しかし、A氏の学生に対する善意は踏みにじられる。筆者の知人は話を続ける。

「その学生は教授から『参考文献が少ない』と言われたことにカチンときたのか、なんと、その話を大学の上層部に告発したのです。『中国で認められていない海外の情報にアクセスするように教授から薦められた』と言ったようです。

A氏は窮地に追い込まれ、退職することになってしまいました。この話は私など他大学にいる同業者にも伝わり、ショックが広まりました。不幸中の幸いというか、A氏は研究業績がよかったので、最終的に他大学に再就職できたようですが、このように教授に対する嫌がらせが最近続いていると感じます」

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融通が利かず揚げ足を取る学生ばかりに

筆者の知人も、同僚の教授B氏がある学生から「先生が授業の途中にもうけるべき5分間の休憩を行わず、続けて授業を行い、最後に5分早く終わった」ことを責められた。しかし、前述の事例と同じく、学生は教授本人に苦情を言わず、上層部に通報したという。

トータルでの授業時間が短くなったわけではないのに「規則通りに授業を行わない」「先生のせいで、途中でトイレに行けなかった」などと言われ、その話を聞いた知人はショックを受けた。それ以降、規則通りに授業を行うだけでなく、時計を見て2~3分長く授業をしてから終えるようにした。学生から「先生が早く授業を終えた」「授業料を払っているのに、先生が手を抜いた」などと言われないように予防線をはるためだ。

別の大学に勤務する教授C氏と会ったときも、偶然、同じような話題になった。C氏は「私の大学でも大学生による教師へのハラスメントがいくつも起きています。私の大学では、一部の教授を除いて、個人の研究室がないので、それを幸いとして、私は授業が終わったら、さっさと帰宅するようにしています。できるだけ学生との接点を持たないようにするためです。

勉強熱心な学生には申し訳ないと思いますし、学生とのふれあいは教育をする上で大事なことだと思うのですが、学生が私との会話を録音して、あとでそれをもとに糾弾してくる可能性もありますし、油断は禁物だと思っています。SNSでのやりとりも細心の注意をして返信しています。残念な話ですけどね……」と話してくれた。

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