運転免許は失効しても、「やむを得ない理由」があれば、一定期間中に学科や実技の試験を受けずに再取得できる。
服役中の受刑者にも、その機会が認められている。
だが、「不合理」な区別によってその機会を与えられない人たちがいる。
少なくとも15年前から、改善を求められている法務省の姿勢は変わらない。
塀の中で、「理不尽」が繰り返されている。【塚本紘平、山口朋辰】
<主な内容>
・「なぜこんな目に……」
・怒りをぶつける場所が分からず
・国会でも質疑、「どう考えても不合理」
・「改めて司法に問いたい」
ハンドル握る未来、描けず
「これまで運転免許があったからこそ、生きてこられた」
トラックドライバーだった男性(54)は自身の半生をそう振り返る。
中学校を卒業すると、建材を運搬するトラックの助手席に座った。
その後、19歳で運転免許を取得し、運送会社で働き、北は宮城県、南は大分県まで荷物を運んだ。
一晩中、トラックを走らせて目的地にたどり着いた時の達成感は「ひとしお」だったという。
インターネットの通信販売が盛んになり、国内の物流量は増加する一方で、ドライバーが減り続けている昨今。
「私のような人間でも、社会に『必要とされている』と思うこともあり、更にやりがいを持つようになっていました」
男性は名古屋刑務所で服役している受刑者で、満期出所の予定は7年半後だが、社会復帰した際は、再びハンドルを握って生活したいと思っていた。
ただ、今はそんな未来を描けなくなったという。
なぜか。
男性の代理人を務める大野鉄平弁護士は、こう主張する。
「裁…
塀の中で繰り返される、運転免許を巡る「理不尽」