日ちょっとだけ時間があったので
今盛り上がっているこの話題を取り上げたいと思います。
ゆるふわギャングNENE、ちゃんみなをディスる
HipHop好きの若者に絶大な支持を得るユニット「ゆるふわギャング」
の女性ラッパーであり、
音楽、ファッション、生き方、全身の入れ墨なんかでも
一部女性の強烈なアイコンとしても人気であるNENEが、
個人名義で突然この曲を発表し、驚かせました
めちゃくちゃ悪口ばっかり言っている曲です。
用語解説
これを、HipHopでは「ディス曲」と言い
誰かの悪口を曲にして出す事は
「HipHopの正当な行為」として受け取られています。
よくあるし、HipHopという文化の楽しみ方の一つです。
そして、このディス曲を出された相手が
ディス曲を返すと成立するのが「ビーフ」という
「曲を使っての喧嘩」です。
有名なので言うと、
本場USAでは、超トップ同士の
Kendrick LamarとDrakeのビーフが去年大盛り上がり
Kendrickのディス曲「Not Like Us」は3.6億回再生され
そのままグラミー賞まで取ってしまっています。
日本でも、人気グループBAD HOPと舐達麻(なめだるま)の
ビーフがとても話題になりました。
なぜNENEはディス曲を出したのか?
事の経緯としては
最近出た人気グループHANAの新曲「Burning Flower」が
NENEの曲「HEAT」にコンセプトとして似ており、
特にサビの「あちー、あちー」と「Heat, Heat」がほぼ一緒だと
私の曲からアイデア取ってるじゃないか、という事です。
これが、一番表層的な文句です。
NENEの真意その1「文化盗用」
表層的、とはどういう事かと言うと
ただ単に曲が似ているとか、
初めてこういうパクリが起きた、とか
そういう事でわざわざこんなに怒っているわけではないのです。
そこにある大事なキーワードは
文化の盗用 Cultural Appropriationです。
これは日本ではなかなか馴染みがないですが
米国などではよく問題になる行為で
常に議論が起きる話題です。
文化盗用に関しては、
とてもわかりやすいNoteを見つけたので貼っておきますが、
「自分が属していない文化のものを
その文化への敬意や文脈が無いのに表層的に真似る事」を指します。
このNoteの例え
キム・カーダシアンが下着ブランドを「KIMONO」とした例が挙げられる。
そこには本来の着物に対する理解もないまま
「なんかイケテルからつけちゃえ!」というスタンスが見え
失礼だよね!!という意見が出るという事です。
じゃあ今回のは、
何がどう文化盗用なのか、というと、
そこにはHipHop文化が長年苦汁をなめてきた、
恨み、もしくは毒素が存在するのです。
HipHopがPOPSに恨んでいる事
それは、自分達の文化の一つ、ラップ、ラッパー的なふるまい、
ファッションやスタイルを
POPSのシンガーやアイドル達が
軽々しく盗用してきたよね!という事なのです。
これは、ここ何十年も行われてきた行為であり、
その度にHipHopファンやアーティストはゲンナリとしてきました。
具体例を挙げればキリがないですが、
例えばジャニーズ事務所のアイドルはよくラップを使ったり
普段違うジャンルの曲を歌っている歌手が、
途中ラップを入れてみたりしているのですが、
どちらかというと、彼らそのものに文句があるというより、
「売れる為にラップとかいれようぜ」とか
「この歌手のブランドとしてラッパーぽくしようぜ」とか
そういう事を軽々くしてきたプロデューサーやレーベルに対して
HipHopアーティストは嫌な想いをしてきたわけです。
お陰で日本ではラップもHipHopミュージックも
文化ではなく、どちらかといえば「ノリだけの音楽」という受け取られ方をしている事にも、HipHopファンはイライラしてきました。
例えばですが、
日本の名作マンガ「攻殻機動隊」の映画版で、
主人公「草薙素子」役が日本人ではなくスカーレット・ヨハンソン
が選ばれた際も「何故日本人役を白人にやらせるんだ」と大炎上したように
ラップを楽曲にいれたいのであれば、
普段からラップをしているアーティストとやればいいのに
プロモーション目的からアイドル達に半端な事をさせるというのも
「元々の文化やそこで活動している人達をないがしろにしている」
という行為になるわけです。
それで言うと、まさにNENEも参加したこの曲は
メジャーなTVドラマ主題歌でありながら、
きちんと「本物の」ラッパーを使ってコラボしている、
敬意ある作品となります
そんな事はここ何十年も繰り返され、
その度に嫌な想いをしてきた業界の恨みを
HipHopの住人であり、表現者であるNENEも受け継いでいる中で
今回のHANAの表現です。
更にHipHopが怒っている理由
残念ながらまだあります!!
