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 §12








ひらひらのスカートの裾がすかすかすで。




そりゃあ、スカートなんだもの、
すかすかなのは当たり前なのだけど。
ダルマとは訳が違う、何となく恥ずかしくて。
しゃらっと肌に吸い付くようなワンピースを、
涼しげに着てるりかさん。
その横で、ぎくしゃくしてるかな、わたし。





なんだかわかんないままに、ご飯を食べ終えた。
香辛料のちょっときつめな、南国の料理。
オードブルだけでお腹が一杯になりそうなお皿。
りかさんはちょこちょこって摘むだけで、すぐにこっちに押し付ける。
「んもう、食べきれないですよう。」
「若いんだから。
 基礎代謝がちがうでしょ。」



にやにやしながら、鮮やかなカクテルを口にして。
口当たりはいいけれど、かなり強いんじゃない、これ?













ぱんぱんのお腹をかかえ、よろけるようにヴィラへと戻る。
デザートのココナッツの甘い匂い、まだ鼻から離れない。
天蓋からふんわりと白いレースの蚊帳がベッドにはおろされて、
御伽噺のお姫様のそれみたいに可愛い。
甘い匂い、可愛いレース、スリップドレスのりかさん。
ぼうっとしそうなのは、アルコールのせいじゃない。



「ああん。もう、寝ちゃおうかなあ。」
高いミュールをいきなり放り出して、
転がるようにベッドにりかさんが倒れこむ。
頬がちょっとだけ、うん、ほんのちょっとだけ染まってる。
「だめですよ。ね、シャワー位浴びたほうが・・・・」
汗一つかかないこの人に説得力無いったら、とか思うけど。
気持ちは分かる、だけどわたしってば突っ立ったまま言ってみる。
枕に突っ伏した顔が、覗き上げるようにこちらを向いた。
大きな瞳に睫がぱしぱししてる。
「あたし、寝たいの。」
唇をぷくりと尖らせて、駄々こねるみたいに。
「そ、そりゃあ・・・わかりますけど。」
わたしったら、まともに受け答えてない。
「だめなの?」




本当は酔ってなんかいない。
結構ザルなのよ、あたし。
でもね、白いドレスのかおるがいるの。
困った顔でもじもじするみたいに立ってるの。
それだけで、もう困らせたくなる、
ああ、どうかしてるわね。



「だめって・・・・」
「ねえ、こっちに来て。」
あたしは突っ伏したまま、手だけでかおるを呼んで。
「言うこと、・・・・・聞いてあげようか。」
くすくす笑いが洩れてくる。
酔ってるのかしら、っていよいよ迷っているのが手にとるように分かる。
ああ、酔うのなんかよりずうっと楽しいじゃない。



扱いかねているあなた、あたしはまだくすくす笑いのまま。
「ねえ、キスして。」
白いベッド、レースの下から囁いた。
「気持ちよかったら、いうこと聞くわ。」





りかさんてば、心っから面白そう。
柔らかいドレスで、丸まるみたいにベッドの上で。
細い明るい色の前髪が、さらさら流れる。
ふんわりした唇がわたしを誘うみたいにして、開く。
思い切ってベッドに片足をかけて乗りあがる。
身体がふわりと沈み込む。
目をぱっちりと見開いて、
さあ、どうするのとでも言いた気な顔してる。





そんなに固まった顔で、のしかかってくるものじゃないでしょう。
レースのストラップ、大きく開いた胸元。
深く刳れた鎖骨の下、柔らかそうな谷間なんか盗み見てみたりして。



ふざけるみたいにりかさんの、長い人差し指が伸びてくる。
鎖骨の下、ほんの少しの膨らみのちょっとだけ上。
首筋から腋の下まで、さざ波が走るみたいにくすぐったい。
指を小さく回しながら、レースのストラップをずらしてく。
「ねえ・・・早く。」
どうしよう、たまらないのだけれど、
だけどがっついたら、絶対呆れられちゃう。
そうっと、そうっと、震えるように顔を寄せて。





細い肩を肌蹴させて、目なんか瞑っているのが愛らしい。
睫長いわね、あなた。
あたしは、勿体無くて目なんか瞑れないわ。
つやつやの唇が、半開き。
舞台でもよくやってるけど、やけに色っぽいわ、今。
あたしの唇に、薄く薄く重ねてくる。



重ねたはいいけど、どうしよう。
りかさんの唇は、あったかくてふっくらとわたしを受け入れて。
それから?とでもいうようにそのまんま。
肩を剥き出しにされたまま、わたしは四つんばいみたいになって、
りかさんの舌を探る。
必死だって分からないように。
感じそうな処を這わせてみる。
ちょっとだけ引っ掻くように、舌をからめながら。
知らず知らず、力が入ってくる身体。
りかさんの指は、別の生き物みたいに肩から鎖骨をいったりきたり。
それより下には、絶対こない。



ああ、やっぱり余裕ないや、わたし。






膝の内側がわたしの膝を触り。
それは脚を徐々に這い上がり、身体が段々近づいていく。
もう布地を通して体温が伝わってくるほどで、
笑うような唇と羽のような指先と、
擦れあうすべすべの脚とで背中の奥がぞくりと走る。







「ん・・・・、お終い。」




いきなり唇が離れた。















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