「家族が崩壊、日本は滅亡」夫婦別姓反対を自民に迫った保守系団体
先の通常国会で選択的夫婦別姓の導入をめぐる議論は各党の溝が埋まらず採決は見送られた。賛否が割れていた自民党は、参院選への影響を懸念し、党としての意見集約すら見送った。この間、いわゆる保守系団体が党に対し、制度導入の阻止に向けた働きかけを続けていた。
全国で展開された反対運動 地方議員署名は1233人
「選択的夫婦別姓は家族が崩壊し、日本が滅亡する恐ろしい法案だ。我々は決して許してはならない」「知り合いに伝えて、参院選で真っ当な国会議員に一票を入れることが夫婦別姓を防ぐ一歩だ」
通常国会の会期が残り1カ月余りとなった5月11日、岡山市で開かれた別姓制度の問題点を学ぶ勉強会で主催者は制度導入に反対するように呼びかけた。主催したのは民間シンクタンク「日本政策研究センター」の支部である「平成ビジョンの会」。同センターの代表である伊藤哲夫氏は故・安倍晋三元首相と近かったことで知られ、保守系の運動団体である日本会議の常任理事を務める。ゲストには、制度導入に反対し安倍氏側近だった自民の衛藤晟一参院議員が招かれ、地元県議や市議ら約50人が参加した。
同センターの担当者によると、全国で地方議員や団体などを対象にこうした勉強会を実施。街頭活動などで配布したリーフレットは約6万枚にのぼり、反対運動を展開したという。
こうした動きは自民所属の地方議員にも広がった。中心となったのは日本会議に所属する都道府県議らでつくる「日本会議地方議員連盟」だ。
別姓の導入阻止に動いた日本会議
「これだけの自民議員が夫婦別姓に反対している。もし自民党が賛成するなら、参院選でこの地方議員たちは動かない」。4月21日、議連幹部は自民の地方議員1647人(都道府県議・政令指定都市議)のうち約75%にあたる1233人の反対署名を携え、森山裕幹事長に迫った。別の日には、党の検討ワーキングチーム(WT)座長の逢沢一郎衆院議員にも直談判した。
日本会議は1997年、「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が合流して発足。前身の団体時代から憲法に家族を尊重する家族条項の導入を訴えるなど、家族の絆を重視してきた。その前年に、法相の諮問機関「法制審議会」が別姓制度の導入を答申しており、「夫婦別姓は家族を破壊する」として反対運動を展開してきた経緯がある。
今回、運動を活発化させたのは制度導入が現実味を帯びたからだ。昨年の衆院選で自民は少数与党に転落。衆院法務委員会の委員長ポストを立憲民主党に奪われ、立憲の野田佳彦代表は「自民党を揺さぶる意味では非常に効果的な委員会だ」と意欲を見せていた。
団体の動きに、自民の国会議員は呼応した。WTの幹部が「知恵袋の一人」と挙げたのが日本会議の政策委員長を務める日大名誉教授の百地章氏だった。
百地氏は、別姓導入を認めず、旧姓を併記した住民票などの公的証明書を提示すれば、他の公的・私的書類には旧姓の単記使用だけでも可能とする「百地案」をまとめた。その後、WT幹部がいくつかの独自法案を準備する過程で、百地案が参考にされたという。
結局、自民は党内の分断を回避するため独自案の提出は見送ったが、WTが最後に取りまとめた「基本的考え方」では「旧氏の単記も可能とする法制化を含めた基盤整備」の文言が入るなど通称使用の拡大に重きが置かれた内容になった。
WT幹部は「もう少し(別姓)推進派に寄り添った文言があってもよかったが、自民の多くの議員が保守系団体に支えられている。参院選前に自ら支持基盤を壊すことは出来なかった」と振り返った。
選択的夫婦別姓の賛否にみる年代差、若年層は? 高齢層はどう変化?
「選択的夫婦別姓」についての全国世論調査(2月15、16日実施、電話)の結果を分析伝えます。どの世代も賛成が反対を上回りましたが、年代ごとの「賛成」率には、大きな開きがありました。その要因はどこにあるのか、掘り下げています。
夫婦の姓をめぐる自民党の議論と保守系団体の主な動き
1月30日 日本会議地方議員連盟幹部が森山裕幹事長らに旧姓の通称使用の法制化を要望
2月5日 自民党議員の政策集団・創生日本が通称使用拡大で進めていくことを確認
2月12日 党が「氏制度のあり方に関する検討ワーキングチーム(WT)」で議論開始
3月12日 日本会議などが主催し、通称使用の法制化を求める国民集会を開催
5月30日 衆院で野党が提出した別姓制度の導入法案が28年ぶりに審議入り
6月3日 党WTが「基本的考え方」を党総務会に報告し、結論の先送りを確認
6月6日 日本会議地方議員連盟幹部が、森山氏に参院選公約に旧姓使用の法制化を明記することなどを盛り込んだ要望書を提出
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