これもまた、HipHopの文化として「許せない行為」というのがあります。
それが「REALかFAKEか問題」です。
用語解説
HipHopにおいてREALであるという事はとても重要な価値観です。
REALの定義には色々ありますが、少なくとも
「嘘をついていない」という点はとても重要です。
特に、売れたりお金を稼ぐために嘘をつく行為は
HipHop文化が最も嫌いとする行為で、これをセルアウトと呼び
それをしているアーティストはかなりの悪評を生みます。
今回のHANA、そして以前も問題になった大ヒットグループXGでも
今最も熱い問題が「自分達で歌詞を書いていない(作家が書いている)」「ラップしている本人が心から思っている歌詞ではない」「本当に起きた事ではなく脚色されている」「(ファッション、ダンス、立ち振る舞いが)自分達の表現ではなく、プロデューサーによって指示された通りにやっている」という事です。
これはHipHopにおけるFAKEな行為に当たります。
HipHopは音楽において唯一
「歌詞が本当(REAL)でないといけない」のです。
HANAもXGも、オーディション番組で選ばれた
「歌手やアイドルになりたい」人達であり、
彼女たちは「HipHopの住人」ではないわけです。
それを「HipHopぽく飾ってふるまっている」事は、
許せない行為なのです。
それが
誰かが言わなきゃなって思ってた
汚ねえ音楽業界
~~
コピー品しかできない
売れればいいのか、稼げればいいのか
~~
腐った音楽業界
子供たちを騙した金で食う寿司はうまいか
という歌詞の意味です。
今回のNENEのOWARIを聴いても、
HANA達には文句を言っていない。
メンバーは「指示に従っているにすぎない」事は彼女もわかっている。
だからこそ「一番HipHopがやって欲しくない事をやるなよ」
という事で、プロデューサーであるちゃんみなと
レーベル代表のSKY-HIをディスっているわけです。
そこには
「あなた達はこのルールを知っているはずだよ」という前提があります。
SKY-HIは元々アイドルグループAAAでありながら、
HipHop文化をきちんと学び、
ソロでラッパーとしてきちんとHipHopを表現してきたアーティストです。
それなのにレーベル運営し始めたら、それをするのかよ、
という怒りがある。
「作ってきた側である」という自負
これは僕の予想ですが、
HipHopと言えど、世界中に広がり、時代が変わる中で
それぞれの変化や進化をしています。
ここ10年日本のHipHopは随分と変わって来たし
特にフィメールラッパーと呼ばれる女性達の活躍は
目覚ましいものがあります。
男性中心だったHipHopにおいて
その中でやり続ける気概と
HipHop文化への理解と
独自の表現やスタイル、そしてスキルがある
本当に数少ないフィメールラッパー達が
ここ最近の日本のHipHopフィメール文化を作ってきたと
言うのはけして大げさではない。
NENEは自分がその一人であるという自負もあるし、
ファッションや表現は「自分達が作ってきた」という想いがあるから
それを安易にマネするなよ!
