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 §13






「ん・・・・っ・・・」



身体を離すその刹那に、
りかさんの膝は、巧みにわたしの内側を擦り上げた。
ほんの一瞬、なのにそれはわたしの拙い舌などとは比べ物にならない。
脚の付け根から背筋に沿って、
電気が流れるみたいってこういうのをいうのだろう。




あっけなく、今まで込めていた身体の力が抜ける。
離された唇は、間が抜けたみたいに、
半開きのまま。
擦れ合った感触は、まだ皮膚に浮くように残ったまま。
わたしの下から、するりと抜け出してりかさんは微笑んで。







「シャワー浴びてくるわ。」















あたしは膝を伸ばすのが精一杯なのよ。
背筋を伸ばして、口の端を上げて。
きょとんとした顔してたわ、ベッドの上のあなた。
まあるい肩を剥き出しにして、乱れた裾から膝小僧がのぞいたまま。



勘がいいのね、もう気持ちいいところがわかってる。
舌が絡むそばから、あたしは溶けてしまいそうで、
声なんか出ちゃいそうで。
もう、限界だった。



バスルームで、ドレスを脱ぎ捨てる。
あなたに感じて、汗が薄く張り付いてることなんか、
気付かれていないわよね。
見透かされるのが、なにより嫌い。
ああ、どうしてあたしって、
肝心な処で、いらないカッコつけちゃうのかしら。



鏡の向こうのあたしは、目が蕩けたまま。
こんな顔、見せていたのかしら。



あんな可愛い子に、感じさせられっぱなし。
あたしはいいオトナなんだから。
ねえもっと、って言いたくなってしまう。
だけどまだ、言いたくない。
だけどまだ、言わせたい。
我儘で見栄っ張りなの。


バスタブにつったって、シャワーの栓を勢いよくひねる。
ぬるいお湯を頭からかぶる。


抱きたい、抱かれたい。
どっちでもできるはずのあたしたちの身体。
なのに、どっちも乗り気がしない。
あなたとは、抱きあいたい。
なのに、それが伝えられない。
いまはまだ、抱きしめるだけ。
腕の中のあなたを見て、安心するあたし。
まだ、あたしを見上げてくれるかしら。
セコいったらありゃしないわね。




もやもやと身体にのこるこの感触を、
さっさと洗い流さなくちゃ。



ココナッツオイルの石鹸、甘い香りが立ちのぼる。
まだくらくらしているのは、この香りのせいに違いない。
あの舌の感触が残っている事に、気が付かぬすふうをする。



気付かないふり、わかってるふり、
タチの悪いのはどっちもどっち。
それしかできない、大人ぶりたいあたし。


結局いつもと同じじゃない、














どうしていつもこうなんだろう。



ぞくっとするほど近づいて、なのに気が付いたらもう離れてる。
りかさんの長い指が、見えない糸を操っているような
操られることすら上手く出来ないわたし。
絡まるどころじゃなくて、直ぐに切ってしまうみたい。
引きあう力、そのバランスが少しずつずれている。




シャワーの音が聞こえてくる。
わたしはベッドで、まだぼうっとしたままで。
こんなんじゃいけない、ゆるゆるとストラップを戻す。
かき回された胸の上に、まだ指の感触が残ってる。
痺れてしまった身体の芯は、まだあの人の熱に腫れたまま。




冷やさなくっちゃ、
頭だけじゃなくて、もっと奥のほう。






緩慢このうえない動きで、わたしはベッドを降りて、
部屋をぐるぐる回ってみても、シャワーの止まる気配が無くて。
入っていったら、どんな顔をするんだろう。
なんてことないじゃない。
だけどもしか眉が顰められたなら、たとえふざけたとしたのでも、
わたし、きっと立ち直れない。
笑っちゃう位、臆病になっちゃってる。



どのくらい好きなのか、その臆病さに思い知らされる。






横目にバスルーム、中庭へ滑り出た。











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