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MinisforumやBeelinkといった中華ミニPCはどこが作っているのか

MinisforumやNIPOGIといった「格安パソコン」を適当に買ってあれこれ調べていたら、中華ミニPCにやたら詳しくなってしまった。

noteにも「このブランドのパソコンは実は中国の云々で」といった記事がいくつもある。けど、どこかで偶然知ったことや検索結果を並べているだけだったりで正しい情報はほとんどなく、Redditなどをみても網羅的、体系的にまとまった情報はみつからなかった。

ので、この記事では「たくさんある中華ミニPCはどこが作ってるの?」を中心にまとめてみる。きっと、これまでの似たような記事同様、何度も修正が入るだろう。


まず、日本に限らず 世界中で売られている中華ミニPCを「作っている」のは次の5社だ

  • DTET(Dongguan Tuofuton Electronic Technology|东莞市拓孚顿电子科技有限公司)

  • CYX(Shenzhen CYX Industrial|深圳创盈芯实业有限公司)

  • MeiGao(Shenzhen Meigao Electronic Equipment|深圳市美高电子设备有限公司)

  • AZW(Shenzhen AZW Technology|深圳市安卓微科技有限公司)

  • GMK(Shenzhen GMK Technology|深圳市极摩客科技有限公司)

うむ、知らん会社ばかりだ。

ほぼほぼ深圳(深セン)に拠点を置く。このわずかな面積の都市から、アマゾンやアリエクのセールのたびに大量のミニPCが世界中の技術愛好家に供給されている。


では、上から順にみていく。

まずは DTET。直販ブランドとして Topton をもつが、有名なのは AOOSTAR だろう。

AOOSTARは「DTETが製造した製品(Topton)のグローバル販社であるShaanxi Wuhu Network Technologyが持つブランドのうちのひとつ」だ。他には KingnovyPC、CWWK、SkyBarium、GenMachine、TexHoo、Mijun、ZXIPC、ZKMagic、Eglobal、SZBOX……とにかく、たっくさんのブランドがある。

そう、これが中華ミニPCの世界だ。私たちには違和感があっても、中国では当たり前だ。Xiaomiのような大手企業も等しくこの思考で、RedmiやPoco、Mijiaを同時並行で製品ラインをかぶらせながら展開している。

で、私たちが日本のアマゾンでみかけるAOOSTARのパソコンは、中国のDTETが製造しているToptonがベースになっている。それをグローバルに販売する会社……というと商社のようで聞こえがいいけど、実態としてアフィリエイター が国ごとに複数ブランドをもってネット通販で売りさばく「affiliate relabeler」と呼ばれる業態だ。

なので、販売の主軸はネット広告による露出や「ナラティブ」な価値訴求などではなく、「案件」を喜ぶYoutuberなどアフィリエイターに新製品を配りまくって、製品サイトではなく「商品ページ」のリンク貼って紹介してもらう最短の方針をとっている。

だから「AOOSTARのパソコン」というよりは「AOOSTARというアフィリエイターが自分のブランドをつけて売っているパソコン」を、私たちが孫アフィリエイターによるYoutube案件動画やアマゾンさくらレビュー、noteの記事なんかを見て「安いのにすごい!」とマウスカチカチする感じだ(ちょっと悪意)。


続いて CYX。日本で展開するブランドでは NIPOGI だ。

CYXは直販ブランドはもたないようで、NIPOGIは「Shenzhen Shanminheng Technologyの傘下にあるCYXが製造した製品をグローバルに販売するMinipc Unionグループが複数持つアジア向けブランドのうちのひとつ」だ。ややこしいね。

この「Minipc Unionグループ」は実態がよくわからず、まあ、つまりアフィリエイターなのだろう。

  • アジアや英国、ドイツ、イタリア:NIPOGI

  • 米国やカナダ、メキシコ:KAMRUI

  • 米国やドイツ、イタリア、フランス:ACE MAGICIAN

  • 米国やカナダ:ACE MAGIC

  • 米国:Ctone

米国でブランドを使い分けすぎな気がするけど、ほかにもAcePCやOaslaoなどすでに使われなくなったブランドが多々あるようで、わりと適当に見える。ちなみに外箱はどれも「Mini PC」だ。


で、MeiGao(美高)。みんな大好き Minisforum だ。

私もMinisforumはかれこれ9台買ってきた(X400、N40、UM350、UM480を3台、UM560を2台、UM790Pro)。日本でもっとも受け入れられている中華ミニPCブランドだと思う。

設計製造を担うMeiGaoは2018年設立ながら、そのグローバル販社たるMicro Computer (HK) Techは2012年設立ってことで「13年にわたる研究開発とイノベーション云々」みたいにうたう ことが多い。Micro Computer (HK) Techの傘下にMeiGaoがあるのかな、と思うと、日本での同法人の登記(みたいなもの)ではフリガナが「メイガオ……???」とか、いろいろとゆるい。