という気持ちがあるのでは(予想です)
ここ最近のフィメールラッパーを象徴するような曲がこの
Bad B*tch 美学 Remixです。
日本を代表するフィメールラッパーが集結して自分達を表現しています。
実はゆりあんレトリバーが参加しているんですが、めちゃカッコいいです。
用語解説
Bad B*tch
元々この「ビXX」という表現は、元々悪口ですが、
HipHopにおいて、自分達を指して言う場合に限り
「誇りをもっている」という意味あいが出ます。
そこには例えば
「昔不良をやってB*tchと呼ばれてきたけども、
今は自分にまっすぐに生きているよ」という意味にも
「世の中、特に男にこび売っているような
良い子ちゃんたち(皮肉)とは違うんだよ」というような意味で
使われています。
曲では「自分を軸にして生きている誇り高き女」というような意味合い。
こういった曲も出して「筋を通している自分」を表現している
NENEが、まがった事を許さない、という意味で
OWARIを出す行為は「ブレていない」わけで
僕はとてもカッコいいし、HipHopだなあと感じるわけです。
ここまでをまとめますと、
NENEはただ単に曲のコンセプトが似てた事に怒っているのではなく
「こういうこと」をずっとやってきた音楽業界のビジネスマン達と
今回それをわかっているはずなのに
やっているちゃんみなやSKY-HIに
「HipHopの礼儀を守れよ」とラッパーを代表して怒っているのです。
SKY-HIがアンサーしたら「違うんだよ」
さて、この曲を出してから数日
上述の「ビーフ」の流儀にのっとって
返答「アンサー曲」を返してきたのが
名前も出されたレーベルBMSG代表SKY-HIです。
HipHopにおける「正しいビーフの仕方」として、
「ディスられたらなるべく早く返す」
「相手の歌詞に反論する」
「相手のやっている事や過去の曲を引用する」
などの文化的作法があるのですが、
これらを完璧にそろえているあたり、
やはりSKY-HIは「HipHopを知っている人」なわけです。
最近はラッパーでも時々、
Twitterやインスタで言い返すとかやる人がいて
ファンから「残念」という評価がくだるのですが、
さすがそのあたりはよくわかっている。
この曲自体クオリティも高いし、
ラップもうまいし、
表現も上手なのですが、
僕自身は
このアンサー曲は「趣旨がずれている」
と思っています。
このアンサーは上手に返されているように見えますが
1,元々のディスの本旨(文化盗用)へのアンサーが無い
2,攻撃がほぼ、NENEに対する悪口とマウント
だからです。
実際「言いたい事はわかるけど」と言って
自分の非を少し認めちゃっているのも含めて
文化盗用に関しては言い返すロジックが無いのだと思います。
それに対して、
TV、夢を叶えるのは俺の方、ファーストクラス、など
「お前とはレベルが違うんだよ」というディスは
相手がSKY-HI個人をディスってきた場合には良いですが、
今回のように
業界のあり方に対して文化を代表して表現している
勇気あるラッパーに対しては、
大人げないというか、お金や人気マウントはダサいんじゃないかなと。
そしてもう一つ、こちらの方が超もったいない事なんですが、
NENEは
女同士のやりあいをしたい
んですよね。
これ何故かというと、
「Bad B*tch 美学 Remix」でもある通り、
NENEは現在の日本HipHopの女性活躍推進をしているわけです。
弊社も企業向けに
女性活躍推進のワークショップなどやっております。
いつでもどうぞ
(宣伝)
https://note.com/coedas/n/n3cce475113fd
だから、
行為自体に怒りはあるものの、
この件に関して女性ラッパー同士がビーフをしたら、
HipHop界は更に盛り上がるし、
日本の女性達への応援歌にもなるわけです。
「私達は男に媚びて後ろを歩くような
昔の女じゃないぞ。
自分の美学を持って独り立ちしているんだ」
というNENEやフィメールラッパー達が一貫して主張してきた
言葉と行動が伴うわけです。
だからNENE自身もこのツイートです
同時に
このディスを通じてはっきりした事もあって、
それは
NENEはちゃんみなに期待をしている
という事です。
そもそもディス曲をわざわざMVまで撮って出す行為は
「正式な果たし状」なわけで、
どうでもいい相手にはやらない事。
そして「アンサーが返ってくることを期待している」
という事は、
ちゃんみなをHipHopの住人で一人前のラッパーだと思っている
という事になるのです。
実際HANAのメンバーに全く触れていない事から、
そういう「搾取されている側の子供たち」(OWARIの歌詞より)
には興味がないわけです。
最後に「ビーフ」の価値とは?
今後、この件がどんな進み方をするかわからないんですが
HipHopというのは、現在のSNS文化と非常に相性が良く
こういったリアルタイムでドキドキするような事を
トップアーティスト達が繰り広げるわけです。
そして話題になれば
参加者が全員注目を浴びる事で得をする。
それは全員がわかっている事なので、
NENEがビーフを始める事で
NENE自身を含めて
ちゃんみなも、HANAも、SKY-HIのレーベルBMSGも
全部盛り上がる事を期待しています。
つまり、嫌いなようで嫌いじゃないんですね。
言っている事は筋が通った上で
正しくやりあおうぜ、という
実はかなり正しい作法の行為だという事を
みなさんに知っていただきたいなあと思って書きました。
それではみなさん
美学を通した良い一日を
じゅんでした。
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