前述の知人によると、このような学生から教授への嫌がらせが増え始めたのは、コロナ禍が明けてからだ。その理由について、知人は、今の大学生が多感な高校時代にコロナ禍が起き、人とのコミュニケーションがなかなかできなかったこと、ますます激しくなる「内巻」(内部競争)によるストレス、就職難への不安、家庭内での道徳教育の影響などがあるのではないか、と話す。

とくに、年長者に対するリスペクトの気持ちが少ない学生が多くなり、家庭内で過保護にされているからか「王様気分の若者が増えた」と嘆く。この知人は以前、日本の大学に短期間だけ籍を置いていた時期がある。その際、師事した日本人教授と学生との関係性に感動したという。

「日本の若者も以前とはずいぶん変わってきているのでしょうが、日本は中国よりずっと教育環境はいいと思います。学生の先生に対する言葉遣いやマナーがきちんとしており、信頼関係を築いていると思います。むろん、大学や教授によっても異なるでしょうが、中国ではあまりにも若者同士の競争が激しすぎて、他人を蹴落とすことしか考えていない学生も少なくなく、殺伐としています。

一人っ子だからダメ、ということは決してないのですが、自分の思い通りにならない場合、他人のせいにするという考え方をするような学生が増えてきたと感じます。とくに、私や同僚が気をつけているのは、成績が中以下の学生。焦っているのか、本業の学問以外で揚げ足を取ろうとしているかのようです」

最近、この知人のもとには、日本でお世話になった大学の事務員の退職に関して、教授や学生たちがねぎらいのメールを送るメールが転送されてきた。一介の事務員で、しかも退職するので、今後はもう世話になることはない。

 

中国なら、この先のコネにならない人、役に立たない人、という見方もできるが、教授や学生たちの温かいメールを見て感動した知人は、信頼関係ができている少数の学生にその日本語のメールを見せ、「日本の先生は事務員にもこのようにリスペクトの気持ちをもって接するのだよ」と教えたそうだ。

この知人は中国の大学でやりきれない問題が発生するたびに、「日本に舞い戻り、出直そうか」という考えが頭をもたげていると筆者に打ち明けてくれた。

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