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公式の沿革は画像の日本のサイト(.jp)とグローバルの日本語サイト(.com/jp)で「異なる」。後者では同じストーリーながら正しく「Minisforumは2018年に設立」としている。
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製造する美高(メイガオ)电子(ディエンズー)设备(シェーベイ)有限公司(ヨウシェンゴンスー)とは微妙に違うからグループ企業なのかも。もはやどうでもいいけど。

やや複雑なのは、MinisforumにはMeiGaoだけでなく複数のODMモデルがある。そして、MeiGaoはまたMinisforum以外にもODM/OEMをしている。Minisforumが「複数ODMの寄せ集めブランド」と認識されることがあるのも、そんな背景からだろう。

別ブランドだとKOLDIX、Coofun、CSLなどがある。

売り方は前述の中華ミニPCと変わらない。日本ではマーケティングの一環としてMakuakeのクラファンも多用していた気がする。あと、Minisforumは「広報のお姉ちゃんがかわいい」と話題になった気がする。


続いて AZW。有名ブランドである Beelink だ。

やや高品質パーツにこだわる傾向があって、ちょっと高級感がある……気がするけどどうだろう。

といっても、もともとBeelinkはAZWのブランドとしてGMK(後述)のODMを受けて売っていたのが、次第に「AZW自らがBeelink向けに製造」に移行した経緯がある。だから、Beelink=AZWとは言い切れず、前述のMinisforumのように「AZWが作ったパソコンをBeelinkブランドとして売るけど、他社ODMもあるよ」といった感じだろう。

AZWはBeelinkのほかにTrigKey、Bosgame、ZeroCut、IPCといったブランドで扱う。グローバル販社の存在はよくわからなかったので、MOMENTPLUSがBeelinkの上にあるような雰囲気がありつつ、私は経緯などふまえてとりあえず「Beelinkがアフィリエイターかつ直販ブランド」といった認識をしている。


最後に GMK。ブランドは GMKtek だ。

GMKが製造した製品(GMKtek)を台湾で GEEKOM ブランドで販売するShenzhen Jiteng Network Technologyがグローバル展開も担う。まあ、台湾と書いたけど台湾には会社は実在しない。「台湾の会社という設定」のブランドで(叶姉妹みたいな)、やっぱり実態のないアフィリエイトブランドなんだ。

別ブランドだとMLLSE、ZSUS、Acoveita、SOYO、Ninkeaなどがある。中華ミニPCのブランドとしてはもちろん、ベンダーとしてもわりと最後発で、グローバル展開に全力といったところ。


というわけで、世界中で100を超える「新興」ミニPCブランドがひしめくのに、そのほぼ100%を設立から間もないわずか5社が手掛けている。

そして、どこもあとからじわじわとやってくる「サポートにかかるコストの苦しみ」を経験し始めたころだ。「デバイスが技術愛好家(Geek)から一般に広がると、そのコストは売上高と比例しないで一気にはねあがる」から、いまの中華ミニPCのビジネスは本質的に持続性がないんだよね。

そこでは、中国企業のビジネスに一貫する「できるだけ早く失敗しよう(Shift-left testing)」といった思考を理解する必要もありそうだ。このコスト重視の反復志向の取り組みは、中国のファストファッションと同じようにテストプロセスの前倒しを繰り返した結果(Shift-left)、「とにかくまずは市場に出そう。それこそがもっとも効率的なテストだ」になってしまった。

これによって私たちは「最新プロセッサー搭載モデルをめちゃくちゃ早く、しかも驚く価格で!」手に入れられる。もちろん、テスト結果が悪ければブランド価値は毀損する。けど、それに備えてたくさんのブランドを並行で展開しているから、炎上ブランドはひっそり廃止するとか、まあ、どうにでもなるわけだ。ブランドWebさえろくにつくっていないのだから。

身近なアップルは、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)重視の反復志向の取り組みをしていて、私たちはそれに慣れてしまっている。ブランドには価値があり、その維持のために長期的なストーリーテリング、価値観、倫理観、それらを顧客の信頼に結びつける努力を重ねるのが「普遍的な」ビジネス思考だと信奉している。

だから、ブランドとは「使い捨てのために利用」するものであって、ブランドの一貫性やアフターサポートへの配慮ゼロな中華ミニPCの世界はなかなか理解できない。

でも、私たちだって、長年にわたる信頼の積み重ねやその会社の実態を価値として認めて、他の同じような製品よりも高い対価を支払おうという行動はとっていない。「格安」が過酷な労働環境や児童労働によるものではないとか、調べたりもしない。「Youtubeでいい感じにおすすめされてた」「noteでアマゾンセール情報見つけた」でマウスカチカチしてる。それこそが、この独特なビジネスモデルを支えているんだ。


とまあ、紹介Webも持たず、持っていても3-4年前で更新が止まっているようなブランドや会社ばかりなのに、よく調べてまとめたなと自分でも思う。この記事によって、謎ばかりの中華ミニPC選びが少しでも楽になるようだったら幸いだ。

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2024年10月からnote始めました。妻とラパーマというネコと東京で暮らしています。 LinkedIn - https://www.linkedin.com/in/takjp/
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