印パ空中戦125機激突の衝撃――なぜ「世界4位」インドの最新鋭ラファールは中国製J-10CEに撃墜されたのか?
Link-16に突きつけられた限界
記者会見で説明に立ったパキスタン空軍副参謀総長アウラングゼーブ少将は、撃墜したインド空軍機の機種や位置について説明した後、傍受したラファール編隊の通信音声を公開した。 この編隊は「Godzilla 3」と「Godzilla 4」のコールサインで飛行していたが、Godzilla 4は編隊長であるGodzilla 3の位置や状況が把握できなくなっており、Godzilla 3も呼びかけに応答していない。そして、そのままGodzilla 3はパキスタン軍のミサイルにより、空中で爆発しているのである。これでは戦闘どころではない。 戦闘機の編隊僚機は、今回のように編隊長を目視できない場合は、自機のレーダーで編隊長機を捕捉するか、データリンクによって得た情報を使用する。しかし、この編隊はパキスタン軍による電子妨害(ECM)によって、完全に連携を絶たれていた。パキスタンの電子妨害が飛行中の電子戦機によるものなのか、それとも地上施設によるものなのか明らかではないが、インド空軍のキル・チェーンは、パキスタン側の電子戦によって無効化されたのだ。 ここで考える必要があるのは、日本を含む西側諸国が依存しようとしているLink-16データリンクの脆弱性だろう。Link-16データリンクは1980年代に提唱されたもので、NATO諸国の戦術データリンクとして採用されたものだ。それまでのLink-4を基盤にしたシステムとは異なり、時分割多元接続を使ったLink-16は、妨害が困難で堅牢なシステムだとされていた。しかし、既存システムとの入れ替えには巨額のコストが必要で、各国での整備には非常に長い時間がかかり、日本でも近年やっと整備が進んだところである。 その間、各国の安全保障環境は大きく変化した。中国の電子戦技術は飛躍的な発展を遂げており、日本に導入が進められていた10年前には、既にLink-16も妨害が可能になっているという話は聞かれるようになっていた。今回のパキスタン航空戦は、その懸念を一層強める結果をもたらしたのである。
ステルス優位崩す通信無力化
周知のとおり、米国空軍の戦力整備は「ネットワーク中心の戦い」をうたっており、ステルス機をはじめとする高性能航空兵器をデータリンクで結ぶことで、強力なキル・チェーンを構築することが基軸コンセプトになっている。 これを機能させるLink-16が無効化されれば、高価な戦闘機も任務を果たすことはできず、場合によっては多大の犠牲を強いられる。 西側各国は、精力的に今回の戦闘を分析しているはずだが、懸念を完全に払拭できるとは考えにくく、その対応には再び長い時間がかかることだろう。
ブースカちゃん(元航空機プロジェクトエンジニア)